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2020.09.24

進化し続ける「ファッション」と「エクスペリエンス」

ニューヨークファッションウィークの公式サイトより

 2020年も早いもので半分が経過してしまいました。9月というとファッション業界においては「ニューヨークファッションウィーク(#NYFW)」があります。これまでのファッションウィークは、世界中からメディアやファッション業界の関係者、ファッション好きの人もニューヨークを訪れ、ショーに加え、ショップのオープンやイベントなど、会期中のスケジュールを組むことはひとつの仕事になるほどでした。しかし残念ながら今年も同じように、という訳には行きません。コロナウィルスの大きな影響を受けたニューヨーク。NYFWは開催出来るのか?開催する場合、どんな形で行えるのか?など、いくつものクエスチョンマークが私たちの頭の中に浮かんだことでしょう。しかしNYFWはクリエイティビティを絶やすこと無く前進することを選択。今年は主にデジタルでの開催となりました。

 

 NYFWをキックオフしたのはニューヨークを拠点にグローバルブランドとして活躍するアジアンデザイナーのJason Wu(ジェイソン・ウー)。彼が手がけるデザインはセレブリティーや著名人、そして前ファーストレディーであるミシェル・オバマ氏にも幾度となく着用されています。

 

 3日間の開催中には「N.HOOLYWOOD」そして「ADEAM」、メンズショーの「NEW YORK MEN’S DAY」からも複数コレクションが発表されました。残念ながらMarc JacobsやOscar de la Renta、Kate Spade New York 、Tory Burch やMichael Korsなど馴染みのN Yブランドのショーは開催されませんでしたが、一方で、ブラック・イン・ファッション・カウンシル(BIFC)がキュレートした、素晴らしい黒人ファッションデザイナーのクリエイティビティを知る機会を持て、ニューヨークのダイバーシティーを感じた今季NYFW でした。

ファッションの枠からどんどん飛び出していく時代

 今回のNYFWで楽しみにしていた一つには、住宅リフォームや家電などを扱う米国の大型ホームセンター「Lowe’s (ロウズ)」とニューヨークファッションウィークが行ったコラボレーションです。それは、Jason Wu(ジェイソン・ウー)、Christian Siriano(クリスチャン・シリアーノ)、Rebecca Minkoff(レベッカ・ミンコフ)といったNYデザイナーがロウズとコラボし、デザイナー自らがランウェイやプレゼンテーションの空間からインスパイアされるラグや照明、パティオの家具などをロウズが展開する商品よりキュレート。それらのアイテムはLowes.comで買うことが出来るという試みでした。ファッションショーのシーンを自宅にも!というコンセプト、素敵です。

 

 先月19日にはロウズの決算報告がありましたが、売上高、利益ともにアナリスト予想を上回ったとメディアでは伝えられています。米国ではパンデミックの影響から外出を自粛。自宅での時間が増えたことで、ホーム関連の商品に関心を抱いた消費者は日本のみならず、米国でも増加傾向でした。少しでも快適に、そして明るく過ごしたいと、私も自粛生活中にはよくPinterestでインテリアのアイディアを検索していました。これまでもファッションデザイナーが手がける家具や食器、インテリア商品などはコラボレーションという形で発売されたことはもちろんありましたが、ロウズのチーフ・ブランド・マーケティングオフィサーもプレスリリースの中で伝えているように、今年はとりわけ自宅での時間が増えるだけに「ホーム×スタイル」はますます流行です。そのホーム×スタイルというコンセプトをNYFWに取り入れたことにより、現在特に消費者の関心が高いホームアイテム業態を通じて、再びファッションにも目を向けてもらえるきっかけとなった様な気がしています。

Twitchの公式サイトより

 9月17日に開催されたバーバリーのショーは開催前から注目を集めました。先ほどお伝えした「ロウズ×NYFW」の異業種コラボを超え、バーバリーは、ゲームなどのライブ動画配信によく利用される動画配信サービス「Twitch」と提携したのです。私たちにとって動画を使ったサービスは、視聴する側、そして配信する側いずれにおいても以前と比べて利用する機会が増えたと思います。YouTubeやZoom、インスタライブ等の動画配信サービスが企業やブランドでは主に活用されている中、バーバリーは「Twitch」をあえて選んだ点に、常に先進性を追求し続けるブランドと言う強いメッセージを私は受けます。今回の試みは、デザインのイノベーションのみに留まらず、ファンとブランド、また、ユーザー同士にもインタラクティブな形で特別なエクスペリエンスを体験する場を与えてくれたのです。

 

 ブランドはこれまでのショー形式にこだわり続けるのではなく、「今」という環境下で、いかにして世界中に存在するファンへクリエイティビティやエクスペリエンスを届けることができるのかを考え、ニューエイジに向けて進化しなければならないのでしょう。私は今回のNYFWやバーバリーの試みを見ていて、思っていた以上にこれからのファッションショーの未来を感じました。次世代のファッションショーの形スタートラインにようやく立ったのかもしれません。

 

NEW YORK FASHION WEEK・2021年春/夏

開催日:2020年 9月13日 – 9月16日

https://nyfw.com/
アパレルウェブ取材記事:https://apparel-web.com/pickup/228367

 

NEW YORK FASHION WEEK GOES HOME with LOWE’S のコレクションはこちら


 

 

R I N A

90年代の米国がネットバブルだった頃に米国にて日本向けのファッションポータル事業にコンサルタントとして関わる。

 

以降、「ファッション」と「インターネット」上で行われるビジネスを中心とした事業に15年ほど携わり、Web製作やディレクション、ビジネスのコンサルタントを行う。現在は米国のファッション事情やトレンド、ファッションとIT関連を中心とした執筆、今までの経験と知識を活かしビジネスサポートも行っている。

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