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2017.07.05

ピッティからパリへと繋げられたか? 「ショールームトーキョー」出展各社に聞く

ピッティ・イマージネ・ウォモに初参加

 パリ・メンズ・ファッションウィークの時期にマレ地区で開催されている「ショールームトーキョー(showroom tokyo)」(主催:東京都/繊維ファッション産学協議会、共催:一般社団法人日本ファッション・ウィーク推進機構/TOKYO FASHION A WARD事務局)は今回から、フィレンツェで開かれた「ピッティ・イマージネ・ウォモ(PITTI IMMAGINE UOMO)」へも参加することとなり、新たな広がりを見せた。

 

 「東京ファッションアワード(TOKYO FASHION AWARD)」は、「東京を拠点とするファッションデザイナーが、世界の舞台へ飛躍するためのサポート」を目的としており、パリのショールームトーキョーでは、昨年10月に発表された第3回受賞デザイナー6ブランドが2回目の出展。第2回受賞デザイナーの中から4ブランドが4回目の出展で、2018年春夏コレクションを披露した。また第3回受賞デザイナーのみ6月13~16日のピッティに展示した。

 

 パリに先駆けて開かれたピッティでは、いくつかのブランドはサンプルが間に合わず、アーカイブを展示するに留まり、実際に渡伊したデザイナーは居なかった。またレディスのみ展開するブランドにとって、ピッティというメンズの祭典が最善の場所かという懸念もあったという。一方でパリへの誘導に繋がり、メンズ・レディス双方を扱うショップへのPRにはなったとする声も聞かれた。

■ ダブレット(doublet)

 第3回メンバーで一番の成果が噂された「ダブレット(doublet)」は、フランス、英国、イタリア、米国、韓国、台湾、香港、中国、デンマーク、カナダなど既存20件に加え、今回は新規で伊、カナダ、オーストラリアなど5件から反応があった。特に人気だったのは得意の刺繍ものとプラスチックカバードシャツ・Tシャツのシリーズ。圧縮袋にハンギングしたパッケージデザインとコーティングしたアイテムの面白さが受けたようだ。

■ チカ・キサダ(Chika Kisada)

 「チカ・キサダ(Chika Kisada)」は、香港、カナダなどの既存に加え、ウクライナ、米国、中国、オーストラリアなど4件程から反応があった。レディスブランドという事もあり、メンズ・レディス複合店からの引き合いとなった。チュールレースのシリーズとランダムにプリーツの入ったコットンドレス、大判チェックのシリーズに当たりがあったという。

■ ロギーケイ(ROGGYKEI)

 「ロギーケイ(ROGGYKEI)」は、ユニセックスでレディスの時期にも既に実績を作っており、フランス、ドイツ、デンマーク、ロシア、エストニア、ポーランド、オーストラリアなど世界各地に既存12件の取引先を持つ。今回は既存5件に加えてスペイン、中国、ジョージアなど3件から反応が取れた。リネン・ラミー混のカーキのコートやリネンボイルのプルオーバーに当たりがあったという。

■ ターク(TAAKK)

 「ターク(TAAKK)」は今回、韓国、米国、カナダから新規3件を獲得。NYのショールーム出展による成果と合わせ、海外販路開拓を進めているが、日本での知名度から比べてゼロベースでのスタートという面をポジティブに受け止めているそうだ。デニムの霜降り風ジャカードなどキャッチーなアイテムが好評だったという。

■ ヨウヘイ・オオノ(YOHEI OHNO)

 「ヨウヘイ・オオノ(YOHEI OHNO)」は、レディスのみのため、手応えが乏しかったのが実態だ。スケジュールの前倒しにチャレンジできた点で成長に繋がったとしたものの、ブランド像の分かりやすさやバランスに欠けた点もあったという。引きがあったのは、オーストリアの画家、エゴン・シーレの絵画をモチーフにしたドレスなどキャッチーなものだったそうだ。

■ ベッドフォード(BED j.w. FORD)

 「ベッドフォード(BED j.w. FORD)」は、カナダ、米国、香港など既存5件に加えて、英国、ドイツ、シンガポールなどの新規を獲得した。生地感の軽いアイテムや普段あまり作らないプリントもの、シャツ類に引きがあったという。ピッティについては、将来ショーをやりたいという気持ちがあるので、きっかけになればと思い参加したそうだ。

 

 第2回受賞メンバーは、今回が支援最後となるため、今後の展開も睨んでの出展となった。

■ アンドワンダー(and wander)

 「アンドワンダー(and wander)」は、トレードショーの様子をうかがうため、「MAN(マン)」にも同時に出展し、ショールームトーキョーへの送客を図った。人気だったアイテムは、脇下のジップを開けるとポンチョになる超軽量のフライコートやセーレンのビスコテックスによる青から黄、黒から青へのグラデーションが美しいパーカなど。またハニカム構造で分かりやすいハイストレッチジャージ素材など目に見えてテクニックの明解なものが受けたという。

■ コーヘン(Coohem)

 「コーヘン(Coohem)」は、すでにレディス時期のトラノイに出展実績があり、15件以上の取引先を持つ。今回はイタリア、香港などの既存3件に加え、中国、カナダ、香港からメンズ2件、レディス1件の新規が取れたという。得意のファンシーヤーンを使ったツイード状の編地で目立つコートやGジャンに人気があったという。4回の出展を通じて、単品メーカーの難しさとトータルなコレクションで世界観を出すことがショールームビジネスで求められている点などを学んだという。

■ ネーム(Name.)

 「ネーム(Name.)」は、卸業者のある韓国を除いて7件と取引がある。今回はカナダ、スペイン、英国などの既存に加え、イタリア、英国など2件の新規から反応があった。社内に海外窓口も作り、4回を経てサイクルも出来上がってきたため、これから海外販売を本格化させていきたいとしている。トレンチコートにデニムシャツが付いているキャッチーなものやライムグリーンの色目など分かりやすい物に人気が集中したという。

■ ウィズ・リミテッド(WHIZ LIMITED)

 「ウィズ・リミテッド(WHIZ LIMITED)」は東京でオーダーを受ける既存12件の取引先がある。今回はイタリアと中国の既存に加え、いくつかのコンタクトが取れているが、営業代行しているラキッチショールームがハンドリングしているそうだ。いくつもの国旗ワッペンを貼り付けたブルゾンなどインパクトのあるものを前面に出していかないと素通りされてしまうという。パンチの効いた商品ほど受けが良いそうだ。

「開催時期」「オールジャパン体制」が成功の鍵に

 第3回受賞ブランドでは、レディスブランドが2ブランド入り、プレコレ時期とはいえ、集客の苦労がうかがえる。またピッティにオンスケジュールのサンプルを持って行けなかった点も残念だ。フィレンツェからパリへの送客がどれほどできたのか。その成否を確認してほしい。またフィレンツェでのPRやプレゼンスを高めるという点での効果を期待したブランドもあり、十分な準備時間の確保とサンプルアップ、メンズのみの参加などの形を執ることで今後の可能性は十分にあるのではと思われる。

 

 一方、第2回受賞ブランドにとっては、この2年間のチャレンジは、それなりの成果と経験になったようだ。これからの自力での海外販路開拓に今までの結果を生かしていってほしい。

 

 さて、この取り組みでは、メンズブランドにとってはビジネスのタイミングも良く好都合だが、3月の東京でのショーお披露目では受注締め切り後でPRとしてのメリットしか出せないという点がもどかしく、レディスブランドにとっては、サンプルアップの早期化とプレコレ時期のみというビジネス面でのデメリットが大きい点が何とももどかしい。でき得れば、レディスは3月、9月のセカンドセッション時期にショールームを別途開催するなど、予算の問題も大きかろうが実現してほしいと切に願う声が聞こえてきた。

 

 また同時期に開催されている日本ブランドの個別または共同のショールームとの連携、例えばPRや共同開催なども併せて模索してみてはどうだろうか。実施主体の枠を超えて、オールジャパンで取り組む時期に来ているのではなかろうか。


 

 

久保 雅裕(くぼ・まさひろ)
アナログフィルター『ジュルナル・クボッチ』編集長

 

ファッションジャーナリスト・ファッションビジネスコンサルタント。繊研新聞社に22年間在籍。『senken h』を立ち上げ、アッシュ編集室長・パリ支局長を務めるとともに、子供服団体の事務局長、IFF・プラグインなど展示会事業も担当し、2012年に退社。

大手セレクトショップのマーケティングディレクターを経て、2013年からウェブメディア『Journal Cubocci』を運営。複数のメディアに執筆・寄稿している。杉野服飾大学特任准教授の傍ら、コンサルティングや講演活動を行っている。また別会社で、パリに出展するブランドのサポートや日本ブランドの合同ポップアップストア、国内合同展の企画なども行い、日本のクリエーター支援をライフワークとして活動している。

 

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