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2020.06.25
今、国をあげて取り組みを強化 中国で主流になるビジネスモデルC2M(Consumer-to-Manufacturer)とは
アパレルウェブ「AIR VOL.33」(2020年3月発刊)より
C2Mの新興ECサイトClub Factory
中国で2013年頃から概念として広まった「C2M」(Consumer-toManufacturer)、そこから更に飛躍して2019年は「C2M元年」と中国では言われています。C2Mとは、『消費者から製造者へ』の略で、製造者が消費者から直接受注を受け小規模な完全受注生産を行うことによって在庫を持たない(ような)ビジネスモデルを指します。近年、中国ではこの「C2M」がITの発展とともに普及し中国小売と製造業の新しい流れとなりつつあります。
2019年は「C2M元年」
必要商城のECサイト
2013年に中国で、「消費者が必要とする商品だけ提供するECモール」というコンセプトを持った中国のECモール「必要商城(ビ・ヤオウ・サン・ザン)」が誕生しました。商品のサンプルだけを掲載し、小規模の注文数による完全受注生産で、C2Mに特化した必要商城は中国のEC業界の常識を塗り替えました。これは中国C2Mの「元祖モデル」と言われています。当時から、在庫を持たない、安売りをする必要が無いなど、注目されていたビジネスモデルですが、近年のデジタル分野における急速な発展とともにC2Mサービスも更に広がりをみせることになります。
C2Mはパーソナライズされたオーダーに対し、完全受注の小ロット生産、かつ短期間納品(一般的に1週間以内)が基本となります。IoTとビッグデータの活用を前提に、小売から、工場の稼働率、サプライチェーン、流通全体のコストを削減することによって、パーソナライゼーションで小ロット受注生産でも利益が出せるといいます。さらにD2Cと同様に、中間卸のマージンを排除し、効率化を追求することで、利益率を高めます。また、C2Mは必要な量だけ生産するので、在庫問題を解決し、無駄なセールもなくなります。そうすることで、結果的にC2Mを採用する企業だけでなく、その提携先の生産工場の負荷軽減や大量生産しないことから、サステナビリティにも寄与します。
「中国製造2025」のカギになるC2M
奥康国際(アゥカン)の店舗。店舗には足のサイズを測る仕組みが用意されている
このC2Mには中国政府も可能性を強く感じており、2015年に“中国製造2025(※1)”という国家施策を掲げました。その中の一つとして、C2Mのビジネスモデルを中国の小売、製造業に戦略的導入する動きがあります。実際に2019年の時点で、C2Mのビジネスモデルを採用したECモールは15社ほど存在、JD.comや拼多多(ピンドゥオドゥオ)などの大手ECモールもC2Mの新規事業を発足しました。特に近年では、JD.comがC2Mへの取り組みに力を入れています。JD.comは2016年頃から、C2Mのビジネスモデルを取り入れており、2019年にはC2Mモデルで開発した商品の売上が、同社のEC全体の売上の約4割を占めるようになってきました。また、2022年までにJD.comのプラットフォームでC2Mのビジネスモデルで開発した商品を1億点発売するという計画も発表されています。
※1中国製造2025…次世代情報技術など10の重点分野と23の品目を設定し、製造業の高度化を目指す取り組み。
C2Mへの取り組みはECモールだけではありません。2018年には中国のシューズブランド「奥康国際(アゥカン)」が初めて、C2Mのビジネスモデルを新規事業として採用しました。仕組みとしては、店舗に足の形状を測定する装置を設置し、15秒以内にレーザーで顧客の足の3Dデータを正確に測定します。測定した顧客データが蓄積されたビッグデータをもとに分析した後、必要な資材、生産時間の概算などを算出し、受注生産工場に送信します。最後に、迅速なロジスティクスにより、約4~5日で、カスタマイズされた製品が顧客に届けられます。IoT(Internet of Things)とビッグデータを活用することで、僅か数分で店舗から直接製造工場へオーダーできるという仕組みです。
C2Mのビジネスモデルは主に2パターンにわかれます。店舗でIoTを活用することで、カスタマイズされたデータをクラウド経由で直接製造工場へオーダーするモデル。必要商城のように、ECサイトで商品サンプルとカスタマイズ機能を提供することで、工場へ生産依頼するモデルの2パターンです。中国ではまだ、後者のECサイトを活用したパターンが大多数ですが、今後「中国製造2025」に向けて、店舗での体験を交えたC2Mビジネスも加速すると言われています。国をあげてC2Mを推進する中国において、パーソナライズされた商品でないと、お客様の支持を得ることが難しい時代が到来するかもしれません。また、今回ご紹介したのは靴(雑貨)の事例ですが、人によって体形が違い、好みのサイズ感も全く異なる「衣服」でも、顧客へパーソナライズされた商品の提供と十分な利益を両立することはできるのでしょうか。中国のC2M事情、今後も要注目です。