PICK UP
2020.01.20
ミラノメンズ復帰組やアニバサリーショーで話題を呼んだ5日間 <2/5>
グッチ(GUCCI)
このところウィメンズとの混合ショーを発表してきた「グッチ」が、クリエイティブ・ディレクターのアレッサンドロ・ミケーレの就任5周年を機に久々にミラノメンズに戻ってきた。今回は楕円形の議場のような会場が作られ、招待客たちは議席のようなシートに座ってショーを見る仕組み。真ん中では巨大な銀色のフーコーの?振り子がブーンという音を立てて大きく揺れている。
そこに登場するのは、これまでの紳士服のルールに対する様々な挑戦。メンズ服らしい素材で作られたアイテムにフェミニンなコーディネート・・・例えばヘリンボーンのコートやベロアのジャケットにはネックレスをつけたり、ガンクラブチェックのジャケットやレザーのライダージャケットのボトムはキュロットスカートのようなボクサーパンツだったり。またはチェスターコートやミリタリーコートをコートドレスのように纏う。レース使いのミニドレスや、リボンのついたドレスとジーンズのレイヤード、ギャザーの入ったドレスシャツなど明らかにウィメンズ用のアイテムも登場する。そして多くのルックには様々な種類の女性用のハンドバッグ(中にはリバティプリントのモノや、FAKEと書かれたGGモノグラムバッグも)やショルダーバッグを合わせている。さらに女性と男性だけでなく年齢の境界線も超えるのか、幼稚園児のスモックのようなシャツやエプロン、ひよこモチーフの付いたニットなどもある。でも「男らしさ」というのは実際のところは社会が勝手に決め、そう教育されただけのことなので、そんな風に決めつけられる前に戻るべく幼児の服を提案するのも理にかなってくる。
女性たちは「男尊女卑」という社会の体制や風潮に対して反対し、人権の侵害や差別から自分たちの権利やチャンスの幅を広げるために日々戦っている。一方、そんな現状に男性たちはただあぐらをかき、いつも虐げられて苦しんでいるのは女性だけだと思っていた。だが、男性という型にはめられ、責任を押し付けられるのは、時として男性にとっても不快であるという事実には目からうろこが落ちた気分だ。故に、ここで男性の立場から自由と解放を訴えたということだけでもこのコレクションには大きな意味がある。登場した洋服に関しては、好き嫌いが分かれるかもしれないが、ここで大事なのはメッセージだ。なぜならファッションは文化なのだから。
アレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)
久々にミラノでプレゼンテーションを行った「アレキサンダー・マックイーン」。ナビリオ運河沿いのスタジオを使った抜けの良い白い空間に飾られた、大きなパネルのルック写真から、その写真に登場するモデル達が飛び出たような仕掛け。「アレキサンダー・マックイーン」らしいテーラリングの美しさとアーティスティックなディテールが融合した独創的なコレクションを発表した。
インスピレーションソースのひとつはイギリスの芸術家、ヘンリー・ムーア。「アレキサンダー・マックイーン」のアイコンであるスカルをヘンリー・ムーアタッチで描いたプリントを使ったスーツやジャケット、ムーア作品からインスピレーションを受けたアイテムが。会場には芸術家がアトリエで聞いていた音楽が生演奏で奏でられている。
もう一つのテーマはスコットランド王家の紋章にも使われたアイリス。これは手作業によるビーズの刺繍をあしらったジャケットやハーネスで再現される。
金糸を織り込んで、角度によって見える色が違うような生地やジャパニーズウールなどをつかったジャケットやコートも登場。失われつつある職人技を活かした仕上げから、現代の技術力を駆使した新しい素材に至るまで、クリエイティブ・ディレクター、サラ・バートンが凝りに凝って作った様子がうかがえる。
ヌメロ ヴェントゥーノ(N°21)
前回はウィメンズとの合同ショーだった「ヌメロ ヴェントゥーノ」が再びメンズのランウェイショーを復活。その昨年9月の合同ショーではメンズとウィメンズはほぼ同じイメージで、フェミニンなテイストのプリントやカラー、ディテールをメンズも共有していたが、今回のコレクションはメンズ単独になってもその流れを継続するかのようなジェンダーレスな世界観が広がる。
アレッサンドロ・デラクアが長年お得意としてきたヌードカラーをふんだんに使い、レース使いのTシャツ、背中またはフロント部分が大きく露出されたニット、トレンチコートやパンツからリボンのようにひらひらと垂れる長いベルトなど、メンズウェアの常識を打ち破るようなアイテムが。その一方でクラシックなトレンチコートや、ストリートテイストのあるオーバーサイズのボンバージャケットなど、王道を行くようなアイテムもあり、またトレンチやブルゾンの上に描かれた大きなロゴ使いも、「ヌメロ ヴェントゥーノ」が初期のころからメンズコレで使ってきた象徴的なディテールだ。
そもそもウィメンズのコレクションにおいても、マスキュリンなイメージとのハイブリッドを得意としてきたデラクアだけに、その反対をメンズコレクションに投影するのは自然の流れ。そして今、時代がやっとデラクアに追いついたということか。
ディースクエアード(DSQUARED2)
今年ブランド創立25周年を迎える「ディースクエアード」は、ミラノメンズの幕開けをメモリアル感満載のショーで華やかに飾った。大スクリーンには歴代のキャンペーン写真や過去の数々のショーの風景が映し出され、それに大人たちは懐かしく、ミレニアム世代は新鮮な思いで見入る。そんな中、登場するルックも25年のキャリアの集大成。「ディースクエアード」のシンボリックなアイテムや素材、シルエットが勢揃いしているが、そこにはきっちりと今風のテイストをプラスしたり、新しいひねりが加えられたりしている。
例えばお得意のボリューミーシルエットは、ダウンやモンゴメリー、または異素材のミックスで今っぽく再現、ワークやミリタリーのテイストは素材をあえて光沢にしたり、こちらも異素材ミックスで。スキニーなブロークンデニムは、お尻の下のあたりまでベルト位置がずり落ちているような遊び心溢れるディテールが。他にもチェックのネルシャツ、フリンジ、コーディロイ、レイヤードコーディネート・・・等々、「ディースクエアード」の真骨頂のオンパレードだ。最後にはライブショーによる「We Are Family」と共に、大スクリーンにデザイナー2人の赤ちゃんの頃から現在までの写真が。
いつの時代もハッピームード満載のパンチの効いたコレクションを発表してきたディーン&ダン。ラグジュアリーカジュアルを牽引するブランドとして、決してぶれることなく築いてきた彼らの輝かしい奇跡を25周年アニバーサリーショーが物語っていた。