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2020.02.14
ノードストロームの「シー・ユー・トゥモロー」で実感した米国二次流通市場の可能性
RINAのFASHION x IT レポート from NYC Vol.117
RINA
「シー・ユー・トゥモロー(See You Tomorrow)」の売り場への入口
こういう仕事をしていると「どこで服を買っていますか?」とか「好きなブランドは?」と聞かれることがあります。以前は「とりあえずバーニーズ・ニューヨークに行き、入っているブランドを一通りチェックします」と答えていました。それがこの数年で大きく変わり、近頃はエシカルであったり環境保護に熱心だったりするブランドに共感するようになっています。また毎日リセールビジネスを行う「ザ・リアルリアル( The RealReal )」をチェックすることが、最近の新しい習慣です。
昔から古着屋やヴィンテージ・ショップは存在したわけですが、物に関しての価値観が最近は変わってきているように感じます。自分に似合うスタイルや欲しかった物であれば、新品だろうがユーズドだろうが気にしない人が増えているのではないでしょうか。その流れを象徴しているのが、アメリカの大手百貨店チェーンである「ノードストローム(Nordstrom)」の新店舗です。
百貨店のノードストロームもいよいよリセールビジネスに参入
「シー・ユー・トゥモロー(See You Tomorrow)」の売り場
2020年1月31日、ノードストロームは昨年(2019年)10月にマンハッタンに開業したフラッグシップ・ストアにリセール(再販)の売り場「シー・ユー・トゥモロー(See You Tomorrow)」をオープンしました。
場所は57丁目に面した「ナイキ(Nike)」の売り場の真上で、ナイキの脇にある階段からしかアクセスできないという、ちょっと特別なスペースです。ノードストロームへ行ったことがある人ならば、以前「バーバリー(Burberry)」があった場所といえば分かってもらえるでしょう。シー・ユー・トゥモローは、ノードストロームのクリエイティブ・プロジェクトのヴァイス・プレジデントOlivia Kim(オリヴィア・キム)氏がキュレートしています。
ワクワクが込み上げる売り場
立ち上がりの日、開店から1時間後に訪れたところ既に賑わっていました。いざ売り場へ足を踏み入れると、久しく感じていなかった「何か掘り出し物はあるか!?」とワクワクする気分が込み上げてきました。オリヴィア・キム氏も駆けつけていたり、ファッション関係者がお祝いやチェックに訪れたりと、とても華やかな雰囲気でした。
フロアにはバッグ、靴、ジュエリー、レザー小物、書籍、雑貨、ウィメンズ・メンズ・キッズウェアなど目移りするセレクション。商品のほとんどがウィメンズですがメンズのエリアも用意されており、男性もマストチェックの場所だと思います。
今後シー・ユー・トゥモローでは、定期的にフィーチャーブランドを紹介していくそうです。最初はコペンハーゲン発のコンテンポラリーブランド、「ガンニ(Ganni)」。私も大好きなブランドで、この日はいくつか試着をした後、ブラウスを購入しました。
買い物の休憩にはラウンジスペースでボンベリ(Bonberi)
人気のプラントベースのボデーガ&カフェ「ボンベリ」
売り場には人気のプラントベースのボデーガ&カフェ「ボンベリ」があります。ヘルシーでサステナブルな食材やお菓子などが揃い、サラダやフレッシュジュースを買うことができます。ラウンジスペースも設けられていて、買ったものをその場で食べられます。健康や環境に配慮したカフェは、シー・ユー・トゥモローのコンセプトとも共通しています。
ヤードル(Yerdle)とのパートナーシップ
シー・ユー・トゥモローには、品質センター(Nordstrom Quality Center)が管理するノードストロームのフルプライス・ストアで販売されていたアイテムが並んでいます。ノードストロームは今回、米スタートアップ企業のヤードルとパートナーシップを結びました。ヤードルは商品のクリーニングやお直し、在庫管理から価格設定など、再販事業に必要なバックエンドのオペレーションを行うテクノロジーとロジスティックの企業です。このニュースを最初に伝えたBOFによれば、このパートナーシップでクリーニングやお直し、在庫管理、値付けをヤードルが担っているとのことです。
新商品を販売し、残ったものはセールで大幅に値引きして売りさばく、あるいはブランドイメージを保つために売れ残りは廃棄する、というビジネスモデルは転換点を迎えました。再販の仕組みを整備し、適正な価格設定、廃棄の削減がアパレル業界に求められています。
Nordstrom NYC Flagship store
235 West 57th Street, NYC
R I N A 90年代の米国がネットバブルだった頃に米国にて日本向けのファッションポータル事業にコンサルタントとして関わる。
以降、「ファッション」と「インターネット」上で行われるビジネスを中心とした事業に15年ほど携わり、Web製作やディレクション、ビジネスのコンサルタントを行う。現在は米国のファッション事情やトレンド、ファッションとIT関連を中心とした執筆、今までの経験と知識を活かしビジネスサポートも行っている。
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