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2020.10.11

【デザイナーインタビュー】トモ コイズミ「自分しか作れないものを作り続ける」

デザイナーの小泉智貴氏

 「エミリオ・プッチ(EMILIO PUCCI」は、9月23日~28日まで行われた先のミラノファッションウィークにおいて本コレクションと共に新カプセルコレクションの発表を行った。そして、ゲストデザイナーとしてそれを手掛けたのが日本人デザイナーの「トモ コイズミ(TOMO KOIZUMI)」だ。デジタルと共にショールームでの展示会形式でも発表された新コレクションのために、新型コロナウィルス感染防止対策で渡航規制のある中、日本からこのためにミラノに駆け付けた(120時間だけ滞在できる特別なビザを使っての弾丸出張だったとか!)小泉智貴氏に話を聞いた。

―今回の「エミリオ・プッチ」とのコラボレーションについて、そのきっかけや発表までの経緯を教えてください。

 去年の年末にLVMHタレントスカウトから連絡をいただき、その際にこのお話がありました。本来なら3月のLMVHプライムの際に、イタリアの「エミリオ・プッチ」のスタッフともパリで会って具体的な話を詰める予定だったのが、新型コロナウィルスによる感染がひどくなってイタリアチームが来られなくなり・・・。それからはZoomによるミーティングを重ね、サンプルを送って何とかここまでこぎつけました。従来では考えられないような進行になりましたが、クリエイティブの自由もありストレスはなかったです。

―「エミリオ・プッチ」というブランドにはどういうイメージを持っていましたか。

 私は、図録やヴィンテージスカーフや小物などをコレクションするくらい、もともと「エミリオ・プッチ」のファンだったんですよ。「エミリオ・プッチ」は、色合いはカラフルながら上品なタイムレスで安定した美しさのあるブランドだと思います。それは私が求めるものでもあり、これまでも影響を受けてきました。

―今回のコレクションのテーマはアーカイブプリント、ヴェトラーテからのインスピレーションとのことですが、それを選んだ理由を教えて下さい。

 私の作風と合わせた新しい試みということで、あまり複雑な柄でないほうがよいということから選びました。60年代にデザインされたものだそうですが、今の時代でもまったく古さを感じさせずマッチすると思います。

―「エミリオ・プッチ」といえばプリントであり、それは平面的な世界観ですが、それを小泉さんの個性にミックスさせるためにどこに注意されましたか。またコラボにおいてはブランド側からはどのようなリクエストがありましたか。

 当初からプリントを立体的にカムフラージュしたいというアイデアは決まっていて、きっとかわいいものができるだろうという確信はありました。カラフルなピースは、ラッフルのテクニックでヴェトラーテのプリントを3Dで再現しています。一方、裏地にヴェトラーテを使った白のピースも3体作っていて、これらは動きによってプリントがちらりと見える仕組みで、白とのコントラストが映えるように作られています。ビーチやリゾートからのインスピレーションは「エミリオ・プッチ」からのものだったので、スイムウェアなどの小さなアイテムも作りましたが、これまでの自分の作品は割と大きなものばかりだったので、こういうものを作ることができてよかったです。

―これをきっかけに一流メゾンからクリエイティブ・ディレクターへのお声がかかるかもしれませんが、もしそうなったら興味はありますか。でもその場合、現代のファッションシステムにおいては貴方のような創造性が生かせなくなる可能性もあると思います。創造性とビジネスについてはどう考えますか。

 一流メゾンのクリエイティブ・ディテクターは、デザイナーなら一度はやってみたいですね。正直なところ、私はベストセラーとかトレンドを作るデザイナーではないかもしれませんが(苦笑)、どこかのブランドが私を選んでくれるなら、私の作風を生かしてくれるのだろうと思います。ですので、私も共感できるブランドにお声をかけてもらえるなら自分の最大の力で挑戦したいです。

―ご自身のブランドについて伺います。現状は注文販売だそうですが、ヨーロッパではどこで取り扱われていますか。今後、ヨーロッパでのコレクションの計画はありますか。

 ヨーロッパのセレクトショップとのコラボのお話もあるのですが、私の作品はすべてオーダーメイドということもあり、今はそういう時期ではないかな、と思っています。ゆくゆくはコマーシャル的なものも作るのかもしれませんが。ヨーロッパでのコレクション発表に関しては、特にその場所にはこだわってはいません。ニューヨークで発表したのはたまたまチャンスがあったからで・・・。その時チャンスがある場所で発表できればいいかな、と。でも今回、イタリアで発表する機会があり、とてもよい反響を得て、励みになりました。色使いのセンスがあり、モノづくりに長けた国イタリアで、本物を知る人たちが評価してくれたということはとても嬉しかったです。

―このパンデミックをきっかけにファッションは変わるといわれていますが、ご自身の中で変わったことはありますか。

 実はこのパンデミックの前に、もうちょっとコマーシャルなラインを作ろうという企画があったのですが、こういう状況になってその話はストップしました。それで今は、やはり原点に戻って、自分しか作れないものを作り続けようと思っています。これからも年に1回のコレクション発表で、自分の作りたいものを作りたいと思います。その信念を貫いていれば、今回のようにサポートがあったり、意外と何とかなるのではないかと(笑)。

―今後の計画と夢を教えて下さい。

 私は職人的な世界に憧れているので、これからもずっとこういうモノづくりを極めていきたいです。あと、日本のデザイナーを応援する「ROOM」というプロジェクトに参加していて、そこで自分が海外で築いてきたコネを、あくまで肩ひじはらず気兼ねない感じで繋げるお手伝いをしていきたいと思います。そんなことをしつつ、これからも自分が信じること、できることを発信していきたいと思っています。

(インタビューを終えて)

このような晴れの舞台にも気負うことなく、かといって怖気(おじけ)ることもなく、自分の信念をぶれなく貫き、あくまで自然体で物事を冷静に判断している様子が印象的であった。商業的な部分ばかりに走りがちな今のファッション界において、自分の作りたいものを作り続けるというスタンスで進む小泉氏に、一昔前のデザイナーの気概のようなものを感じた。

 

 

取材・文:田中美貴

 

■「エミリオ・プッチ)」2021春夏カプセルコレクション

https://apparel-web.com/collection/milano/230672

田中 美貴

大学卒業後、雑誌編集者として女性誌、男性ファッション誌等にたずさった後、イタリアへ。現在ミラノ在住。ファッションを中心に、カルチャー、旅、食、デザイン&インテリアなどの記事を有名紙誌、WEB媒体に寄稿。アパレルWEBでは、コレクション取材歴約15年の経験を活かし、メンズ、ウイメンズのミラノコレクションのハイライト記事やインタビュー等を担当。 TV、広告などの撮影コーディネーションや、イタリアにおける日本企業のイベントのオーガナイズやPR、企業カタログ作成やプレスリリースの翻訳なども行う。 副業はベリーダンサー、ベリーダンス講師。

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