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2020.09.04

アマゾンのノウハウが蓄積された生鮮スーパー 「Amazon Fresh」1号店が開業

Written by AIR編集部

 米アマゾンは2020年8月末に、生鮮食品などを販売するスーパーマーケット業態の「Amazon Fresh(アマゾン フレッシュ)」の初の店舗をロサンゼルス郊外のThe Woodland Hill(ウッドランドヒルズ)にオープンしました。オープン後数週間は招待制ですが、その後一般公開となる予定です。今後はロサンゼルス、シアトルやシカゴなどの地域でさらに5店舗の出店を計画しているといいます。今回は「Amazon Fresh」の仕組みについて紹介します。

「Amaozn Go」、「Whole Foods」との差別化

 

Amazon Freshの公式サイトより

 アマゾンの傘下には、「Amazon Go(アマゾン ゴー)」、「Whole Foods(ホールフーズ)」といった業態がありますが、「Amazon Fresh」はこの2つ業態の特徴を取り入れつつも、差別化を図った店舗設計だといえます。「Amazon Go」は「レジなし無人コンビニ」、「Whole Foods」は高級志向の自然食品やオーガニックフードを中心に取り扱うスーパーマーケットです。一方、「Amazon Fresh」は「Whole Foods」ほどの高級志向ではないですが、種類豊富な惣菜、生鮮食品を中心に販売し、PBブランド食品や地元の農家から直接仕入れた野菜なども購入できるといった特徴があります。また店舗内で注文し、その場で調理してくれるピザも話題になっている様です。

「Amazon Dash Cart」を導入、コンタクトレスを実現

Amazon Dash Cartの公式サイトより

 「Amazon Fresh」の決済方法については、「Amazon Go」の「レジなし」コンセプトを生かしていますが、仕組みをそのまま採用するのではなく、「Amazon Dash Cart」という新しいテクノロジーを導入しています。「Amazon Dash Cart」の仕組みとしては、まず買い物客は、コンピュータービジョンと商品重量を計測するセンサーが搭載されたショッピングカートを利用し、通常のスーパーと同様に買い物をします。「Amazon Dash Cart」はアマゾンの既存アプリと連携しており、ショッピングカートのセンサーを通じて買い物客がカートに投入した商品リストがアプリに送られます。そして、決済時には、アマゾンのアプリを開きながら「Amazon Dash Cart lane」という専用レーンをカートごと通過するだけで、アプリに登録されているユーザーアカウントのクレジットカード情報と連携し、自動的に決済が完了する仕組みとなっています。また、店舗で商品を探す際、アプリの「Alexa shopping lists」という機能を使うことで、商品の陳列場所を確認することができます。同様に、音声アシスタントの「Alexa」に質問することで、店舗に設置されているスマートスピーカー「Echo Show」を通じて特定の商品の陳列場所を確認することも可能です。

 

 新型コロナの影響下では、この「Amazon Dash Cart」のように、人との接触が避けられる決済の仕組みはコンタクトレス(Contactless)と呼ばれ、米国をはじめ、世界的にも注目されています。衛生面だけでなく、レジの待ち時間の解消になり、店舗運営の効率化にも繋がります。また、店舗にはサービスカウンターが設けられ、アマゾンの有料会員向け限定サービスとして、オンラインで注文した商品の受け取りや、カーブサイドピックアップに対応しているほか、商品は梱包することなく返品手続きをすることができます。

アマゾンのサービスハブとしての役割に注目

 米国では、スーパーマーケットをはじめとするグロサリー市場はおよそ1兆ドル(約105兆円)に上る巨大市場となっています。アマゾンが2017年に「Whole Foods」を買収し、Amazon Freshをオンラインにとどまらずリアル店舗へと拡大したのも、米国の巨大なグロサリー市場における収益を得るための戦略といえます。「Amazon Fresh」はスーパーマーケット業態にイノベーションをもたらすだけでなく、アマゾンのサービスハブとしての機能を果たすことが注目されている理由でもあります。前述したように、アマゾンのオンラインサイトで注文した商品の受取や返品サービスを可能にすることで、特にアマゾンユーザーにとっては、ECショッピングからリアルな食品の購買にいたるまでが1つの場所で済ませられるメリットがあり、「Amazon Fresh」の店舗へ足を運ぶ回数を促す効果も期待できると言えます。

 

 しかしながら、米国では依然として新型コロナの感染状況が厳しい状況にあるため、一般公開後も当面の間は人数規制を実施しながらの運用となることが想定されます。このような現況を加味すると、「Amazon Fresh」のサービスカウンターの役割は既存のスーパーマーケットとの差別化を図る武器として期待できるかもしれません。

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