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2017.06.28

消費を左右するSNS最新戦略――NYブルックリンのイノベーションフェス「Northside Festival 2017」レポート

 「ノースサイド・フェスティバル(Northside Festival)」というイベントをご存知でしょうか?NYブルックリンのウィリアムズバーグ地区を中心に、アートや映画、音楽、イノベーションをテーマに年に1回開催されるもので、今年で9回目を迎えます。私のお目当ては、イノベーションに関するコンテンツ。2015年以来、2年ぶりに参加してきました。

 

■(関連記事:Vol.60 NYブルックリンで開催!人気のイノベーションイベントから学ぶ、未来のファッションの形)

アート心を刺激 お洒落なブティックホテルで開催

 2015年度は、ワイス・ホテルを中心に、ブルックリン・ブリュワリー(Brooklyn Brewery)や、キンフォーク・スタジオ(kinfolk studio)が会場となりました。アートや音楽、そして地域の活性化を支援し続けている施設であることから、イベント創設時から利用されています。

 

 その後ウィリアムズバーグは開発が続き、新築のアパートやカフェ、レストラン、大手リテールが出店。ホテルも増え、わずか2年の間に街の雰囲気も変化しました。しかしながら、このエリアには、ラスベガスにあるような大型ホテルとは異なり、小さなブティックホテルが多いのは今でも変わりません。

 

 今年は、ワイス・ホテル、ウィリアムズバーグ・ホテル(Williamsburg Hotel)、ザ・ウィリアム ヴェール(The William Vale)の3つのホテルがメイン会場。イベントが開催できるホールも小規模なので、キンフォーク・スタジオやブルックリン・ブルワリーでも、トークイベントやライブセッション、VRを使ったイベントが開かれました。嬉しいのは、3つのホテルが3ブロック圏内に位置していること。ホテル間を楽に移動できますし、いずれかのホテルに滞在すれば、ストレスを感じることなく参加できます。

参加者の多くがミレニアルズ世代

 3日間に渡るイノベーションのイベントは、テクノロジーを軸に、インタビューやパネルセッション、ワークショップ、コンペティション、VRイベントなどが行われ、夜にはパーティーも開かれました。スピーカーや来場者の顔ぶれはさまざま。スタートアップ企業やエンターテインメント、マーケティング、デザイン、フード、音楽、ファッションなど幅広い業界から集まるのは、ほかのイベントにはないユニークな点です。

 

 2年前と違うのは、参加者の半数ほどがミレニアルズ世代の若きプロフェッショナルたちだったということ。あるパネルセッションの中で、スピーカーが参加者に対し、世代別に挙手をしてもらうよう声をかけたときにも、その傾向は明らかでした。ニューヨーク、しかもブルックリンというヒップな場所での開催ということもありますが、デジタルマーケティングを専門とする若い世代が熱心に参加している姿も、印象に残りました。

ピンタレストの利点を活用 ストーリー性あるコンテンツが消費を喚起する

 今年の注目セミナーの1つが、米ピンタレスト(Pinterest)社でクリエイティブ・ブランドストラテジストを務めるラーシ・ローゼンバーガー(Raashi Rosenberger)さんによるもの。「ピンタレスト」といえば、画像をボードに保存し、共有するソーシャルネットワークサービスとしてスタートしましたが、今では、ショッピング機能と連携したサービスへと進化。ユーザーと深くエンゲージするSNSとして革新を続けています。

 「ピンタレスト」のサービスを活用し、ストーリー性のあるマーケティングや、コンテンツとコマースをうまく連動させた、様々なブランドの成功事例を紹介。企業、そして個人がどう活用すれば最大の効果を発揮できるのか、刺激の多いセッションが行われました。

“Seeking Inspiration & Expressing Creativity”

 ピンタレストの社内調査によると、「ピンタレスト」は、フェイスブックやインスタグラム、ツイッター、スナップチャットなど、ほかのSNSに比べると、インスピレーションを探し出すツール、またユーザーがクリエイティブな部分を表現する場としての機能が、最も優れていることだそうです。

 

 確かに「ピンタレスト」は、待ち時間に何気なく画面をスクロールして閲覧したり、友達が週末何をしていたかなどをチェックするようなタイプではありません。どちらかというと、目的があり、じっくりと検索をすることが多いと思われます。そこに、「ピンタレスト」とユーザーとの深いエンゲージメントがあるとローゼンバーガーさんは言います。

 

 ユーザーは情報を求め、手に入れた情報をボードに保存していきます。ですから、「ピンタレスト」には広告のイメージやルックブックを載せるより、ユーザーや顧客にインスピレーションを与えるコンテンツが適しているのです。クリエイティブなコンテンツを作ることは、顧客のクリエイティビティーを刺激し、結果としてユーザーの記憶に残る存在となるのです。

 

 ではどのようなコンテンツを作ればいいのか?セミナー直後、ローゼンバーガーさんと少しお話をさせていただきました。広告やルックブックの画像をアップすることに終始してしまっている企業やブランドがまだまだ見受けられるなか、「ピンタレスト」をどのように活用したらよいのか、聞いてみたかったのです。

 

 「例えばルックブックの画像をアップするにしても、そこにクリエイティビティーを加えることが大切」とローゼンバーガーさん。そのルックを真似する場合、どうしたらコーディネイトできるのか、「ステップ・バイ・ステップ」のようなコンテンツを作ってみる。また、画像自体に言葉を付け加えることでコンテンツに深みを出すことも1つのアイディアだとも教えてくれました。

 

 確かに、ルックブックの綺麗な画像をそのままアップするより、コンテンツにストーリーを持たせ、クリエイティビティ―を出した方が、インスピレーションも広がりますし、「この商品を買ってみようかな?」という動機づけにもなりますね。

ブランド設立から50年 変化を厭わないノーマ カマリ氏

 アメリカンファッションデザイナーとして自身の名前を冠したブランド「ノーマ カマリ(NORMA KAMALI)」を展開するノーマ・カマリ氏と、ファッションメディア「Refinery29」の共同創設者でグローバル編集長のクリスティーン・バーベリッチ(Christene Barberich)氏の対談も印象的でした。カマリ氏が強調していたのは、ブランドを立ち上げるということは、商品を作るクリエイティビティーだけでなく、起業家としてのビジネスマインドも持ち合わせていなければならないということでした。

 

 ブランドの歴史は、1967年にカマリさん自身がサンプル・ルームで服を作り、店舗で販売したところから始まります。その頃から、自身の自由なクリエイティブマインドをデザインやスタイルに生かし、女性が美しく、かつ心地よく過ごせる服を作り続けてきました。現在は、ウエアだけに限らず、フィットネスやヘルス、ビューティーに至るまで、女性のライフスタイルすべてがブランドのベースとなっています。また、デザイナー自身が年を重ねて感じたことや体験したことを、同じ女性たちに向けて様々な形で発信。とどまることなくイノベーションしているのです。

 

ルックブックはiPhoneで撮影

 アパレルブランドは通常、コレクションのルック撮影を年に数回行います。フォトグラファーやアートディレクターに制作を依頼し、広告やウェブサイト、SNS、エディトリアル向けにプロモーションを行うため、大きな予算が必要となります。しかし、今季のリゾートコレクションは、すべてiPhoneで自ら撮影することにしたそうです。毎シーズン行ってきた手法を続けるのではなく、前例のないことにチャレンジする。デザイナーが自ら撮影したものを直接ファンに届けるという意味でも、非常にエキサイティングな体験だったと言います。常にチャレンジする精神を持ち続けていたいというノーマ・カマリ氏ならではの取り組みといえるでしょう。

 当初は外でのロケを検討していましたが、天気が芳しくなかったため、スタジオで撮影したそうです。iPhoneでルックやディテールを撮り、その合間に動画も撮影。2日間かけ、1日3人のモデルを使用。最終的に、4万2,000枚も撮影したそうです。クリエイターとして絶妙の瞬間を逃したくなく、一生懸命シャッターを切ったといいます。

 「ノーマ カマリ」のファンたちが、ブランドの最新情報を得るための“レンズ”であるモバイルを通じ、自身の服づくりをどう表現したかったのか。イノベーションする気持ちを持ち続けるファッションデザイナー、ノーマ・カマリ氏が撮影したリゾートコレクションは、「ノーマ カマリ」公式インスタグラム (@normakamali)にも掲載されているので、ぜひご覧ください。

 今年に入り、リテール系のカンファレンスやIT系イベントなどにいくつか参加しましたが、マーケティング担当者だけではなく、ブランド側や開発者側の人たちまでが口を揃えて言っていたのは、顧客の立場に立ったブランディングやマーケティングを行う必要があるということ。ブランドのイメージをしっかりと伝えることも大切ですが、一方的なメッセージだけにならないよう、自分たちの顧客についてしっかりと理解する。顧客がブランドの存在に一歩近づけるような、または共感できるようなひと手間加えたコンテンツづくりは、それが多少不格好であっても、顧客とのエンゲージが生まれるきっかけになるはずです。

■ Northside Festival http://northsidefestival.com/


 

RINA  

R I N A

90年代の米国がネットバブルだった頃に米国にて日本向けのファッションポータル事業にコンサルタントとして関わる。

 

以降、「ファッション」と「インターネット」上で行われるビジネスを中心とした事業に15年ほど携わり、Web製作やディレクション、ビジネスのコンサルタントを行う。現在は米国のファッション事情やトレンド、ファッションとIT関連を中心とした執筆、今までの経験と知識を活かしビジネスサポートも行っている。

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