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2019.11.13

アディダスの新旗艦店「LDN」はデジタルな顧客体験とサスティナビリティの集大成

written by ケルビン(AIR編集部)

ロンドンのオックスフォード・ストリートにオープンしたアディダスの旗艦店「LDN」
(アディダスのプレスリリースから)

 アディダスは2019年10月末、英ロンドンのオックスフォード・ストリートに大型旗艦店をオープンしました。この旗艦店は、同社の最新デジタルテクノロジーによる顧客体験と、サステナビリティへの取り組みを感じられる場として注目されています。

アプリとスマートミラーで購買体験を向上

「LDN」店内の様子(写真:アディダス)

 約2,500平方メートルを誇るアディダスの新旗艦店「LDN」のコンセプトは、デジタルテクノロジーを駆使し、店舗内の購買体験を改善すること。アプリやスマートミラーを導入することで、顧客が商品を探す手間を省き、試着体験の向上を図ります。

 

 アディダスはスマートフォンアプリ(英国内限定)の中には、「LDN」でしか体験できない機能「Bring It To Me」があります。ユーザーは同機能を使うことにより、商品タグをスキャンして商品の在庫状況を確認したり、試着したいサイズのリクエストをすることができます。アプリ上でそのまま決済することも可能です。店舗にはビーコン(位置特定技術を持つ発信機)が設置されており、「Bring It To Me」と連携することで、顧客は自分が店舗内のどこにいるのかを店舗スタッフに対し知らせることができます。商品を探している場合や何か尋ねたいことがある場合に、店舗スタッフが顧客のもとにやってきて対応してくれるというわけです。

 

 そのほかアプリ内の機能を使って、来店前に指定した商品の試着を予約したり、店舗内にあるシューズのクリーニングサービス(Crep Protectというシューズケアの専門企業とのコラボレーション)の事前予約もできます。さらに、「LDN」内で行うトレーニングプログラムの体験や事前予約もできます。

店舗内で使用できる専用アプリ(写真:アディダス)

 1階と2階にある試着室には、スマートミラーが導入されています。スマートミラーにはRFID(電子タグ)を読み込む機器が搭載されているため、顧客が商品を試着室内に持ち込むと、商品のRFIDを自動的に読み取り、商品情報を表示します。顧客はスマートミラーを操作し、追加で試着したいサイズや色のリクエストをすることもできます。

 

 ちなみにサッカーウェアを取り扱う1階の試着室は他の試着室よりも大きなスマートミラーが設置されており、背景をロンドンのサッカーチーム名門アーセナルFCのスタジアムに変更することもできます。現地メディアによると、ロンドンの若者の間でセルフィー用の背景として人気となっているようです。

試着室内のスマートミラー(写真:アディダス)

 

遊び心をかき立てる インタラクティブなしかけ

30枚の半透明のLEDパネル(写真:アディダス)

 「LDN」では、購買行動を促すためのデジタル技術が導入されているだけでなく、顧客に店舗体験そのものをエンターテインメントとして堪能してもらえるような工夫も随所に施されています。「The Base」というスペースには、30枚のLEDパネルが設置されており、最新の商品やキャンペーンの映像を配信しています。顧客はこのパネルを操作して、パネルの色や模様を自分好みに操作することができます。

 

 さらにこのパネル上では、「The Creators Court」というインタラクションゲームが体験できます。サッカーやテニスの疑似体験が堪能できるゲームなのですが、顧客の動きと連動し、顧客のとった動きやポーズがパネル上に映し出されます。カスタマイズサービスのカウンターである「The Maker Lab」では、そこで映し出された画像をTシャツにプリントしてくれるカスタマイズサービスも提供しています。

 

 「The Maker Lab」にはイベントスペースとしての役割もあり、開業1カ月目に15ものイベントを実施しています。ランニングやトレーニングのワークショップをはじめ、アディダスと契約している著名スポーツ選手やタレントを招いたイベントや、サステナビリティやデザインに関するセミナーなども行うといいます。

カスタマイズサービスが利用できる「The Maker Lab」(写真:アディダス)

 

デジタルテクノロジーを支えるサステイナビリティへの取り組み

 これまで「LDN」の先進的なデジタルテクノロジーについて紹介しましたが、その土台となっているのが、サステナビリティに対する積極的な取り組みです。「LDN」では100%再生可能なエネルギーが使われており、さらにそのエネルギーが有効に使用されているかどうかを調べるために、専用のシステムも導入しています。また店内のハンガーや休憩用のベンチはすべて、サステナビリティの取り組みを世界的にリードしている国際制度「BREEAM」が認定した再生素材。什器も密度の高い再生素材を採用しています。

 

 

 今回の旗艦店について、「この旗艦店はアディダス史上デジタルテクノロジーに最も注力した店舗」と強調するのは、アディダス取締役のRoland Auschel氏。現地メディアによるインタビューでも、「ロンドンにおけるクリエイティビティとイノベーションのハブ的存在にする自信がある」としています。

 

 顧客体験の向上を目指したデジタルテクノロジーの活用と、それを支えるサステナビリティへの取り組み。限られた経営資源の中で企業が持続していくためには、デジタルテクノロジーとサステナビリティを両立させるための経営戦略がより求められるのではないでしょうか。

 

参照・出典:
https://www.adidas-group.com/en/media/news-archive/press-releases/2019/creating-future-london-adidas-re-imagines-retail-experience-new/
https://fashionunited.uk/news/retail/first-look-adidas-unveils-new-enhanced-london-flagship/2019102445895
https://versus.uk.com/2019/11/arsenal-stars-roll-adidas-ldn-surprise-fans-makerlab-event/

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