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2020.05.22

米国小売店:アフターコロナをどう切り抜ける?

 5月20日ごろ、多くの州で経済活動が再開されましたが、依然として、ソーシャルディスタンスを保つことが必要とされ、営業時間の短縮、入店者数の管理、マスクや手袋着用の義務、試着室の使用禁止、カーブサイド・ピックアップ(インターネットで注文した商品を店舗で、車から降りずに受け取ることができる)の利用など、今までとは異なる「ニューノーマル」が定義されつつあります。試着室の数を減らし、試着室使用後は消毒を行い、レジ待ちは6フィート(1.8M)の距離を置くなどの対策が取られています。これまで、殆どの店舗が営業を停止していた為、過剰在庫を抱え、現在販売している商品も季節が変われば売れなくなってしまい、アパレルの小売業者は深刻な在庫問題に直面しています。赤字覚悟でも、SNSを活用しながら、大幅値下げのEC販売に転じているのが現状です。

 

 従来であれば、「T.J.Maxx(T.J.マックス)」に代表されるオフプライス店が過剰在庫やキャンセル品を買い取り小売店と共存しながら米国の在庫の流通をうまく成立させていたのですが、オフプライス店も閉鎖を余儀なくされ、更なる悪化を招いています。

「T.J.Maxx(T.J.マックス)」の店舗

オフプライスの巨人T.J.Maxxはポストコロナをどう切り抜けるのか?

 2008年後半以降の景気後退時期は、低価格を重視した商品が好まれ、階級を問わず多くの米国民がオフプライス店でのショッピングを始めました。以降、オフプライス店は、デパートや専門店のシェアを完全に奪い、メイシーズがオフプライス業態の「BACK STAGE(バックステージ)」をスタートするなど空前のオフプライス店ブームを引き起こし、割引されたブランド品、頻繁な商品の投入、トレジャーハンティング(宝物探し)要素が加わり、消費者の店舗離れが進む中、実店舗で成長できる唯一の業態として注目されてきました。

 

 しかし、ロックダウンが始まってから、店舗の閉鎖だけでなく、配送センターとEコマースも停止し、Eコマースに関しては、元々、割引き価格が売りの為、オペレーションコストを考えると採算が合わず、オンライン上でトレジャーハントの実現も困難、その時に買わなければ次に行った時にはもう無い売り切りスタイルという性質上、店頭とオンラインで在庫調整を行う事が難しく、T.J.マックスのEC化率は僅か2%に留まっています。

「BURLINGTON(バーリントン)」の公式ページより

 同じく競合の「ROSS(ロス)」はEC販売を行っておらず、「BURLINGTON(バーリントン)」もEC化率が売り上げ全体の1%に満たない状況です。ポストコロナ時代を迎えるにあたって、これらのオフプライス店は、オンライン販売にシフトする為の機能を備えていないという決定的な弱点に直面しています。

 

 現在のところ、デパートやブランドからの過剰在庫やキャンセル品の仕入れはストップしていると伝えらえています。しかし、5月9日から一部の州の店舗及びEコマースが再開されており、店頭では、2ヶ月間停滞していた在庫を処分する為、店頭の半分近い商品がクリアランス価格で販売され、記録的な来客数が押し寄せた事がニュースになっていました。また、オンラインの方は1日当たりの注文数に制限があり、制限数に達すると翌日までシャットダウンしたため、利用客からの不満の声が上がってしまいました。

 

 「J.CREW(J.クルー)」や「Neiman Marcus(ニーマン・マーカス)」の経営破綻を皮切りに、その他のデパートやアパレル小売店が破産する可能性が伝えられていますが、オフプライス店にとって有利な点は、これにより競合店が減少し、「J. C. Penney(J.C.ペニー)」や「Sears(シアーズ)」撤退後の店舗を利用する事ができるようになることです。

 

 米国では4月の時点で2000万人以上が失業手当を申請しています。日本ではあまり伝えられていないと思いますが、失業者には、失業手当てに加え、7月25日まで週に600ドルの救済金が支払われることになり、元々の給料よりも高い金額を得ている人々もいます。これとは別に、米国民に1200ドルの救済金も支払われました。(夫婦で2400ドル、子供500ドル)

 

 ソーシャルディスタンスが必要とされる中、不特定多数の人々が触れた商品を手に取るディスカウントストアで、いかに安全で快適に買い物をする事ができるのかが最大のポイントになると思いますが、これらの対策と消費者の節約マインドで、低価格重視のショッピング傾向が当分続くことは間違いありません。

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