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2020.12.16
フェデックスが買収したECプラットフォームと パンデミック化する配送荷物
アドビ・アナリティクスによると、今年のブラックフライデーの期間中、米国全体の実店舗への客数は前年比52.1%減だったが、オンライン販売は前年比21.6%増で90億ドルの記録となりました。更にサイバーマンデーでは1日の売り上げとしては過去最高の108億ドルとなる見通しです。今年のホリデイ商戦では、荷物の急増による配送の遅れや、それに伴う返品の増加が懸念されています。ShipMatrixによると、今年のホリデイシーズンでは700万個に上る荷物が配達遅延となる可能性があると報じられ、配達の急増によるパンデミックを意味する「Shipageddon」という造語が飛び交う程。LateShipment.comのレポートによると、今シーズンの配送の遅延率は14−18%で、例年の1.5-2倍の遅延増加が予想されています。
一方、アマゾンでは、他の配送キャリアに頼ることなく、多額の投資をして立ち上げた独自の配送システムがあります。アマゾンプライムの小型トラックが連なって走っている様子も度々目にします。サードパーティーの販売者達もアマゾンの配送システムに依存する可能性が高くなっています。トラック輸送はアメリカ経済の心臓部とも言われますが、E-コマース企業が独自の配送システムを持つことはビジネスの成長において非常に大きな鍵と言えます。そしてこの流れは他の配送キャリアの中でもみられます。
例えば、UPSは3年前にアマゾンに変わるショッピングサイトとして注目されるShopify(ショッピファイ)と提携しシステムを統合、配送サービスを提供しています。ショッピファイは、小規模な小売店や個人が簡単にオンラインショップを開設できるプラットフォームです。管理サイト内では、UPSのシッピングラベルや返品ラベルを容易に作成することができます。
UPSやアマゾンに追いつけ!
フェデックスがオンライン企業「ショップランナー」を買収
「ショップランナー」のECサイトより
12月2日、米国フェデックスは、EコマースのプラットフォームShopRunner(ショップランナー)の買収を合意しました。ショップランナーは、アマゾンプライムに代わるサービスとして2010年にシカゴで設立。ブルーミングデールズ、ケイトスペード、アンダーアーマー、コールハーンなど100を超える小売業者と提携しており、顧客は年間79ドルの会費で、2日間の無料配送、無料返品の他、メンバー限定のデイスカウントの特典が得られます。ショップランナー会員は現在約100万人で、前年比40%の増加と言われています。フェデックスは今年の10月に返品ソリューションのプロバイダー「Happy Return」と提携し、2000を超えるロケーションの小売業者からの返品に対応すると発表しています。急成長しているEC企業「ショップランナー」の買収により、競合企業がアクセス出来ない顧客データを取得する事が可能となります。
配送業者と小売企業のWIN-WINな関係
「ダラーゼネラル」のECサイトより
フェデックスは2019年の夏から、100円ショップとして有名な「ダラーゼネラル」と提携しており、顧客がオンラインで注文した商品を店頭で受け取る事ができます。ダラーゼネラルは16,000店舗を超えるチェーン店で、そのうち同サービスは農村部を中心に1500店舗で開始されており、年内には8000店舗まで拡大予定ということです。アメリカの地方都市への配達は非効率で費用がかかる為、住宅毎に配達するよりも、1箇所のストアに複数の荷物を配送した方が人件費や輸送コストの削減に繋がります。そうすることで、玄関先に「置き配」された商品の盗難の心配がなく、返品の場合も、ダラーゼネラルの店舗へ持ち寄りFedex経由で返送する事が可能です。小売店の圧倒的な店舗数を利用し、配送業者と提携することで、顧客の足を店舗に向かわせる効果もあり、両者に取ってWIN-WINな関係と言えます。また、フェデックスでは、同様のサービスを、ドラッグストアチェーンの「ウオルグリーン」や、スーパーマーケットの「アルバートソンズ」「クローガー」とも提携しています。これらは都心の客層をカバーしたサービスで、忙しい都心の消費者であっても、ショッピングついでの都合の良い時間にピックアップが可能となります。
米国小売店が推奨する「ノーラッシュデリバリー」オプション
アマゾンの「ノーラッシュシッピング」
アマゾンやウォルマートは、モールの空き店舗をフルフィルメントやダークストアとして活用するなど、最終の配達距離を縮小する為の構築を行ってきました。しかし、この動きとは逆に、今年のホリデイ商戦では、「急いで発送しない」オプションを提供している小売店が登場しています。実際、即日配達を行う為には、トラックがいっぱいにならないうちに出発しなくてはならず、燃料、人件費、ロジスティックコストのロスにつながります。そこで、アマゾン、ターゲット、メイシーズなどの小売業者は、特に急ぎでない商品に対して「ノーラッシュデリバリー」を推奨し、その代わりにクーポンやディスカウントを提供しています。 同様にウォルマートは「スローデリバリー」か「店頭ピックアップ」を推奨し、ティンバーランドは直接的な還元ではなく、植樹のリワードを提供。今年のブラックフライデーからサイバーマンデーの注文全体の18%にこの動きが適用され、これまでに5万5千本の植樹が行われたそうです。顧客にとってオンラインショッピングの利便性、コスト、スピードに慣れ、それらが当たり前となっていく中において、企業やブランドはコスト削減と共に配送荷物のパンデミック「Shippageddon」の対応策として「ノーラッシュデリバリー」オプションを提供しているようです。