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2020.01.15

大阪・梅田の商業施設 「梅田エスト」の挑戦――食のエリアを新設

 今や商業施設の集積度が新宿をしのぐほどになった大阪・梅田商圏。3つの百貨店を中心に複数のファッションビルや地下街が集まっている。今回、取り上げるのは、JR西日本大阪開発(大阪市)が運営する老舗の商業施設「梅田エスト」だ。JR大阪駅の東側に位置する同施設は、ヤングレディース層をそのメーンターゲットにしてきた。今年2月には新たに、食のエリア「EST FOODHALL」をオープンする予定だ。どういった狙いで食のカテゴリーを導入するのだろうか。

周辺の新規顧客を呼び込む狙い

 「梅田エスト」は1981年の開業以来、「エスト一番街」という名称で運営していたが、2006年の全面リニューアルを機に「エスト」に改称した。店舗面積は約6600平方メートルで、店舗数は94店(EST FOODHALL分を含む)。ヤングレディースのファッションを軸足にしているMD構成は、基本的に変わっていない。JRの高架下という制約のある立地環境――大箱のショップが出店しづらい――だが、JR大阪駅や阪急電鉄・梅田駅が近く、同じくヤングレディースを主体にするファッションビル「ヘップファイブ」と隣接しているなど、周辺の環境はいい。集客しやすい場所にあることは確かだ。

 

 昨春、今年2月の「EST FOODHALL」のオープンに向けて、大規模な改装をスタートした。東側の区画「イーストエリア」の23店のうち、半分が既存スペースに移転した。従って昨年1年間は、片肺飛行のような状態だった。2019年度の売上推移は、4-11月までの累計で98.5%。これは「EST FOODHALL」部分が工事中(全体の約4分の1の面積)である影響が大きい。既存店ベースでは、113.7%と2ケタの増収だ。難しい商況下で、健闘していると言えるだろう。

 

 飲食系のテナントは元々、全101店舗のうち7店にとどまっていた。ここ数年、梅田商圏では飲食テナントを充実させる動きが活発(ルクアイーレ、阪急三番街など)で、「エスト」でもその必要性を検討していたところだった。アパレルの元気がなくなってきていたこともあり、主要顧客のヤングレディースに加え、一大オフィス街でもある梅田商圏の新規顧客の取り込みも狙い、フードコートを開発することになった。ちなみに、既存の飲食テナントも好調である。

 

 「EST FOODHALL」には、大阪初出店の9店を含め計16店舗がおよそ1584平方メートルのスペースに出店する。コーナー展開でイートインスタイルの店と、中央に共通の飲食スペースを備えたフードコートスタイルを組み合わせたレイアウトが特徴だ。中央の「シェアゾーン」には約220席を設ける。梅田で働く20代後半から30代の女性がメーンターゲットで、昼食や買い物、仕事帰りの軽食など、1日中利用してもらえる施設を目指す。

 

 独断と偏見で、興味深いショップを2-3紹介すると、全国初出店のたこ焼き酒場「TAKO BUSTERS」や、肉卸の直営店「ロマン亭」を手掛ける岡山フードサービスの新ブランド「MEAT&3Choice HandS」、シャンパン&餃子の「スタンドシャン食」が個性的。ショッピングモールでは定番のコーヒーショップ「スターバックス」も出店する。余談だが「スターバックス」は梅田商圏内の施設において複数、店舗を出店している(「スープストックトウキョウ」も然り)。アパレル系テナントとは異なる多店舗展開があるのだなと、考えさせられる事例だ。

アパレルは個性派ブランドが人気

 全体的に停滞感のあるアパレルだが、「エスト」では個性派ブランドが人気を集めている。関西で唯一の出店というテナントもあり、住み分けが図れているようだ。好調ブランドは、「エイミーイストワール」や「ラグナムーン」「シールーム・リン」「スナイデル」など。コスメでは「イニスフリー」が人気だ。春夏、秋冬のシーズン立ち上がりによく売れる。トレンドを追い求めるファッション愛好家が多いようだ。

 

 主要な顧客層は20-30代女性。80%以上が女性客で、20代前半が最も多い。「EST FOODHALL」の開業で、この顧客層の幅を広げたいところだ。買い回りが多い施設は、隣接する「ヘップファイブ」。20-30代に絞り込んだ個性派ブランドを集積する“ニッチ”戦略を採っている。商圏は阪急沿線、北摂エリアなど比較的、広い。駅と直結していないため、雨天には弱いようだ。

 

 ブランドのラインナップが個性的で、施設内のエリアにより、テイストが少しずつ異なっている。西地区「ウエストエリア」には、「スタニングルアー」「ナルシス」「ドレスレイブ」。中央の「セントラルエリア」には、「ワンウェイ」「イング」などが軒を並べる。テイストの幅が広い印象を受ける。

 

 既存店が好調な要因について、同施設では「精鋭のテナントが集積されているからではないか」(JR西日本大阪開発エスト事業部、森彩乃リーダー)と分析している。「エストらしい店が揃っている印象がある。(梅田商圏内で)独自の立ち位置を確立できている点が強みだろう」(森リーダー)。

 


 

 

樋口 尚平
ひぐち・しょうへい

 

ファッション系業界紙で編集記者として流通、スポーツ、メンズなどの取材を担当後、独立。 大阪を拠点に、関西の流通の現場やアパレルメーカーを中心に取材活動を続ける。

 

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