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2018.02.16

パリ子供服のトレードショーは、「プレイタイム」一強に  パリ・キッズ2018-19秋冬シーズン

 パリの子供服合同展は、前シーズンまで大型のトレードショー「プレイタイム(playtime)」と小規模なクリエーターのトレードショー「キッド(kid)」が開かれてきたが、今シーズン、キッドの中止が決まった。これにより540ブランドを集めたプレイタイム一強という構図となった。日本からは常連組の5ブランドが出展していた。一方キッドに出展していたブランドは、マレ地区で合同ショールームを開催するなど新しい動きも見せている。

来場者微減も、出展者は大幅増

 1月27~29日、パリ東部郊外、ヴァンセンヌの森にあるパルク・フローラル見本市会場で開かれた第23回プレイタイムは、前回からパビリオンを追加したことにより前年同期より出展者が8%増え、540ブランド(前回7月展比4%増)となった。うちファッションが78%を占め、このほかライフスタイル雑貨、マタニティーで構成される。来場者数は前年同期比0.5%減の7654人で、内訳はフランス国内が42.3%、海外が前年同期の55.3%から57.7%へ増え、一昨年並みに回復した。フランス以外の欧州からは43.6%で、アジアは7.4%(前年同期は6%)を占めた。欧州の来場国順位は、ベルギー、英国、スペイン、オランダ、イタリアの順で、欧州域外は米国1位は変わらず、日本は回復し2位に。逆に韓国が4位へと落ち、来場の目立った中国が3位を維持した。

 

ニューナウ(NEW NOW)

キッズウェア(kids wear)

 3回目となる12ブランドのクリエーターを集めたコーナー「ニューナウ(NEW NOW)」は、今回からパリのEC大手「スモーレイブル(Smallable)」とコラボし、ブランドセレクションを行った。

 またグラフィックデザイナー、フレデリック・ドウバル(Frederique Daubal)による写真展が雑誌「キッズウェア(kids wear)」とのコラボで開かれた。

日本からの出展は半減

タゴ(tago)

 8回目の出展となる「タゴ(tago)」は、現代アートをイメージしたカットワークの「ナポリの歌手」、エコファーやツイードなどのハギを縦に大胆に配したコート(小売価格5万3,000円)やスカート(同3万1,000円)が注目された。イタリア・フィレンツェのトレードショー「ピッティ・イマジネ・ビンボ(PITTI IMAGINE BIMBO)」出展も含め、米国、ロシア、イタリア、ウクライナ、クロアチア、フランスへと販路を拡大している。

アーチ&ライン(ARCH & LINE)

 7回目の出展となる「アーチ&ライン(ARCH & LINE)」は、軽いポリエステルのテックツイードのコート(同2万8,000円)に人気が集中した。大人サイズのサンプルも作り、その軽さをバイヤーに直接着てもらい感じてもらうなどの工夫が奏功したようだ。また壁面をルック画像で埋め尽くし、分かりやすさも効果的だったという。ロシア、ベルギー、イタリア、モナコ、カナダなどの新規も増え、約15ヶ国40件と過去最高の結果になりそうだ。

ヌヌフォルム(nunuforme)

 「ヌヌフォルム(nunuforme)」は4回目の出展。抑え目の色調と捻ったパターンで魅せるクリエーターブランドとして定着しつつある。当たりがあったのは、大きく摘んだドレープを胸元から流した綿・ポリエステルのポインテッドワンピース(同1万円)。裾に向かってタックで山形のラインを出し、独特のシルエットを作っていた。フランス、サウジアラビア、米国などの既存に加えイタリア、ベルギー、中国などから反応があった。

ランドセリエ(RANDSELLIER)

 帝人フロンティアと加藤忠による共同プロジェクトのランドセル「ランドセリエ(RANDSELLIER)」は3回目の出展。今季は大人向けも意識して「メゾン・エ・オブジェ(Maison et Objet)」にも出展し、米国、ロシア、フランスからの取り扱い希望があり、反応が良かったそうだが、ランドセル本来の子供向けという用途を意識してプレイタイムには継続出展している。バルト三国の百貨店での取り扱いやドイツ、ポルトガルのEC、アフリカなどからも引き合いがあったという。3月にはパリのジュンク堂でのポップアップとワークショップを実施する予定だ。

 今回のニューナウには、香港から「ワンダー・アンド・ワンダー(wander & wonder)」が出展した。ニューヨークのパーソンズ美術大学出身のデザイナーによる2シーズン目のコレクションテーマは「日本」。ラーメンや招き猫、こけし、富士山、キツネのお面といったインパクトのあるイラストをプリントしたアイテムを並べた。サイズ展開はベビーから14歳まで。こけしのワンピースは25ユーロ(FOB)、浮世絵風プリントの中綿ブルゾンは37ユーロ(同)。日本へは未上陸。

ノーザンスカイとフィスの合同ショールーム

 一方、マレ地区で1月26~29日に合同ショールームを開いたのはノーザンスカイの「イースト・アンド・ハイランダーズ(EAST AND HIGHLANDERS)」とフィスの「フィス(FITH)」。
 ノーザンスカイは、キッド出展で培ってきた既存店の実績を踏まえつつ、またキッド主催者の協力も得て、市内でのショールーム開催にこぎつけた。このところ特にデニムの店頭消化率が高く、定番で入っていくという。今季は受注が100件(前回比42%増)の勢いだ。人気だったのは太畝コーデュロイのダウンブルゾン(希望小売価格210ユーロ)でダウン90%、フェザー10%の本格派。

フィス(FITH)

 マーケティングに重きを置いて参加したフィスは、国内の卸や市場が縮小する中、「世界に通用するブランドになりたい」という理念を実践する観点から参加した。吊り裏毛のカットソーやスーパー100仕様の「シンサレート」など素材に着目する目の肥えたバイヤーが多いと感じたそうだ。既にフランスのECなど既存もあるが、新規でオーストリア、カナダ、ベルギーなどから引き合いがあった。

 

 プレイタイムは、前シーズンからベルリンでの開催をスタートさせ4都市開催の多角展開中だが、規模においてはピッティ・ビンボとの2強体制が整った格好だ。またバーチャルショールームの「プレイオロジー」に代わって新サービス「プレイタイム・オンライン」を6月からローンチさせるなど新手も打ってくる予定だ。一方、次回の19年春夏シーズンには、キッド主催者よる新たなプロジェクトも予想され、パリの子供服トレードショーの新展開が見られるかもしれない。次回のプレイタイム・パリは6月30日~7月2日に開催する。


 

 

久保 雅裕(くぼ・まさひろ)
アナログフィルター『ジュルナル・クボッチ』編集長

 

ファッションジャーナリスト・ファッションビジネスコンサルタント。繊研新聞社に22年間在籍。『senken h』を立ち上げ、アッシュ編集室長・パリ支局長を務めるとともに、子供服団体の事務局長、IFF・プラグインなど展示会事業も担当し、2012年に退社。

大手セレクトショップのマーケティングディレクターを経て、2013年からウェブメディア『Journal Cubocci』を運営。複数のメディアに執筆・寄稿している。杉野服飾大学特任准教授の傍ら、コンサルティングや講演活動を行っている。また別会社で、パリに出展するブランドのサポートや日本ブランドの合同ポップアップストア、国内合同展の企画なども行い、日本のクリエーター支援をライフワークとして活動している。

 

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