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2020.08.04

米サンフランシスコ発の体験型店舗「b8ta(ベータ)」が 日本の小売にもたらす新しい体験とは(2)

最新のテクノロジーを堪能できる店舗体験

 b8ta Tokyo – Yurakuchoを取材すると、店舗の入口では、先ほどのインタビューで言及されていたカメラが天井に設置されているのが確認できます。こちらは「AIカメラ」と呼ばれるもので、来店客の性別と年齢層(例20代、30代)を識別しています。この「AIカメラ」以外にも、21台もの小型カメラが天井全体に設置されています。各出品ブースにおいて、お客様が商品の前で5秒以上立ち止まると、この小型カメラによって商品に興味があると認識され、データに反映されます。そして営業終了後、管理画面上にマーケティングデータとして送信されます。

 ベータでは、カメラ設置の理由、どのような顧客データ(推定の年齢、性別、接触した商品など)を出品企業に提供しているか、来店客にきちんと説明しています。個人データを収集する際、企業がどれだけの透明性を示せるかどうかは、顧客との信頼関係構築に大きく影響するためです。

 こちらの写真は、前述のインタビューで触れた、b8ta Tokyo – Yurakuchoで試験運用されている遠隔操作ロボットです。カメラとディスプレイが搭載され、顧客は自身のPCからロボットを遠隔操作し、見たい商品へ移動させることができます。ディスプレイを通して店頭スタッフに商品の質問ができる、といったことも可能です。

 b8ta Tokyo – Yurakuchoでは、「FABRIC TOKYO(ファブリックトーキョー)」の新D2Cブランド「スタンプ(STAMP)」が期間限定で出品し、店舗にカスタマイズデニムの採寸ができる3Dスキャナーが設置されています。カスタマイズデニムのほか、ジャケットやシューズも展開しています。

CAINZ(カインズ)、Google(グーグル)

 ベータの店舗では、「エクスペリエンスルーム」という半個室のスペースを設けています。他の出品スペースとは異なり、ブランドが独自に壁面装飾や什器等を設置することが可能で、ブランドの世界観をより忠実に再現できます。b8ta Tokyo – Yurakuchoでは、オープン時に、「CAINZ(カインズ)」と「Google(グーグル)」が出店しています。

b8taが魅せたテクノロジーとアナログの調和

店舗での接客の様子(メディア宣材より)

 インタビュー取材を終えて、消費者目線としてb8ta Tokyo – Yurakuchoの店舗内で体験してみました。「AIカメラ」の仕組みを知り、様々な最新のガジェットを試したところ、頭の中ですぐに「最新のデジタルテクノロジーが集約されたデジタルストア」というフレーズが浮かび上がりました。しかしその後、何名かの店頭スタッフとの接客、会話を通じ、店頭スタッフの活躍があるからこそ、AIカメラの力は発揮されるのではと感じました。なぜかというと、AIカメラによる仕組みは定量データとして参考にはなりますが、同社の企業理念の核である、「リテールを通じて人々に“新たな発見”をもたらす」にあるように、人間(店頭スタッフ、顧客)がいて「発見」と「体験」が成立し、対話から生まれる感動にこそ価値があると感じたからです。実際にお話しした店頭スタッフの方は、接客というよりも、同じガジェット好き同士として、お客様と一緒に発見を楽しんでいると実感しているそうです。そうして接客を通じて得た「発見」や「顧客の声」を、店頭スタッフが日々、管理画面上にチャット形式で出品企業に伝えています。

 

 このように、データ収集など効率化を求めるところに対しては、先進テクノロジーを駆使しながらも、顧客のリアルな声や現場での気づきといった部分は、店頭スタッフの活躍によってデータ反映され、テクノロジーとアナログの調和が成り立っているように感じました。ベータの日本進出は、出品企業にとっても、顧客にとっても、新しい小売体験のきっかけとなるのではないでしょうか。

 

 

-「ベータ(b8ta)」の公式サイト:https://b8ta.jp/

 

-b8ta Tokyo – Shinjuku Marui
東京都新宿区新宿 3-30-13 新宿マルイ 本館1階

 

-b8ta Tokyo – Yurakucho
東京都千代田区有楽町 1-7-1 有楽町電気ビル1階

 

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