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2021.01.18
【ピッティ2021秋冬ハイライト1】第99回「ピッティ・ウオモ」がデジタルプラットフォーム「ピッティ・コネクト」にてスタート
左から「ブルネロ クチネリ」「キトン」「ラルディーニ」
「ピッティ・イマージネ」は2021年1月12日に、デジタルプラットフォームによるトレードフェア「ピッティ・コネクト」にて第99回「ピッティ・ウオモ」の“オープニング”を行った。今回はイタリアにおけるCovid-19の深刻な感染状況を考慮し、フィレンツェ・バッソ要塞会場においてのフィジカルトレードフェアの開催は時期をずらした2月21~23日を予定しているが、従来開催されているこの時期に、デジタルにてコレクション発表をスタートした。
昨年6月の開催中止を受けて始まった「ピッティ・コネクト」は、オンラインにてバイイングキャンペーン、イベント、スペシャルプロジェクト、対談、ファッション情報などを3か月の期間にわたり提供し、大成功を収めた。今回の「ピッティ・コネクト」も3月末まで閲覧が可能なため、フィジカルなフェアと並行して情報を提供するのが目的だ。今回は世界中から約250社の企業が参加している。
前回からプラットフォームを刷新し、ブランドのテイストに合わせて、コンテンポラリークラシックの「ファンタスティック・クラシック」、スポーツ、アウトドアの「ダイナミック・アティチュード」、スタイリスティックなリサーチに貪欲で、フューチャートレンドを先取りする「スーパースタイリング」、そしてサステナブルに強化したブランドを集めた「サステナブル・スタイル」という4つのセクションに分類。また今後、国別に選択された新興ブランドに焦点を当てたオンラインプロジェクト「ピッティ・オリンピック」を開所する予定。
ブルネロ クチネリ(BRUNELLO CUCINELLI)
「ブルネロ クチネリ」ストリーミング
1月12日から約10日間には、数々のスペシャルコンテンツが用意されている。オープニングを飾ったのは「ブルネロ クチネリ」。今回63回目の参加となる同社はウンブリア州・ソロメオの本社内に、まるで通常のピッティで出してきたブースのようなスペースを作って2021秋冬コレクションを展示し、そこからストリーミングを行った。会長兼クリエイティブディレクターのブルネロ・クチネリが、ピッティCEOのラファエロ・ナポレオーネと同ディレクターのアゴスティーノ・ポレットと共に、コロナ禍での経験、現状、そして未来に関する思いを語った。またフィレンツェとオンラインで繋ぎ、フィレンツェ市長のダリオ・ナルデッラも参加した。
ブルネロ・クチネリはコメントの中で、「我々は心身ともに苦悩の1年を経験したが、あえて失ったものより得たものを見直してみると、大事なことがいくつかある。それはこのような辛い時期を過ごした後に、我々にやさしさや愛が生まれたこと。また貧困の問題も見つめなおすようになったこと。さらに製品がどこでどのように生産されているか、自然や動物に害を与えることがないかを考え、リペア、リサイクル、リユーズの大切さを理解したということ」と語っている。
今のムードを反映しているようなコレクションのテーマは「昨日と明日の統合」。時を経ることで豊かさを増す魅力にインスパイアされ、クラシックなスタイルをモダンに昇華した、シンプルでタイムレスなスタイルを追求してきた「ブルネロ クチネリ」の集大成ともいえるものだ。そして同時に、移動に制限のあった昨今において、“自分らしい旅にでかけよう”という躍動的なメッセージも込められているという。
そんな中、主力となるのはニットだ。アウターにもニットを用い、100%カシミアニットを使ったダウンが、ロング丈、ショート丈、袖あり、ジレタイプと様々に登場する。またジャケットに関しても、アンコンのニットカーディガンジャケットが多く登場し、ポロやタートルネックからタイドアップまで様々なコーディネートで「ブルネロ クチネリ」らしいカジュアルシックを表現する。それに合わせるパンツは、ミリタリーやワークのテイスト。また足元にはスーツにもカジュアルにもあう、スポーツとフォーマルな靴の間を行くようなスニーカーを押している。リラックスした柔らかいフィット感を持ちながら、エレガンスを備えた絶妙なハーモニーが全体的に流れる。
ヘルノ(HERNO)
翌13日には、「ヘルノ」CEOのクラウディオ・マレンツィが現状や未来への展望を語るとともに、2021秋冬コレクションをミラノのショールームからライブレポート。新作を着用したモデルも登場し、そのモデルたちによって同時に行われている撮影風景も公開するなど、かなり見ごたえのある映像となっている。マレンツィ自らがストリーミングで紹介したメインコレクションでは、インナーにキルティング加工がなされたモノグラムのトレンチコートやオーバーボリュームのウールのコート、そして近年注力しているニット類、そしてこの辛い時期の後には明るい色がトレンドになるだろうという予見の元に押している、鮮やかな黄色のダウンも登場。またラミナーでは、熱接着で縫い目が全くない完全防水ウールや、「スカルパ」社とのコラボによるスニーカーの新作を紹介した。
さらに同社のエコサステナブルラインである「ヘルノグローブ」が出展している、初のグリーン・リテール・パーク「グリーン・ピー」の創業者であるオスカー・ファリネッティとのオンライン座談会も行われた。「ヘルノ」はサステナブルに本格的に取り組み、生態や環境に配慮した製造工程やプロダクトに関する試行・試験や技術革新に重点を置いた研究開発を進めている。オンライン座談会ではサステナブルの必要性や未来についての二人の熱いトークが交わされた。マレンツィは会話の中で「私の夢は将来的には「グローブ」というラインはなくなって、すべてのコレクションが「グローブ」になることだ。サステナブルであることはクールであり、そういう製品を作ること、選ぶことが、長く使えてリサイクルできるものは最終的には得になる」と語っている。
そんな今回の「ヘルノ グローブ」のコレクションには、わずか5年で有機物質とバイオガスに完全分解され、廃棄物からエネルギーを生産するポリアミドの糸で織った20デニール ナイロン「ファスト5デグレーダブル」、再生ナイロン「エコニール」、そして100%リサイクルウール、染料を使用しないダイフリーウール、有機栽培や有機飼育の原材料を使用した生地や衣料品の製造に関する認証を受けたオーガニックボイルドウール、アニマルフレンドリーウールといったプロジェクトが反映されている。
キトン(KITON)
そして14日には、「キトン(KITON)」がストリーミングでナポリの本社を公開。「キトン」ならではの卓越した生地が揃ったストックルームから、今も昔ながらの伝統に忠実に手作業で製品づくりを行っている工場に至るまでをCEOのアントニオ・デ・マティスが案内した。
生地のストックルームでは、デニムやソラーロ、ジャカードのビクーニャや、12.8ミクロンのウール、スポーティライン「KNT」のために作られた横にだけ伸びて型崩れをすることがないストレッチ素材など「キトン」ならではの生地を紹介。特にデニム効果のビクーニャは同社傘下のカルロ・バルベラで作られたキトンだけのエスクルーシブ素材だとか。
そして180人の職人たちが作業している工場では、袖、肩、首などのジャケット製作において特に重要な部分の作業風景をフォーカスしながら、「人の手で縫われたジャケットは一針ごとが自分の体にしっくりと合い、長く着れば着るほど体になじんでいくもの」とデ・マティスがハンドメイドによる製品の魅力を語った。次世代への技術の継承にも力を入れ、2000年から職人養成学校を運営している同社の職人たちの中にはこの学校で技を学んだ若者も多く、いまや職人たちの平均年齢は36~37歳という若さだと言う。「パンデミックが去った後にまたス・ミズ―ラを再開するのが楽しみだ。顧客と直接関わることで、その人の求めているものが分かる」。そして「この時期が終わった後には、みんながファッションをより楽しみたいと思うだろう。明るい未来を信じている」とデ・マティスは語った。
また「エグジビターズ・スポットライト」という新しいエディトリアルフォーマットでは、代表的ブランドの新作コレクションや特別プロジェクトに取り組んでいるブランドをピックアップ。その中のひとつがハイエンドアウターブランドの「テンシー(TEN C)」。2021秋冬コレクションではブランドのシグニチャーファブリックである「OJJ(Original Japanese Jersey)」によりフォーカス。OJJとは防風性と撥水性の両方を備えた高密度のナイロンとポリエステルで編んだ日本製の素材で、「テンシー」はこれを独自の染色技術で製品染めし、デニムのようなエイジング効果のある生地に仕上げている。今回は12オンス、11オンス、9オンスのさまざまな重量で、ナイロンなどの他のファブリックとのブレンドバージョンも。それがオーバーボリュームのフィッシュテールパーカやミリタリー風フードの付いたショートスナイパーパーカ、または箱型のステッチで60年代風テイストのテンペストコンボダウン、水平ステッチのコンボダウンのなどのアイテムで登場する。
「テンシー」2021秋冬コレクション
「テンシー」2021秋冬コレクション
その他、「C.P.カンパニー(C.P.Company)」がブランドの50周年を記念するプロジェクト「C.P.カンパニー チンクアンタ(C.P. Company Cinquanta)」にて、年間を通して、他のブランドとのコラボレーションと自社開発の両方で、毎月特別なピースをリリースするというニュースもアップされた。
「サステナブル・スタイル#2」
サステナビリティへの取り組みにもますます注力する「ピッティ・コネクト」では、昨年夏にスタートしたプロジェクト「サステイナブル・スタイル」第2弾がスタート。ここではエコ・サステイナビリティ、生産倫理、美学、スタイル、ビジネスを融合させた15組のデザイナーをホストする。また、サステナブルへの取り組みを行うブランドに贈られる「REDA×サステイナブル・スタイル」アワードを、スペンサー・フィップスが受賞したことを発表した。フィップスはレダグループのアクティブウェアブランド「リウールーション(Rewoolution)」のカプセルコレクションを制作する。
ストリーミングイベントはこの後も続き、21日には「ラルディーニ(LARDINI)」がマルケ州の本社から2021秋冬コレクションを発表する予定だ。
文:田中美貴
追記:「ピッティ・
田中 美貴
大学卒業後、雑誌編集者として女性誌、男性ファッション誌等にたずさった後、イタリアへ。現在ミラノ在住。ファッションを中心に、カルチャー、旅、食、デザイン&インテリアなどの記事を有名紙誌、WEB媒体に寄稿。アパレルWEBでは、コレクション取材歴約15年の経験を活かし、メンズ、ウイメンズのミラノコレクションのハイライト記事やインタビュー等を担当。 TV、広告などの撮影コーディネーションや、イタリアにおける日本企業のイベントのオーガナイズやPR、企業カタログ作成やプレスリリースの翻訳なども行う。 副業はベリーダンサー、ベリーダンス講師。