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2018.02.21

大阪・梅田の「ルクア」が改装を実施  4月1日に開業以来のフルオープン

4月にフルオープンを迎える「ルクア」

 大阪・梅田の商業施設「ルクア」が4月1日、開業以来のフルオープンを迎える。1年以上、閉鎖されていた地下2階の“元デパ地下”(食料品売り場)跡の区画が、新業態の飲食店街に生まれ変わる。それに先駆けて3月1日を中心に、ファッション関連の17テナントの新規・改装オープンを「ルクア」「ルクア イーレ」の両館で実施する。2015年春にグランドオープンした「ルクア」だが、地階のリニューアルを終え、再スタートを切る。

新規の客層を取り込んでいる「バルチカ」

 「ルクア イーレ(LUCUA 1100)」は15年春、JR大阪三越伊勢丹の館を居抜きで改装し、グランドオープンした。以来、テナントの入れ替えなどの部分的な改装は継続してきたが、昨年1月に「イーレ」の地階の大部分をクローズした後は、地上階を主力にした運営が続いていた。その後、昨秋には地下1階へ「ユニクロ」と「ジーユー」の複合店を出店。また12月には、地下2階に飲食街「バルチカ」を増床オープンした。徐々に新しい「ルクア」の全体像が完成形に近づいていた。

 

 地下2階の三越伊勢丹のデパ地下跡に出店するのは、高級スーパーマーケットを展開する阪急オアシスが監修する新業態「ルクアフードホール(LUCUA FOOD HALL)」。食料品の物販のほか、購入した食材を調理して食べられるスペースも設ける。新しい客層を取り込むことが大きな目的だ。昨年12月にオープンした「バルチカ」の増床部分も好調で、売り上げは予算を上回っている。女性を中心に幅広い年齢層が訪れている。特に女性層と、今まで「ルクア」に来なかった新規客を取り込めている点が大きい。

 

 2017年度の「ルクア」(2館)の売上推移は、前半はクローズしている区画が多かったため前年を下回っていたが、昨秋の「ユニクロ」「ジーユー」のオープン、「バルチカ」の増床により、1月末時点で前年同期比1%増とプラスに転じている。通期(3月末)では、前年比を上回る見通しだ。“五月雨式”に実施した改装オープンの効果が、実績となって表れている。

 

 「バルチカ」の増床オープンは、既存の物販ゾーンへの相乗効果も生んでいる。例えば下層階の化粧品ショップなどである。入館客数が10%増加したという。また、通りを隔てて隣接する「ヨドバシカメラ」への2階からの連絡通路――巷では“ヨドバシ橋”と呼ばれている――が昨年6月に開通した効果もあり、ヨドバシ側2階の入り口からの入館が50%増と大幅に増えた。「ユニクロ」「ジーユー」のある地下2階と、地上2階の回遊性が高まったことも、売り上げの回復に貢献しているようだ。

ブランドの“旗艦店舗”を集積中

地下1階の「ユニクロ」「ジーユー」の入り口。来館客数が増加した

 アパレル関連では、先述の「ユニクロ」「ジーユー」のほか、3月1日を中心に17のテナントを改装・新規オープンする。関西初のブランドもあるが、その大部分は関西初、大阪初のテナントが多い。実績のある人気ブランドを誘致するという方針は変わっていない。ポイントは“旗艦店舗の集積”。例えば、3月21日にオープンする「スピック&スパン」は、リブランディング後の新しいコンセプトのショップだ。3月1日、大阪初出店の「マーコートデザインアイ」も旗艦店舗の扱いである。

 

 2つ目のポイントは、「ルクア」と「ルクア イーレ」の“館間”のテナント移動。売り上げが伸び悩んでいるテナントや、もっと伸ばせるテナントを両館で入れ替える施策だ。見た目は地味で、メディア受けもあまり良くないと言うが、同じテイストのテナントを集約し、回遊性を高めるという点で、重要な取り組みととらえている。

 

 3つ目のポイントは、少しアパレルから離れるが、「プルーム ショップ」の導入。新しい電子タバコを扱うショップで、「新しいライフスタイルの変化の一部」としてオープンした。「ルクア」でアパレルを買う顧客が求める雑貨や飲食、家庭用品などを提案するという発想だ。2月5日に先行オープンしたが、実際の売れ行きは良いようだ。「何か新しい商品はないか」と“サムシング・ニュー”を求める客層が多いそうで、化粧品でも新作のポイントメークの商材がよく動くという。「ファッション、トレンドはアパレルのみにあらず」を体現した改装である。

 

 好調なテナントは、特に「イーレ」7階の「ユナイテッドトウキョウ」や「ステュディオス」「コンバーストウキョウ」など。キーワードが“トウキョウ”と言う訳でもないだろうが、モノトーン調でシャープなテイストのファッション系ブランドが支持を集めているようだ。

 

 変わったところでは、「本館」8階のスポーツショップ「オッシュマンズ」。当初、レディス専用ショップとしてスタートしたが伸び悩んだため、メンズも加えたところ、売り上げが伸び始めた。スニーカーなどのスポーツシューズなどを取り揃えるが、同館のほかのテナントでも置いている商材もあるという。しかしバッティングせず、同店でも売れているというのである。「スポーツシーンで使う商材だから、スポーツテイストのショップで買う、という顧客の意識があるのではないか」と分析する。編集を替えることで、まだまだ提案力を高められるのではという可能性を感じた事例だ。


 

 

樋口 尚平
ひぐち・しょうへい

 

ファッション系業界紙で編集記者として流通、スポーツ、メンズなどの取材を担当後、独立。 大阪を拠点に、関西の流通の現場やアパレルメーカーを中心に取材活動を続ける。

 

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