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2017.06.29
【ロンドン18春夏メンズ】今のロンドンらしいキーアイテムはコレ!
ロンドンコレクション レポート
高嶋一行(写真・文)
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今年で5周年を迎え、アニバーサリー感をアピールしながら行われたロンドンファッションウィークメンズ。2017年6月9日から4日間の間に約50のブランドがコレクションを発表しました。今回も各ブランドの最新コレクションとともに、会場へ集まるファッション関係者をリサーチ。ロンドンのトレンドファッションとそのキーアイテムとなるアイテムをピックアップしました。
手軽で自由度高し!バンダナで首元アクセント
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天候に恵まれた今回のロンドンファッションウィークメンズ。今シーズンは、いつもの曇りや雨が似合うロンドンではなく、夏を先取りしたような晴天が続きました。そのため、ストリートスナップも夏目前の着こなしが目立っていました。
特に視線を集めたアクセサリーが「バンダナ」。使い方としては、細長く折って首に巻くスタイルがオーソドックスな取り入れ方のようです。薄着となる春夏ファッションのアクセントとして自然体にアピールできるアイテム。もちろんカラーや柄、巻く場所から折り方までアレンジ方法でオリジナリティーを出すことも可能です。
また、より上品でドレスっぽく仕上げるならシルク素材のスカーフなどで代用もでき、カジュアル過ぎないコーディネートにも十分対応できる幅広いスタイリング方法が魅力。アメカジファッションやマリンスタイルなど、常にサマースタイルとして一定の支持を得ていたバンダナが、今年はロンドンの街中に広がる予感がします。
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アレンジ自由で手軽なアクセントになるバンダナ。メンズに限らずレディスファッションにも浸透中。夏の薄着にマッチしやすく清潔感もアピールできるアイテムとして今の時期にピッタリです。
■ランウェイではドレッシーな着こなしにオン
同じく、今回のロンドンコレクションで発表されたブランドでも首元にスカーフのスタイリングが取り入れられています。「ケーティーゼット(KTZ)」はブランドの定番カラーでもあるブラックをベースにしたライトな生地。「ヴィヴィアンウエストウッド(Vivienne Westwood)」はブルーを基調にオリジナルテキスタイルのプリント柄を合わせています。
これらのスタイルがリリースされるのは2018年の春夏シーズン。今年の夏はバンダナがトレンドであり、来シーズンはより存在感を高めるようにスカーフなどを取り入れたスタイリングが流行するかもしれません。
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最新コレクションとしては、スカーフをよりドレスアップするスタイリングに利用されています。来シーズンでは、ジャケットにスカーフを合わせるなどよりドレス的な使用が目立つかもしれません。(左から)ケーティーゼット、ヴィヴィアンウエストウッド
胸元で主張するのがロンドン流 ストリートスタイルなポーチが人気
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メンズファッションとしてストリートスタイルの支持率が高いロンドン。ロンドンファッションウィークメンズの中にもストリートスタイルをベースとするブランドも多く、会場周辺に集まる人たちの服装にも少なからず法則性が出てきます。
今回、一番の共通点として明らかにスタイリング率が高かったアイテムがポーチバッグ。こちらもバンダナ同様、使い方のアレンジは多様なアイテムです。ウエストにフィットさせるオーソドックスな取り入れ方から、ショルダーバッグやボディバッグのように肩にかける持ち方、胸あたりのフロントに持ってくる方法など様々。
ブランドにもそれぞれ個性があり、ストリート系やアウトドア系のブランドだけでなく、「グッチ(GUCCI)」などのラグジュアリーブランドのポーチを取り入れたスタイリングも高い割合で登場しています。
そしてその特徴は、何よりもコンパクトな見た目であること。数年前にクラッチバッグがトレンドとなったことから、必要最低限の荷物で外出することが習慣化。ポーチバッグの小さな収納力でも抵抗なく取り入れることができたとも考えられます。シンプルなライフスタイルや断捨離の思考は選ぶバッグにも反映しているかもしれません。
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バックパックやクラッチバッグのトレンドが落ち着き、現在はポーチバッグが勢いに乗っています。目立つようにあえて胸元に取り付けるスタイリングが今年のロンドン風な着こなしです。
■来シーズンもお約束のアイテムに
最新コレクションでも多数のブランドがポーチバッグをスタイリングに採用。「ボビーアブリー(Bobby abley)」はブランドのシンボルであるクマのシルエットにカラフルなフリンジがついたデザイン。「リアムホッジス(LIAM HODGES)」は、スローガンデザインとしてメッセージをプリント。大きく「NOISE」の文字が印象的です。そもそもストリートファッションの間でポーチバッグは定番アイテムのひとつ。長く続きそうなトレンドと言えるでしょう。
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最新コレクションでも多数のブランドがポーチバッグをスタイリング。来シーズンも引き続き、ロンドンのトレンドバッグとなりそうです。
(上段左から)ボビーアブリー、リアムホッジス(下段左から)チャールズジェフリー ラバーボーイ、ブラッドブラザー
■売り切れ殺到!プレイセス+フェイセス(PLACES+FACES)
ポーチバッグの中でも注目しておきたいブランドが「プレイセス+フェイセス(PLACE+FACES)」です。ロンドン発のブランドで、人気フォトグラファーがプロデュースするブランド。ヒップホップを中心とした有名アーティストや、注目の新人アーティストなどを巻き込んでプロモーションされているアイテム。カメラ好きや音楽好きが支持しているため、リリースされると即完売となる勢いがあるブランドです。
中にはプレミアがつくこともあり、中古でも高値で取引されているぐらいの熱狂ぶり。ストリートファッションといえばシュプリームがカルト的な人気を集めていますが、「プレイセス+フェイセス(PLACE+FACES)」も「シュプリーム(Supreme)」に続くポジションを確立する可能性は十分にあります。
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ルイ・ヴィトンが仕掛け人?鶴や鳥モチーフも目立つロンドン
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デザインアクセントとなるモチーフとして、鳥や鶴が描かれたアイテムも会場周辺でよく目にしました。トレンドとして考えられる要因は、約1年前のパリメンズコレクションで発表された「ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)」のデザインにあります。
旅をテーマにデザイナーが出会った物を詰め込んだ2017年春夏コレクション。その中に鶴をモチーフとしたアイテムが登場していました。その影響か今年の春夏アイテムとして鶴モチーフを取り入れた着こなしが目立つことに。
鮮やかで創作感ある鶴が主役のプリントシャツや、胸元にポイントとしてデザインされたもの。また鶴だけでなく、鳥モチーフのトップスもたくさん視線に入ってきたシーズンでした。
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共通するのは、羽を広げて羽ばたく鳥や鶴をモチーフにしたデザイン。上品な雰囲気だけでなく、力強さも感じる貫禄が特徴的。
ロンドンでも広がる「メッセージを着る」スタイル 間接的な主張が粋?
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「ディオール(Dior)」をはじめ、ラグジュアリーブランドの間で広がりを見せるスローガンデザイン。メッセージを主張するようにデザインされたアイテムは視線を集めるアイキャッチ力があります。一方ロンドンでは、スローガンというよりも、ひとつの単語で主張するシンプルなデザインがメイン。
「VACATION」などがその一例で、単語だけでも「休暇を取りたい」「働きたくない」などの願いが何となく連想できます。
しかも根強い人気がカタカナを取り入れたデザイン。「パラダイス」などは「現実逃避したい」という意味が込められているように感じられ、さらにカタカナにすることで暗号化されたメッセージのようにも捉えることができます。
このように、ロンドンではスローガンデザインのような直接的な主張ではなく、関節的にさりげなくメッセージを込めたデザインがメイン。今までもカタカナをロゴデザインとして取り入れたブランドは多数ありましたが、採用されるシチュエーションが少しずつ増えてきていると言えます。
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キャッチーなロゴデザインもロンドンで人気のデザイン。日本人なら二度見してしまうフレーズがロンドン市内で多数発見できます。
■ロゴデザインは漢字を採用がイイ“感じ”
最新コレクションではロンドンの注目ブランドから漢字デザインが登場。「ヴィヴィアンウエストウッド(Vivienne Westwood)」は大きく「道」とデザインされたコレクションを発表しています。
さらに、日本人デザイナーであるコシノミチコ氏が手がける「ミチココシノ(MICHIKO KOSHINO)」も最新コレクションに漢字デザインを採用。デザインテーマである野球から、まさに直球デザインとも言える「野球少年」の文字がアクセントとなっています。
今後もロンドンなどの英語圏を中心に、カタカナや漢字などの文字を取り入れたデザインはさらなる広がりを見せる模様です。
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日本でも人気のブランドが漢字を取り入れたアイテムを展開中。逆輸入のように、インポートブランドの漢字デザインが日本でも広がりそうです。
スポーツブランドは2択!カッパ(Kappa)かフィラ(FILA)がオシャレ
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デザインとして採用されているのは、カタカナや漢字だけではありません。同じくロシア語もオシャレに着こなすアクセントとなっています。
ロシア語がメインとなったデザインは「カッパ(Kappa)」もしくは「フィラ(FILA)」のスポーツブランド。その仕掛け人となっているのはゴーシャ・ラブチンスキー氏。自身の名前を冠した「ゴーシャラ ブチンスキー(GOSHA RUBCHINSKIY)」のデザイナーです。
「コムデギャルソン(COMME des GARÇONS)」がサポートし、ドーバーストリートマーケットでも取り扱いがある話題ブランドがコラボレーションの相手として選んだのが、「カッパ(Kappa)」と「フィラ(FILA)」などのスポーツブランド。ロシア語のロゴを取り入れたデザインは、ロンドンにあるドーバーストリートマーケットでも人気に。
オシャレ感度の高い人達が集まるロンドンファッションウィークメンズの会場では、たくさんの「ゴーシャラ ブチンスキー(GOSHA RUBCHINSKIY)」スタイルを目撃。さらに、コラボアイテムでなくても、スポーツミックスのファッションに「フィラ(FILA)」をチョイスするなど、ロンドンでオシャレなスポーツブランドは「カッパ(Kappa)」もしくは「フィラ(FILA)」の2択の傾向があります。
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■「フィラ」はリアムホッジス(LIAM HODGES)ともコラボ
今回のロンドンコレクションでは、「リアムホッジス(LIAM HODGES)」も「フィラ(FILA)」とのコラボレーションを発表。コレクションの一部に登場しています。ウェアだけでなく、スニーカーもコラボレーションの対象となっていることから、ロンドンのストリートファッションでは「フィラ(FILA)」人気が加速。旬なスポーツブランドの地位を確立しています。
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退屈させない!ランウェイショーを超えた見せ方の工夫
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ロンドンファッションウィークを始め、世界で行われるファッションウィークのランウェイショーはモデルが歩いてコレクションを見せるスタイルが基本です。ただ、そればかりだと、単調で退屈に感じることもあるでしょう。今回のロンドンファッションウィークメンズでは、最新コレクションの見せ方を工夫するブランドが増えたことも大きな特徴でした。
会場に集まったオーディエンスを最も楽しませたのは、「バンド オブ アウトサイダー(BAND OF OUTSIDER)」でしょう。最新コレクションの発表方法として行われたのは、ファッションショーではなくコメディーショー。およそ10分間隔で複数のコメディアンが代わる代わる登場し、それぞれブランドの最新コレクションを着てトークを行うというスタイル。
モデルが着用した服を見せるだけの一般的なスタイルから、来場者を楽しませるサービス精神を感じた発表方法です。
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笑い声が絶えない大好評のパフォーマンスはバンド オブ アウトサイダー(BAND OF OUTSIDER)のプレゼンテーション。長居する来場者が多く、大盛況のコレクション発表となっていました。
「ヴィヴィアンウエストウッド(Vivienne Westwood)」のショーでは、モデルとして多くのダンサーやパフォーマーを配置。終始様々なパフォーマンスを披露することで、コレクション同様にショー自体の印象も強いものとなりました。
デザイナー自身もダンサーに肩車をされる形で登場。大きな歓声が上がり、今まで以上に盛り上がったショーとなっています。
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ダンサーやパフォーマーの間を挟むようにモデルがウォーキング。瞬きをする時間がないほど、臨場感と早い展開で圧倒したショー内容を行ったヴィヴィアンウエストウッド(Vivienne Westwood)。
強まるストリートファッション色
デザイナー支援制度なども後押しとなり、若手ブランドの参加が増えるロンドンファッションウィークメンズ。その中でもストリートスタイルをベースとしたブランドが目立つ傾向に。そのため、トレンドファッションもストリートファッションから広がりを見せているアイテムも多いです。今後もこの流れのまま、ロンドンのメンズファッションはストリートファッションから盛り上がっていく予感がします。
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ア コールドウォール(A-COLD-WALL*)
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高嶋 一行(たかしま・かずゆき)
ロンドンのELEY KISHIMOTOにてデザインアシスタントを経験後、日本では海外ブランドのセールス・PRエージェント会社に勤務。 現在はイギリスに戻り、英国を中心としたファッション記事を執筆中。 現在、ファミリーセールやサンプルセールの情報サイト「tokyosamplesale.com」(毎日更新)も運営している。
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