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2020.01.14

【ピッティ2020秋冬 ハイライト】クラシコの殿堂で拡大するアウトドア由来のソリューションとサステナブル〈1/3〉

 2020年1月7~10日、第97回ピッティ・イマジネ・ウオモが伊フィレンツェのフォルテッツァ・ダ・バッソで開催された。今回のテーマは”SHOW YOUR FLAG AT PITTI”。フラッグは洋服と同様に、アイデンティティ、帰属意識、思考感情といった普遍的なメッセージを語るものという観点から、ピッティが国際連合のようにファッションの旗を広げる場所であることを象徴しているとか。メインエントランスのインスタレーションは、沢山のカラフルなリボンによって作られた大きな旗がダイナミックに観客を迎えた。

ジル・サンダー(Jil Sander)

 期間中には、ゲストデザイナーのジル・サンダー、スペシャルゲストであるステファノ・ピラーティの初ソロプロジェクト、「ランダム アイデンティティーズ(RANDOM IDENTITIES)」、スペシャルプロジェクトであるテルファー・クレメンスによる「テルファー(TELFAR)」のショーが行われた。また今シーズンはアニバーサリーを祝うブランドも多く、「ブリオーニ(BRIONI)」は75周年、「カナーリ(CANALI)」は85周年、そして「ウールリッチ(WOOLRICH)」は190年周年の記念プレゼンテーションを行った。また、スペシャルイベントとして、「セルジオ・タッキーニ(SERGIO TACCHINI)」や「ケーウェイ(K-WAY)」といった、アイデンティティの強いブランドがその個性をふんだんに生かしたインスタレーションやショーを行った。

セルジオ・タッキーニ(SERGIO TACCHINI)

ケーウェイ(K-WAY)

 メンズファッションがクラシックにおいても快適さや機能的を求める方向にシフトして久しいが、それは今シーズンも継続かつ加速している。テーラーブランドさえも主力のクラシックアイテムを展開しつつも、ジャケットは軽く柔らかく、そしてコーディネート提案の主流はタイドアップではなく、ジャケットとタートルニットやニットポロ、またはネクタイ代わりにストール、という感じだ。合わせるパンツはドローストリング付きやトラックパンツが多く、ベルトなしでゆったり。そんななかでもクラシックなテイストを保ちつつ、着心地をより快適にするために、素材とディテールの開発をますます進めている。アウターの重要性も増しているが、そこにおいてもテーラードコートは影を潜め、ダウンやアウトドア系の機能性重視アイテムが圧倒的だ。防寒、防風、撥水などの機能を持つ素材をクラシックなテイストで仕上げた素材の開発もさらに進化している。また、スーツではなく雰囲気の似た別生地でのセットアップの提案や、フードやライニングを取り外せるフェイクレイヤードのディテールなど、使いまわし面の利便性も重視されている。ストリートブランドが作るカジュアルウェアとは違うものを作るために、クラシックブランドならではの職人技とこだわりの生きた素材開発がなされているところが注目される。

 

 色は前シーズンに続くモノトーンの提案に加え、ブラウン~ベージュ、特に土色、枯葉色、またはサンドのようなニュアンスのある色が多く見られる。そしてオフホワイトやクリーム。差し色としてはボルドーや深めの赤、黄色、オレンジ、ターコイズなどに加え、前シーズンもトレンドといわれたピンクなどのペールトーンも継続だ。

 

 そして、前シーズンあたりから大きく謳われるようになったサステナビリティーというテーマ。リサイクル素材、オーガニック原料や植物由来で自然にダメージを与えない製法など。この流れはもはや企業イメージアップというよりも、どこも避けては通れない課題となっている。とはいえ、往々にして消費者側の理解やニーズはこのような志の高さとは別のところにある・・・というジレンマもあるようだ。

 

結局のところ、今回のピッティではこれまでのトレンドを大枠は継続しつつそれを進化させたものだった。厳しく言ってしまうと、大きな新しいトレンドというものが全くなかったように思う。が、シーズンごとにがらりとトレンドが変わればよいかというとそうでもなく、素材や製法を開発に注力し、見た目は大きく変らずとも見えないところでじわじわと変化するシーズンがあってもよいのではないだろうか。

 

画像:ピッティ・イマージネ・ウォモ、メゾン提供

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