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2017.10.11

服飾業界のレンタルビジネスはブームで終わらない?米の靴ディスカウント「DSW」が新サービス開始

 「レント・ザ・ランウェイ(RENT THE RUNWAY)」や「エアビーアンドビー(Airbnb)」などのシェアリングエコノミーが若年層を中心に人気のなか、「DSW(デザイナー・シュー・ウエアハウス)」が来月、靴のレンタルを試験的にスタートします。「DSW」は、靴に特化したディスカウント商品を扱う小売店で、TJマックスグループや、ノードストロームのRACK(ラック)と同様、オフプライス店に属するチェーン店です。競合アマゾンはzappos.com、ウォルマートはShoeBuy.com/Shoes.comと、靴に特化したECを所有していますが、ロイヤリティープログラムを利用しているDSWの会員数は2,400万人、実店舗数は511店舗と靴の業界では大きな存在といえます。第2四半期の売り上げは、前年同期比3・3%増の6億8,040万ドルとなりました。

シェアリングエコノミーの新たな流れとなるか?

 プロム(卒業パーティー)やウェディングなど特別なイベントがあるとき、消費者はドレスの色やデザインにマッチする特定のシューズを探していることが多いでしょう。しかし、それを購入したとしても、使用頻度はそこまで高くなく、場合によっては1度しか着用しないこともあります。そういう点において、レンタルを利用することは理にかなっているといえます。また、実際に購入する前のテスト着用という点でもレンタルサービスは有効です。その商品が気に入れば、レンタルした後に、新品の同じ靴を購入するという流れが期待できるのです。

「DSW」がレンタルを始めた理由と靴特有の問題点

 第2四半期のEコマースが前年同期比27%増と急激に成長している一方で、靴の小売り店が直面する問題があります。靴は、フィット感やはき心地といった点が洋服以上に重要となるため、試着なしで購入した場合の返品率が非常に高いということです。

 

 実際、「DSW」の購入者の中には、種類やサイズの異なる靴を8足購入して、7足返品するという事例もあり、返品にかかるコストが問題視されています。靴の小売り店にとって、やはり店頭に足を運んでもらい、試着をした上で購入してもらうことが、ビジネスを成長させる上で最も効率がいいことは明らか。レンタルビジネスの運営にはメンテナンスや管理のためのコストがかかるため、利幅は決して大きくはありませんが、レンタルサービスを導入することで、「DSW」は実店舗への来店動機を増やそうとしているのです。さらに「DSW」では、靴の修理や、シーズンオフの靴のストレージ(収納)といった新サービスも検討しており、消費者にとって“第2の靴箱”としての役目を果たすことで、来店を促そうとしているのです。

ファッションのレンタルが受けている実態とは!?

 他人の履いた靴をシェアすることが受け入れられるかというと、微妙な印象。しかし、アイススケートやボウリングなど、特別なオケージョンであれば、人々は好んでレンタルをするという事例が存在しています。タキシードやドレスなども同様の理由で需要があります。普段の生活の中で必要のない物は、購入するよりもレンタルが経済的なのです。年商1億ドルを誇る「レント・ザ・ランウェイ」の商品ラインも、特別なイベント時のドレスやジュエリー、ハンドバッグが中心です。衣類やファッション雑貨をレンタル(シェア)するという商売は、「パーティーなどで一度だけ着用したい」といったケースで、より効果を発揮するのではないでしょうか。

■特別なイベント時を想定したレンタルビジネスのスタートアップ企業:

 参考までに、ウェディングやパーティーなどのイベントで使用するファッション雑貨を貸し出してくれるEC企業を挙げてみました。

 AXESS CHRONOS ロレックスやタグ・ホイヤー等の高級時計が、低価格の物で1日7ドル、1カ月168ドルからレンタル
 FRESH NECK グッチやラグ&ボーンなど、75ブランドのネクタイや蝶タイ、カフリンクなど、メンズのアクセサリーのレンタル。ブランドの種類により、1カ月20~55ドルで1回に3本まで借り放題
 CUSTOM WIG COMPANY カスタムメイドのウィッグ(かつら)を販売する小売り店のレンタルプログラム。特別なイベント時のウィッグが、通常8日間のレンタル料が送料込みで60ドル

「物+経験」が成長キーワード

 カスタマイズされた商品と同様、ファッションのレンタルに需要がある背景には、人とは異なる個性を重要視する若年層の存在があります。特別なイベント時には、日常とはかけ離れたライフスタイルやファッションが好まれ、そういった特別なアイテムは、一度きりの使用で所有は望まれません。レンタルビジネスが引き続き成長するとすれば、日常とかけ離れた「物+経験」がキーワードとなるでしょう。つまり、普段よりもゴージャスであったり、友人たちを楽しませるようなユニークなアイテムに商機があるのではないでしょうか。


 

 

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