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2020.12.10

ウィズコロナ時代でも行列が!!スニーカーのリセールストア Stadium Goodsに迫る!

アパレルウェブ「AIR VOL.41」(2020年11月発刊)より転載しております。

Written by RINA

ニューヨークに店を構えるスタジアム・グッズ

 ニューヨークでは経済再開のフェーズ2、3の段階でファッションリテールも営業を再開。従業員・お客様への安全対策が整った時点で随時再開しています。私もブランドのストア状況を確認しに外へ出かけたのですが、多くの店舗、ブランドで人が少ない状況の中、スニーカーのリセールストア、そしてマーケットプレイスであるStadium Goods(スタジアム・グッズ)というお店は入店を待つ列ができていました。この状況下でも、並んで店舗に行きたいというのは、ウィズコロナの中でも顧客とブランドとの繋がりが強いことが分かります。今回はスタジアム・グッズについてご紹介します。

300億ドルに到達すると推測されるスニーカー・リセール市場

スタジアム・グッズ店舗内の様子

 米コーエン・エクイティ・リサーチ社のアナリストは、世界のスニーカー・リセール市場は2030年までに300億ドル($30B/約3兆円)に到達すると予想しています。新商品、デッドストック、レア物などスニーカーを手に入れる方法は様々ありますが、米国で近年注目されている方法として、スタジアム・グッズを利用する手段があります。スタジアム・グッズは、スニーカーを中心にストリートウェアやグッズも扱うリセールストア(マーケットプレイス)です。2015年10月にJed Stiller(ジェッド・スティラー)とJohn McPheters(ジョン・マクフィターズ)によって創設され、当初からEC(オンライン)と店舗(オフライン)の両方を運営しています。

 

 店舗はニューヨークに2店舗を出店。ハワードストリート沿いに面した、マンハッタンのソーホーにある店舗はスニーカーの購入ができるだけでなく、販売したい人がスニーカーを持ち込む窓口にもなっており、マーケットプレイスの 役 割も果たしているのです。私もオープン(2015年)してすぐ店舗を見に行きましたが、奥行きのある店内は、両サイドにはラップされたレアなスニーカーが一面に並び、その迫力に圧巻されたことを思い出します。その中でもプレミアム価値が高い物はショーケースに飾られ、それはまるで美術品のようでした。

 

 ここでしか実物を見れない商品もありスニーカーが好きという人にとってもミュージアム感覚で楽しめるのだろうと感じたことを覚えています。創設から数年後の2018年にはラグジュアリーベンチャーズグループのLVMHから投資を受けており、更にその1年後の2019年1月には、デジタルファッションプラットフォームのFarfetch(ファーフェッチ)により約2億5000万ドル(約280億円)で買収されました。ちなみにファーフェッチは18年9月にニューヨーク証券取引所に上場して以来、これが初の買収企業でした。

開店4時間後にシャットダウン! Faze Clan Pop-Up at Stadium Goods

 米国でもスニーカーを取り扱うフリーマーケットやマーケットプレイスが多くある中で、なぜここまでスタジアム・グッズが顧客から支持されているのでしょうか。一つは“偽物が売られていない、本物だけが売れているという信頼性の高さ”があります。技術の進化、発展により類似品や模造品が全世界で販売されている今、個人からの購入は偽物を購入してしまう可能性もゼロではありません。特にスニーカーは多くの偽物が世の中に出回っているという現実があるため、本物が保証されているプラットフォームという事実は、それだけサービスとして強いのです。一方でこの強みは他のサービスも強化しているので、大きな差別化かと問われると少し疑問が残ります。もう少し考えてみると、スタジアム・グッズの強みは“時代の流れを読み取る能力”に長けている点ではないかと私は考えています。

esportのプロチームを抱える企業、フェイズ・クランとタッグを組んだポップアップイベント

 例えば、2019年にはFaze Clan(フェイズ・クラン)とタッグを組み、ニューヨーク店でポップアップイベントを開催しました。フェイズ・クランはフォートナイトなどのeSportで活躍するプロチームを抱える企業です。イベントは単にウェアやグッズなどを販売するだけでなく、フェイズ・クランのプレイヤーとファンが交流できるプログラムもあり、顧客からも非常に好評でした。また、イベントの開催中はニューヨークで「フォートナイト・ワールドカップ2019」が開催されていたのも重なり、フォートナイト、スタジアム・グッズのファンにとって、一大イベントとなりました。金曜日に開催されたこのイベントは水曜日から徹夜組が列を作り、当日は予想を大きく上回る数のファンが集まったため、警察が出動する騒ぎにもなりました。この熱狂をレポートするため、私もソーホーへ駆けつけていました。混乱が起こる事は予想できたので、時間をずらして訪れたのですが、私が店舗へ到着した時もまだ長い行列が見られ、盛り上がりの余韻を感じました。

 

 私は同じ日にスタジアム・グッズから近い場所で行われていた某有名スポーツブランドのポップアップストアにも足を運んだのですが、こちらはスムーズに入店できました。スタジアム・グッズのポップアップストアがイベントの中止を判断しなければならないほど盛況していたことを考えると、ブランドの勢いやパワーをスタジアム・グッズからは肌で感じました。ひと昔前までであれば、ファッションとゲームというカルチャーは中々交わることのない業界だったのではないでしょうか。ですが近年はラグジュアリーブランドがゲームのアバター用の洋服をデザインするなど、結びつきは強まりつつあります。スタジアム・グッズもこのトレンドをしっかりとキャッチアップしています。このように業種問わず、“今”流行しているもの、顧客に支持されているものを見極めて、ビジネスとして成り立たせる能力が高い点もスタジアム・グッズの特徴です。

時代の変化にアダプトサービスを進化させる大切さ

スタジアム・グッズの店内には世界中の様々なスニーカーが並ぶ

 スタジアム・グッズは2015年にニューヨークに出店して以来、ポップアップストアでオフラインのタッチポイントを強化しており、新店舗の出店は無かったのですが、2020年10月に新店舗をシカゴに出店しました。当初は2020年の春頃を予定してましたが、コロナパンデミックの影響もあり、この時期になったようです。SNSでシェアされた外観の写真を見る限り、真っ黒な面持ちの店舗はニューヨークの雰囲気とは異なり、ラグジュアリーブランドのショップの様でした。

 

 スタジアム・グッズのこれからという意味で気になっているのは、ファーフェッチに買収された事で、ファーフェッチが持つテクノロジーや物流などが、今後どの様にサービスの中で、顧客に価値として提供されるのかという点です。特に買収後、初の店舗出店となるシカゴ店では、この店舗ならではの特別なセレクト、ラグジュアリーショップの様なプレミアムなサービスが用意されるのか注目です。そして、オフラインだけではなく、スタジアム・グッズのECやアプリといったオンラインにも変化、進化した機能が加わるのかチェックしていこうと考えています。

米国で拡大する二次流通市場

 ファーフェッチに買収された後、ジョン・マクフィターズは2019年3月にオンラインメディアのBOF(Business of Fashion)のインタビューで「二次流通市場はまだスタートラインに立ったばかりの初期の段階。これからさらに加速していくだろう」と言っていたことが印象に残ります。二次流通はここ数年間で若者を中心に流行した印象がありましたが、米国ではすでに世代を問わず、買い物をする手段として根付いています。ブランド側も一部では、二次流通企業と積極的にタッグを組み、新しいお客様へのアプローチや既存のお客様とのつながりを強化するため、マーケティングを促進しています。また、サステナブルな取り組みを社会にアピールしています。そうなるとブランドは、二次流通を競合するのではなく、共存していく考え方を持たなければなりませんね。

 

スタジアム・グッズのECサイト:https://int.stadiumgoods.com/en-jp/

 

このコンテンツは弊社の会員誌「アパレルウェブイノベーションレポート」の41号から転載しております。

 

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