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2017.04.12

440億ドル市場へ参入 Etsyの新サービス「Etsy Studio」にみる“儲かる”クラフト資材ビジネス

 ハンドメイド作品のオンラインショップ「Etsy(エッツィー)」が、資材に特化したマーケットプレイス「Etsy Studio」をまもなくスタートします。クラフト製作・商品に関する研究や教育、イベントを行う米国のクラフト&ホビー アソシエーション(Craft & Hobby Association/以下CHA)が1万世帯を対象に調査したところ、63%が編み物やジュエリーメイキングなど何らかのハンドメイドをしており、そのうち半数の人が週に5~20時間、40%の人は20時間以上も手づくりに費やしているのだそう。しかも大半は、編み物とジュエリーなど、多くて7種類ものハンドメイドを行う「クロス・カテゴリー」であることが判明しています。

 

 昨今DIY市場が拡大し、手づくり商品を販売するオンラインサイトが好調ななか、作り手にとって最も重要なものが「資材」。その概要とビジネスの可能性についてまとめてみました。

まずはEtsyを数字で見てみよう!

会員数(2015年) 割合
買い手の数(2016年) 5,400万人
売り手の数(2016年) 2,500万人
GMS:ネット上で取引きが成立した金額(2015) 170万人
GMS:Q3/Q2/Q1の総合(2016年) 23億9千万ドル(約2,629億円)
Revenue:収益(2015年) 19億8千万ドル(約2,178億円)
Revenue:収益Q3/Q2/Q1の総合(2016年) 2億7,300万ドル(約300億円) 
モバイルからのアクセス率(2016年) 2億5,400万ドル(約279億円) 
リピーター・セールス率(2016年)  65%
米国以外からの売り上げ(2016年)  81%

GMS=Gross Merchandise Sales(ネット上で取引きが成立した金額)

 資材を必要としているセラー(作り手)は170万人存在。2016年の9カ月間のGMSが、すでに2015年通年のGMS(2,629億円)に迫る勢い。2016年の収益も、前年比34%増の3億6,500万ドル(約401億円)が見込まれています。

作りたくなる・買いたくなる 「Etsy Studio」のフレンドリーな仕組み

 Etsyでは、もともとハンドメイド製品以外に、「資材&道具」の販売も許可されています。クラフト資材は、ペーパークラフトから、絵画、アート、ビーズ、ジュエリー、陶芸、ガラス細工、編み物、ソーイング、彫刻、木工細工まで幅広く、 また、色・形・素材が異なるパーツを販売管理するのが難しいという状況がありました。 そこで、「Etsy Studio」では、SKUごとに在庫管理できるプラットフォームを提供。資材1つ1つの属性を設定できるようにしたことで、買い手がより詳細な商品検索ができるようアレンジしたのです。

 

 そして、もう1つの特徴が、「プロジェクト・アイディア」というDIYのチュートリアルページ。多数のプロジェクトを紹介することで、作り手のインスピレーションを広げ、かつその資材をすぐに購入できる仕組み。作り手にとっても、買い手にとっても、フレンドリーなプラットフォームで販売促進を狙っています。

なぜ資材に特化したのか?

 「Etsy」での資材は一体、売り上げ全体のどのくらいを占めているのか。決算表には出ていないのですが、色々と調べていくうちに面白いサイトを見つけました。「Craft Count」というサイトでは、「Etsy」の販売者の売り上げをはじめ、「デイリートップ10」や「カテゴリー別のランキング」をリスト化しています。全カテゴリーの1位から100位までをチェックしてみると、赤枠で囲った作り手はすべて資材を販売。そして、100の販売者のうち、なんと77もの販売者が、資材を販売しているのです。横に書かれている数字は今までに取り引きされた数。1位のBohemian Findingsさんは、2010年に販売をスタートして以来、102万4,327回の取り引きがあり、デイリートップ10でも1位にランクイン。その日の取引数は869回となっていました。パーツは金額が細かく設定されているため、売り上げランキングとは比例しませんが、それでも資材の売り上げがかなりの割合を占めていることがわかります。必要とする資材を販売しているセラーが見つかれば、繰り返し購入されることが想定されるので、先述の「81%」という高いリピーター率は、資材販売の売り上げにも繋がっていることが理解できます。

800万点が並ぶ オンラインビジネスの限りない可能性

クラフト系ショップ大手の米国内における店舗数
JOANN(ジョアン) 850店舗
MICHEALS(マイケルス) 1,350店舗
HOBBY LOBBY(ホビーロビー) 750店舗
その他のインデペンデントショップ 地域密着型のストア多数

 「Etsy」の作り手は、米国の99%の都市に存在するそうですが、それ以外にも、資材を必要としている人口は数知れず。学校でのワークショップや、クラフトを趣味にする人など、米国にはキルティング人口だけでも1,600万人もいます。CHAの調査によると、資材ビジネスは米国で440億ドル(約4兆8,400億円)に拡大(2011年の調査から45%増)。その大半が、クラフトショップと呼ばれる大型チェーン店、つまりオフラインで販売されています。上記表の大手主要3社のトータルだけでも2,950店舗もありますが、これらの店舗で販売されているのは、せいぜい3万3,000アイテム。一方、「Etsy」では、その200倍以上の800万アイテムが販売されています。クラフト資材といっても多岐に渡りますので、店舗で扱える品数は限られています。全世界からその土地ならではのユニークな資材が販売されている「Etsy」の資材ビジネスは、440億ドル市場をさらに拡大させるものとなるかもしれません。

単なるブームで終わらない 年齢や性別も超える“クラフト・パラダイス”

 ハンドメイドというと、ひと昔前は裁縫やキルティングなど、“年配の女性の趣味”というイメージがありましたが、クリエイティビティーや自己表現を好む若年層への拡大、そして男性も編み物をする時代へと変化したことが大きく、クリエーターであれば、より洗練されたものを求めているのではないかと思います。資材に特化した「Etsy」のオンラインマーケットは、個人で経営しているショップのビジネスチャンスを広げる可能性がありそうですね。

■ Etsy Studio  https://www.etsy.com/studio
■ Craft and Hobby Association  https://www.craftandhobby.org/
■ Craft Count  http://www.craftcount.com/
■ JOANN  http://www.joann.com/
■ MICHEALS  http://www.michaels.com/
■ HOBBY LOBBY  http://www.hobbylobby.com/


 

 

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