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2021.01.29

気になっていたあのブランドのいま(サステナビリティ編)

 D2Cブランドを中心としたサステナビリティの取り組みが各界から注目されています。今回はサステナビリティの取り組みについて、代表的なD2Cブランドに着目し、簡単なブランド紹介から直近の動向までをまとめました。

allbirds(オールバーズ)

allbirds(オールバーズ)東京・原宿店の様子

 allbirds(オールバーズ)は、2013年にサンフランシスコで設立したD2Cシューズブランドです。2018年10月には企業価値が10億ドルに達しユニコーン企業入りを果たしました。2019年に中国と英国・ロンドンに本格進出し、2020年1月には東京・原宿に上陸しました。同社は環境に配慮した素材開発に多大な資金と時間をかけ、サステナブルな商品を展開しています。特徴として、シューズのインソールにはヒマシ油、ミッドソールにはサトウキビを使用しています。ミッドソールの製造工程で排出される温室効果ガスは、原料であるサトウキビが吸収するCO2(二酸化炭素)量を下回っているため、カーボンネガティブ(※注1)を実現しています。そして、この革命的な技術を独占せずに、他のシューズメーカーにも情報を提供することでオールバーズは高く評価されています。

 

 オールバーズでは他にも、靴紐にはリサイクルされたペットボトルを使用、靴箱の材料の90%には再生可能素材を使用するなど徹底しており、自社製品のCO2排出量をすべて把握することで、可能な限り環境負荷を削減することに注力しています。このような自然環境への高いこだわりと快適な履き心地を両立していることで、一般ユーザーからシリコンバレーのエグゼクティブ層まで支持されています。

 

(※注1)カーボンネガティブとは、吸収する温室効果ガス(CO2や水蒸気など)の量が、経済活動により排出される量を上回る状態を指す。

昨年展開したAllbirds Apparel(オールバーズアパレル)

 パンデミックが発生して間もない昨年3月頃、オールバーズは数多あるD2Cブランドの中でも率先して寄付キャンペーンを打ち出しました。これは、同社の米国ECサイトにおいてユーザーが対象商品を購入すると、在庫がある限り、同社が支援している医療機関へ自社負担でもう一足のシューズを寄付するという取り組みです。その後、昨年5月にはadidas(アディダス)とパートナーシップを締結し、カーボンフットプリント(※注2)の排出量が低いシューズの開発を目指すと発表しました。

 

 さらに一方で、オールバーズは本格的にアパレル産業へ参入し、昨年6月に初のアンダーウェアライン「Trino Undies(トリノ ウンディーズ)」、12月に「Allbirds Apparel(オールバーズアパレル)」をそれぞれ発売開始しています。特にオールバーズアパレルでは、カニ殻を再利用するなど自然資源から作られた抗菌繊維を使用。そして、パンデミック下にもかかわらず、昨年10月には新たに1億ドル(約100億円)の大型資金調達に成功し、その資金は新素材・新商品の開発のほか、店舗数の拡大およびグローバル展開に利用すると発表するなどオールバーズの勢いはとどまることを知りません。

 

(※注2)CFP(カーボンフットプリント)とは、Carbon Footprint of Productsの略称で、商品やサービスの原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでのサイクル全体を通して排出される温室効果ガスの排出量をCO2に換算して、商品やサービスに分かりやすく表示する仕組み。

Reformation(リフォーメーション)

Reformation(リフォーメーション)のECサイトより

 Reformation(リフォーメーション)は2009年にロサンゼルスで設立されたD2Cレディースブランドです。同社は廃棄されたデッドストック生地や再生素材(リサイクルコットンなど)を調達し、縫製工場の稼働を最適化しながら約1か月で企画から商品化までを実現。毎週にわたって新しい限定商品のラインナップを店舗とECで展開しています。実店舗では、商品ごとに「RefScale」という、商品製造過程における水の使用量、二酸化炭素排出量および廃棄物のスコアを表示しており、顧客は該当商品が製造過程により排出した環境への影響をこの数値指標によって確認することができます。

 

 リフォーメーションでは、素材へのこだわりだけではなく、商品の製造過程における透明性も非常に大切にしています。例えば、同社のECサイトでは、ロサンゼルスの自社縫製工場で務めている縫製スタッフのプロフィールや背景、服作りへの思いをインタビュー動画で公開しています。

自社縫製工場のスタッフによるインタビュー動画

 パンデミック以来、米国にある18店舗およびトロント、ロンドンの各店舗を営業停止し、業務、経営資源をECに集中しています。2020年7月には、米国のプライベート・エクイティ・ファンドのPermiraがリフォーメーションの大部分の株式を購入し、同社の筆頭株主となりました。新しい経営体制となったリフォーメーションは今後引き続きサステナビリティの取り組みを強化し、グローバル展開を積極的に推し進めていくといいます。

Cuyana(クヤーナ)

ニューヨーク・ソーホーにあるCuyana(クヤーナ)の店舗

 Cuyana(クヤーナ)は2013年にサンフランシスコで創業したD2Cレディースブランドです。革製品を中心に展開するクヤーナは“fewer, better”というブランドコンセプトを掲げており、流行に左右されないデザインかつ少量生産のビジネスモデルが特徴的で、特にミニマリスト志向のZ世代の女性の人気を博しています。

 

 クヤーナのサステナビリティの取り組みに関しては、いくつかのこだわりがあります。まず、生産背景と素材選定についてです。クヤーナと提携している縫製工場は家族経営の小さな工場が多いため、提携の際にはクヤーナが専属スタッフをこれらの工場へ派遣します。そして工場の労働・衛生環境を調査し、現地の労働基準法とクヤーナが独自に策定した採用基準を満たす縫製工場のみを起用しています。また、2022年までに、商品に使用するすべての素材を100%再生素材とすることをミッションとし、実現のために社内で独自の指標を策定しながら、素材の調達先との協力を進めています。

 

 次に、素材へのこだわりです。クヤーナでは「流行を追わない、でもファッション性を妥協せず、かつ長く愛用する」という理念のもと、使用する素材の耐久性にもこだわっています。例えばシルクの場合、米国のアパレル業界で使用するシルクのスタンダード値(耐久性を図る数値)が16~19であることに対し、クヤーナでは25~30の値のシルクのみを使用。顧客に対して「製品を長く愛用して欲しい」というメッセージを伝えるために、業界のスタンダードを大きく上回る良質な素材を選定し、それに加え、すべての商品に2年間の保証期間と期間中の無償修理を保証しています。

人気の革ポーチバック(公式ECサイトより)

 2018年よりクヤーナは、二次流通プラットフォーム大手のthredUP(スレッドアップ)と提携し、顧客が不要となったクヤーナの商品をスレッドアップに送ると、リワードとしてクヤーナで利用できるポイントが貰えるというプロジェクトを発足しています。また、パンデミック発生後の対策として、クヤーナではビデオツールを生かした各店舗スタッフによるデジタル接客を実施し、顧客への商品提案や問い合わせに対応、米国の9店舗はEC注文の受け取り店舗として活用しています。2020年12月には、女性の社会進出を支援するチャリティー団体「HEART」に向け、「Curved Crossbody」というハンドバックの売上の100%を寄付したと発表、地域の社会貢献への取り組みも進められています。

まとめ

 

 今回ピックアップした3つのブランドは、素材を中心としたサステナビリティの取り組みをそれぞれ独自の戦略で展開しています。オールバーズは新しいオリジナル素材の開発に徹底的に注力し、アパレルにも応用しています。リフォーメーションは短期間での企画・商品化を実現しながらも、素材選定や生産背景の透明性へのこだわりに決して妥協していません。クヤーナは「製品を長く愛用する」という理念を貫き、提携先の工場の労働環境の調査から素材の耐久性の追求、そして商品購入後のアフターフォローに至るまで、様々な角度から工夫しています。米国にとどまらず、日本も含めて世界中で次々とサステナビリティの取り組みを訴求するブランドが登場する中、素材へのこだわりはともかく、それ以外の角度からの独自アプローチが差別化を図るカギになると思います。

 

参照サイト:

https://www.modernfellows.com/amid-pandemic-allbirds-doubles-down-on-omnichannel-retail/

https://www.retaildive.com/news/allbirds-raises-100m-despite-pandemic/585983/

https://edition.cnn.com/2020/10/20/business/allbirds-sustainable-apparel/index.html

https://www.permira.com/news-views/news/sustainable-fashion-brand-reformation-announces-majority-investment-from-the-permira-funds/

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