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2020.01.20
【ミラノメンズ 2020秋冬 ハイライト】 クラッシックトレンドが強いうねりに アプローチ手法とディテールで独自性を発揮 <1/5>
(写真左から)エンポリオ アルマーニ、プラダ、エルメネジルドゼニア
2020年1月10日から14日まで、2020年秋冬ミラノファッションウィークメンズ(以下ミラノメンズ)が開催された。今回は「ヴェルサーチェ(Versace)」がウィメンズ合同ショーにスライドしたものの、「グッチ(GUCCI)」、「ヌメロ ヴェントゥーノ(N°21)」、「サルヴァトーレ フェラガモ(Salvatore Ferragamo)」がメンズショーを復活、前回は上海でショーを行った「プラダ(PRADA)」や、ピッティでショーを行った「エムエスジーエム(MSGM)」もミラノに戻り、「アレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)」も久々にミラノでプレゼンテーションを行うなど、勢いを取り戻した感のあるミラノメンズ。25周年記念ショーで幕を開けた「ディースクエアード(DSQUARED2)」から最終日のトリを飾る「グッチ」まで、5日間に渡る長めのファッションウィークとなった。
(写真左より)フェンディ、ニールバレット
今回のミラノメンズでは、クラシックおよびテーラード回帰、古典主義、職人技など、正統派なメンズ服の見直しが大きな軸にあり、そこにプラスアルファとしてカジュアルさや着心地の良さ、アウトドアやストリートまたはアートのテイストとのハイブリッド・・・というパターンが圧倒的だ。そして、その「プラスアルファ」の部分がブランドの個性の出しどころという感じ。ゆえに、ヘリンボーン、グレンチェック、ハウンドトゥースといった定番的素材を使ったテーラードジャケットやコート、スーツなどはどこも必ず登場させている。
そのフォルム自体は正統派だが、最新技術によって生地自体のニュアンスを出すことを特徴としているブランドも多かった。またそれにあわせるアウター類もコンサバというか誰にでも愛されるアイテムである、ダウンジャケット、ブルゾン、モンゴメリー、パーカなど、割と普通のものが揃っている様子。だが、ここにも実は生地やディテールに最新機能が搭載されているものが多い。
カジュアルやスポーティに振れた後にはクラシックに戻る、という流れはいつものことではあるが、今シーズンはそこに着心地のよさや快適さ、機能性を同時に追求するのがマストだ。ゆえにテーラードスタイルの中で、機能素材によって軽く、柔らかく仕上げているアイテムも多く、またはジャケットにニットやトレーナー、パーカなどを合わせているコーディネートも。そしてその足元を飾るのは厚底テクノ系のスニーカーもさることながら、ブーツ(特に乗馬靴くらいのロングブーツ)がなぜか多く、それにパンツをインするコーディネートだ。
いずれにしても、職人技やクラシックな仕立てというのは、ミラノだからこそできること。ゆえにこのような流れには大いに好感が持てる。
もちろん前シーズンを進化させた形でサステナビリティに力を入れているブランドも多かった。これまでの活動をさらに進めるブランドもあれば、新たに始めるブランドもあるが、これについてはもうあえて説明するまでもなく、当然のこととしてすべての企業が取り組んでいただきたいものだ。
(写真左より)グッチ、N21
そして、メインストリームではないが、もう一つあげられるのはジェンダーレスやダイバーシティーの要素。ミラノのトレンドを牽引するブランドの一つである「グッチ」が大々的にこのテーマを謳い、強烈なインパクトを放ってミラノメンズは閉幕したが、実はピッティのスペシャルゲスト、ステファノ・ピラーティによるランダム・アイデンティティズのショーでも、同様の提案がなされていたり、「ヌメロ ヴェントゥーノ」は先に述べた「プラスアルファ」の部分でフェミニンにも通じるセンシュアルな要素を入れていた。また「フェンディ(FENDI)」や「マルセロ・ブロン カウンティ・オブ・ミラン(MARCELO BURLON COUNTY OF MILAN)」などのブランドでもディテールやアクセサリーにはウィメンズコレクションで登場するようなものも見られた。「マルニ(MARNI)」に関しては、それぞれのピースが各々の個性を放ち、全体のテーマさえ設定していないかのようだった。
もしかしたら、これからのメンズ服はこういう方向に向かうのかもしれない。たとえそうでなかったとしても、ファッションで社会に対してメッセージを放つという姿勢を評価したい。