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2017.11.08

米国最大のセール日に休業するアウトドア企業REI 次の一手は新ソーシャルメディア「OptOutside」

 アウトドアブランド「L.L.ビーン」の年商を超える新ビジネスモデルとして、以前このコラムでご紹介したアウトドアストアスポーツ店のREI(レクリエーショナル・イクイップメント)ですが、昨年の年商も、前年比5.5%増の25億6,000万ドルと好調に推移しました。最強の顧客エンゲージメントを持つREIは、3年連続で、感謝祭と翌日のブラックフライデーに全151店舗を休業。両日ともオンラインでの販売もしないと発表しました。特にブラックフライデーは、1年で最も重要なセール日とされていますが、REIは、約1万2,000人の社員に有給休暇を与え、家族や友人と過ごせるように計らったのです。そして親愛なる顧客メンバーには、異常な熱狂ぶりの感謝祭商戦でショッピングをする代わりに、「外に飛び出そう!」という新体験を提案。今年も同様のプランを立てていますが、企業としてどういった意味があるのか、そしてその反響は?

小売り店最大の賭け 「反ブラックフライデー」キャンペーン

 REIでは、2年前から「#OptOutside」というキャンペーンを行っています。“OPT OUT”には撤退するという意味があり、買い物への執着を止め、健康的に外でのアクティビティーを楽しもうという意味が込められています。いわば、アンチブラックフライデーを謳ったもの。その流れで、1年で最大のセール日に休業するという大きな賭けに出たわけですが、SNSでの呼びかけは瞬く間に反響を呼び、ネット広告の表示回数は27億回にも達したそうです。その他の企業も影響を受け、感謝祭に休業する小売り店が増加。2015年のブラックフライデーには、アウトドアで過ごす人が140万人にも上るなど一大ムーブメントを起こしました。実際、インスタグラムで「#optoutside」とサーチしてみると、山登りやキャンピングの様子を映し出した画像がなんと5億85万件以上もヒット。参加者の多さと関心度の高さには目を見張るものがあります。

アウトドアライフを指南 REIが提供する新ソーシャルメディア「#OptOutside」

 REIは、アンチブラックフライデーキャンペーンの一環として、今月「#OptOutsideサーチエンジン」(https://www.rei.com/opt-outside)をローンチしました。「#OptOutside」とハッシュタグをつけて、インスタグラムに投稿すると、REIがハンドピックした写真が上のサイトにアップされるという仕組みです。特定のロケーションやアウトドアスポーツの種類を検索したり、表示画像をクリックすることで、感覚的にそれぞれのアクティビティーに関する情報を得ることができるのです。例えば「#mountain」というタグでまとめられた画像をクリックすると、登山を楽しんでいる人々のインスタ写真が表示されます。さらにその写真をクリックすると、実際にアドベンチャーを経験した人々の最新レビューや、ハイキング・登山のスポットに関する情報を見ることができます。また、REIのエキスパートによるキャンプファイアーのハウツーやキャンプ用品のチェックリスト、アクティビティーの難易度など、実際に役立つアドバイスを得ることができる。

女性のアウトドア人口が増加

 REIの従業員の45%、会員の48%は女性、という数字が示すように、アウトドアを楽しむ女性の増加が見られます(会員は20ドルを支払うと、一生涯にわたり共同組合のメンバーとして配当金や商品購入のデイスカウントが受けられる)。そんななか、今年REIがスタートしたプログラム「Force Of Nature」は、女性のアウトドアスポーツをサポートするためのマーケティング機関。女性のアウトドアスポーツへの参加を支援し、アウトドアに関連する25の非営利団体へ100万ドルを寄付したり、女性のためのハイクオリティーなアパレルとギアの開発を行っています。また、今年5月以降は、1,000以上のイベントを計画するなど活発な動きを見せています。こういった活動は、元々のコープ会員へのサービスとともに、新たな顧客獲得に繋がっており、単に服やギアを販売するよりも、顧客との深いエンゲージメントを生み出していると言えます。「Force of Nature」は、感謝祭にスタートした「外に飛び出そう!」キャンペーンの一環でもありますが、この2年間で700以上の団体・800万人以上が「#OptOutside」に参加しています。

 

 こういった活動と成功例に影響を受ける企業も出ています。環境と深い繋がりを持つアウトドア企業、例えばパタゴニアは昨年、ブラックフライデーの売り上げの100%を環境保護団体に寄付したり、11月の選挙の日にはストアの営業を停止して投票を呼びかました。さらに、トランプ大統領の政策に異議を唱えるTVキャンペーンに70万ドルを投じるなど、目先の利益よりも社会への貢献、顧客とのエンゲージメントに注視する企業が出ています。快進撃を続けるアマゾンやウォルマートとは全く異なるビジネスのスタンス、それを支持する消費者の増加。非常に興味深いと思います。


 

 

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