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2018.02.14

“グローサラント”ブームがけん引  ショッピングモールの集客を担う「食」のトレンド

ニュージャージー州パラマス地区のガーデンステートプラザモール

 現代のライフスタイルに合わせた変化を迫られている米国のショッピングモール。デスティネーションストアとなるために、最も力を入れている事の1つに、フードやドリンクなどの飲食関連があります。飲食への関心が高く、健康志向、新しいものへのトライを好む消費者が増加している事から、高級レストランを始め、話題のフードを取り入れるモールが急増しています。

 

 そんな状況のなか、ウエストフィールドグループが運営するニュージャージー州の「ガーデンステートプラザ」モールが昨年末にフードコートをリノベーションし、賑わいをみせています。ちなみにウエストフィールドグループはもともとオーストラリア発のデベロッパーで、35カ所のモールを運営しています(昨年、フランスの不動産企業による買収が決定したばかり)。その中でも、「ガーデンステートプラザ」は、ウエストフィールドグループが旗艦店と呼ぶプロパティーの1つで、数年前から様々なエリアの改装を重ねています。州の法律で日曜日の営業をしないにも関わらず、年間のビジター数は2,000万人を超え、グループの中で最も売り上げの高いモールとして注目されています。

従来のフードコートが激変 都市型スタイル「ザ・ビストロ」が誕生

ガーデンステートプラザモール・旧フードコートの入り口

 “アンカーストア”とは、ショッピングモールの集客の中核となる重要な小売り店舗。メイシーズやJCペニー、ノードストロームなど、知名度の高いデパート勢がその役目を担ってきたのですが、ミレニアル層を中心とする若年層のショッピング傾向の変化により、その地位が完全に揺らいでいます。集客の要であるアンカーストアは、今やフードコートになりつつあります。

 

 従来米国モールのフードコートといえば、マクドナルドやケンタッキーフライドチキン、パンダエキスプレスなど、お手軽で安価なファストフード店が定番でした。シンプルな椅子とテーブルが並んだエリアで簡単に食事を済ませます。ところが、「ガーデンステートプラザ」モールは、そのフードコートの概念を一新。スタイリッシュなダイニングエリアへと変貌を遂げました。名前も「ザ・ビストロ」に改名しました。

 

 上の写真は、2階エリアからビストロへ繋がる入り口です。シックなアーケードが出迎え、エスカレーターを降りると、今までのフードコートにプレイエリアが追加された2万3,000sqフィート(約2,135平米)の場所に、100席以上のダイニングが広がっています。

様々なタイプの客層に対応する座席のスタイル

スタイリッシュに改装された、ガーデンステートプラザモールのフードホール

それぞれの空間を生み出す、形や高さの異なる座席

ペンダントライトの灯りが優しいホール

 「ガーデンステートプラザ」の中でも最も賑わっていたのが、このフードホール「ザ・ビストロ」。フィクスチャー(備品)も一新し、天井から吊るされたペンダントライトのソフトな灯りが、リラックスしたムードを醸し出しています。印象的なのが、様々なスタイルのテーブル座席を取り入れているところ。グループやファミリー対応の対面長テーブルや、1人でも気兼ねなく利用できるカウンターテーブル、カップル対応の丸テーブル、温かみを感じさせるウッド素材のハイテーブルや丸テーブル、ソファー席などがあります。さらに、モノトーンのドット柄の長テーブルには、季節の植物が植えられたテラリウム(園芸で使用するガラスのケース)が設置されており、利用者のシチュエーションに合わせ、心地よい場所を選べます。

好奇心をかき立てる新規フードベンダーの顔ぶれ

オープン予定のアメリカンダイニング「スチュワート(STEWART’S)」

 「ザ・ビストロ」が賑わっている一番の理由はなんといっても、新規フードベンダーの充実ぶり。ヒスパニック人口の増加から、「チポレ(CHIPOTLE)」や南米テイストの「サルサ・アリパ(SALSA AREPA)」をはじめ、ミレニアルに人気のチキンファストチェーン「チックフィレイ(CHICK-FIL-A)」や「ルビータイキッチン(RUBY THAI KITCHEN)」、「バーボンストリートグリル(BOURBON STREET GRILLE)」、サラダバーの「グリーンリーフ(GREEN LEAFS)」、ジュースバーの「バナナス(BANANAS)」など、15種類の店舗が並んでいます。1924年創業の「スチュワート(STEWART’S)」(上写真)もオープンする予定。タコベルやマクドナルドなどお馴染みのテナントも残っていますが、リース切れとともに、随時新しいベンダーを誘致していくようです。

ミレニアルキッズも大喜び 食後の子ども達が集う「プレイエリア」

 「ザ・ビストロ」のもう一つの特徴として、アマゾンブックスがスポンサーを務めるプレイエリアが併設されています。安全性を考慮したソフトフロアが敷き詰められた1,425sqフィート (132平米)のスペースには、砂山に見立てたオブジェやハンギングネットなどを設置。子ども達が大喜びしながら走り回っていました。大きなスクリーン型のバーチャル水族館で様々な魚を眺めたり、随所に置かれたアマゾンネットワークによる小型スクリーンでは、ゲーム楽しむこともできます。

物販と飲食が一体化 食の複合業態「グローサラント」がブーム

 Market Force社の調査で、消費者人気の高いスーパーマーケット1位に君臨したウェッグマンズが始めたと言われる「グローサラント」。食料品を販売する“グローサリー”と、飲食のための“レストラン”を合わせた造語ですが、イタリアンレストランやグルメバーガーチェーン、ワインバーなどを併設し、食料品の買い物ついでに利用できるサービスで人気が上がっています。アマゾンに買収されたホールフーズチェーンもマンハッタンに同様のコンセプトのストアをオープンしています。

 ここ数年、マンハッタンやブルックリンにもスタイリッシュなフードコートが急増しましたが、人の集まる場所にはフードがあります。苦戦する米国ショッピングモールも、こういった食のトレンドを取り入れ、新たなデスティネーションストアとしての地位確立を図っているようです。


 

 

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