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2020.10.20
【2021春夏東京 ハイライト2】多様化する東京メンズ 新たな若手の台頭も
左からミーンズワイル、リコール、シュープ
一時は歯止めがかかったかと思われたコロナの感染拡大が、再びヨーロッパなどではロックダウンにいたるまで悪化している中、世界は不安に包まれている。だが、これほどまでに唐突に訪れた不測の事態に対して、激変の世情を感じながらも柔軟に、やるべきことに真摯に向き合って、多くのブランドがデジタル/フィジカルでのコレクション発表を行った。1年前とは全く異なる状況の中、時代の流れを捉えたエレガンスやジェンダーフリーの中に、世の中を少しでも明るくしようと、プレイフルなカラーや要素を盛り込むブランドが見られた。
「ミスター・ジェントルマン(MISTERGENTLEMAN)」
「ミスター・ジェントルマン」は、ウェブでルックを公開した。見ているだけでも季節の熱気を感じて心躍るような、カラフルでプレイフルなコレクション。ミリタリーやテーラードをブランドらしい解釈で再構築し、カジュアルなアウトドアテイストに落とし込んでいる。
ノースリーブのジャケットをジレのように着こなしたり、かっちりとしたセットアップには虫や自然のモチーフを描いたり、遊び心をふんだんに盛り込んでいだ。カラーパレットも、アースカラーをベースにビビッドなオレンジやイエロー、ピンクなどの差し色が楽し気なムードを演出。スタイリングに自然に馴染む斜めがけのバッグは、「アウトドアプロダクツ(OUTDOOR PRODUCTS)」とコラボレーションした。
「ドレスドアンドレスド(DRESSEDUNDRESSED)」
「ドレスドアンドレスド」はムービーでコレクションを発表した。
スポットライトの光で映し出されたモデルが短いランウェイを歩き、消えていくという演出。今シーズンのテーマである“ペルソナ”は心理学者であるユングの概念で、“自己の外的側面”を意味する。
男性の場合“ペルソナ”は、外的心象は男らしさで表現され内的心象は女性的なケースがあることから、コレクションではマスキュリンとフェミニンの表裏一体を表現。男らしさの象徴であるテーラリングに女性的なクチュールの要素として「手仕事」を多く加えた。スーツのストライプや柄は織物ではなく、すべて手作業でひと針ひと針柄を作成し、ひとつのアイテムで240時間も費やしたものがあるという。クチュールの要素を加えたことでアイテムひとつひとつの繊細さはこれまでのコレクションにも増して際立っていた。また、スタイリングも、繊細なテーラリングにヒールの靴を合わせるなど、ジェンダーレスを強調した。
「ディ_カフェイン オム(De_caffeine homme )」
韓国人デザイナー アビズモ ジョー(Avizmo Jo)による「ディ_カフェイン オム」は先シーズンに引き続きランウェイの映像でコレクションを発表した。
コーヒーを楽しむようにファッションを自由に楽しんでもらいたいと、日常で楽しめる流行のスタイルを提案している同ブランド。今シーズンはフォーマルをカジュアルに落とし込む様々なアイデアを見せた。
シャツのカラーを活かしたストールや、ジレのようにアクセントで羽織るノースリーブジャケット、ネクタイと一体化したシャツなど、艶のある素材感で上品さは保ちながらもファッションを楽しむためのユニークなアイデアの数々を披露した。
「メアグラーティア(meagratia)」
デザイナー関根隆文による「メアグラーティア」も、昨シーズンに引き続き映像でコレクションを発表。
毎回、佐藤友香里氏のフラワーアートを使用した演出でのコレクション発表をしている同ブランド。今回もフラワーアートを使用しながら、アニメーションと融合したムービーで発表した。アニメーションと実際の映像を交差させながら独特の世界観を描いた。
テーマは“The blooming of the unrevealed seam”。いくつも生地を縫い合わせたかのようなディテールは、立体的なパターンとなってアイテムに彩りを添える。そしてフラワーアートをそのままアイテムに落とし込んだようなパターンや、押し花を装飾にしたジャケットなど、繊細なディテールが個々のアイテムに個性を与えている。また、コートの内側に仕込まれたベルトや、レイヤードに見えるジャケット、取り外しできるスリーブなど、ブランドらしいギミックもいたるところに盛り込まれた。
ムービーのエンドロールには制作スタッフ全員がムービーで紹介して締めくくった。
「ミツル オカザキ(MITSURU OKAZAKI)」
「ミツル オカザキ」はムービーで最新コレクションを発表。アナログのビデオカメラで撮ったかのようなレトロな画像と70年代の音楽でセンチメンタルな雰囲気を演出。ウィメンズでは真っ白なスタイリングに太いフリンジのような装飾が印象的。また、「自由」や「Freedom」の文字が総柄のシャツや、「自由」の文字が刺繍されたTシャツが登場するなど強いメッセージ性も見られた。
「第6回TOKYO FASHION AWARD」を受賞したデザイナーたちが、昨シーズンのRFWT中止を受けて、今回のRFWTにてランウェイショーを開催した。
「リコール(Re:quaL≡)」
デザイナー土居哲也が手掛ける「リコール」。2016年立ち上げの若いブランドで、東京ファッションらしい勢いと個性でエネルギッシュなランウェイショーを見せつけた。
様々な民族が遊牧しているかのように、モデルが登場するたび違った個性を持ったアイテムとスタイリングを見せる。クラシックなテーラリングを解体し、違った視点で組み合わせ、レイヤードさせるルックがあったかと思えば、美しいスカーフをドレスのように紡ぎ上げたようなルックがあったり。チュールを幾重にも重ねたウエディングドレスのようなドレスが登場したかと思えばスウェットで修道服のようなスタイリングを作り上げたりと、自由なマインドで独特な世界観を見せつけ、「リコール」の名を確実に印象付けた。今後の活躍に期待が高まる。
「ユウキ ハシモト(YUKI HASHIMOTO)」
「ユウキ ハシモト」は表参道ヒルズ スペース オーにてランウェイショーを開催。銀箔に包まれた近未来的な空間を作り上げた。クラシックやエレガンスなど、時代の空気感を取り入れつつ、機能性やストリート感も大切にした、東京メンズらしい絶妙なミックスを見せつけた。
RFWTのオフィシャルロジスティクスパートナーを務める国際エクスプレスのDHLジャパン株式会社が、「ユウキ ハシモト」との限定コラボレーションアイテムが当たるインスタグラムキャンペーンを実施しており、景品であるバッグなどのコラボレーションアイテムもショーで登場した。
「ミーンズワイル(meanswhile)」
“日常着である以上、服は衣装ではなく道具である”をブランドコンセプトに掲げ、表面的なファッション性ではなく、機能を追求したプロダクトを展開している「ミーンズワイル」。
アウトドアを思わせるスタイリングだが、個々のアイテムは洗練されている。透け感のあるマウンテンパーカーや、ジッパーでシルエットや長さを調整できるマント、背負うこともできるダウンジャケット、シューズカバーにいたるまで、機能を追求しつつシルエットの美しさやディテールへのこだわりで違いを生み出した。
先シーズン発表できなかった秋冬コレクションも織り交ぜながら、ブランドの強みを最大限に見せつけるショーとなった。
「シュープ(SHOOP)」
「シュープ」はブランドの強みである艶っぽさが光るコレクションを見せた。美しさがありながらも、アイテム自体はデタッチャブルで変形可能であったり、マルチポケットなど機能的。また、環境破壊への問題提起として、ブランドでストックしている生地からパッチワークを作ったり、アップサイクルな生地を用いたりしている。
「世の中が大変な状況だからこそ未来への希望や価値観を共有できるコミュニティの大切さを伝えたかった」という想いから、グラフィックには「Faith, Hope, Love(=信仰、希望、愛)」などメッセージや平和な世界を願って作られたルイ・アームストロングの「この素晴らしき世界」の歌詞を用いた。
また、ランウェイではモデルとして小松菜奈やKANDYTOWNのメンバーであるIOが登場した。
「アポクリファ(APOCRYPHA)」
「レイジ ハリモト(REIJI HARIMOTO)」のデザイナー、播本鈴二が手がけるブランド「アポクリファ」。「レイジ ハリモト」ではメンズパタンナーとしての経験をいかし、メンズテーラーの技術と知識をウィメンズウェアに落とし込んだコレクションを展開しているが、今回はそのウィメンズウェアでの経験が「アポクリファ」に良い刺激を与えたように見える。レース使いやチュニックなど、クロスジェンダーなアイテムを打ち出した。ブランドの強みであるテーラリングも守りながら、新たな境地を切り開いたようだ。
取材・文:アパレルウェブ編集部
2021春夏東京コレクション