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2019.10.28

10年目を迎えた「マカオファッションフェスティバル2019」 マカオファッション飛躍を支える4つのポイント

 「マカオファッションフェスティバル(MFF)2019」が10月17~19日の3日間に渡り、マカオ最大のカジノリゾートであるヴェネチアン・マカオで開かれ、マカオのファッション産業振興を目指してスタートした同イベントも今年で10回目。ベテランから新人までデザイナーたちのクリエーションの広がりが見られ、マカオファッションとしてのコンテンツ力が高まってきた。近年の一帯一路構想やグレーターベイエリア構想などによって近隣エリアとの相互連携も強まってきたことも後押しし、海外市場への訴求力がより備わったといえる。今回のMFFのみどころであり、マカオファッション成長を支える4つのポイントを紹介。

■参加型イベントを実施 マカオファッションがより身近に

  • 「マカオファッションフェスティバル2019」会場。主催者であるCPTTMの文字を大きく掲示した

  • エコバッグのカスタマイズができるコーナー。連日行列ができた

  • マカオブランドのアイテムを着用して写真撮影ができるコーナー

  • マカオブランドのアイテムを着用して写真撮影ができるコーナー。SNSによる拡散も狙った

  • 無料のメークアップコーナーも

 2018年の前回展から、ザ ベネチアン マカオ内のボールルーム「フローレンス」に会場を移し単独開催を行っているMFF。今年は、マカオの中国本土復帰20周年と中国の建国70周年記念も兼ね、より華やかな演出にこだわった。プロモーションにもさらに力を入れ、イベントの記念グッズを好みのデザインにアレンジできるワークショップなどを開催。MFFのロゴ入りエコバッグのデザインをカスタマイズできるコーナーは、連日行列ができるほど賑わいを見せた。

 

 また、マカオ発ブランドの商品を紹介・販売する「マカオファッションギャラリー(MFG)」(※)が初の出張イベントを実施。デザイナーブランドのアイテムを着用し、プロのアーティストによるメークアップをして写真撮影ができる無料サービスで人気を集めた。CPTTMクリエイティブ事業のシニア・ディレクターで同イベントを統括するレニー・ン氏は、「イベントに参加してもらい、マカオのブランドに実際に触れてもらうことで、マカオのファッションをより身近に感じてほしいと考えた。写真撮影によるSNS拡散も期待している。さらにブランドに興味を持った人が実際にMFGを訪ね、購買につながるような仕組みにつなげていきたい」と話した。

 

※マカオ政府と民間組織による非営利組織・マカオ生産力及び科技轉移中心(CPTTM)とマカオ政府文化局が2012年にオープンした販売・イベントスペース。

■デザイナーの層の広がり

  • サンズが開催したマカオファッションウィーク。写真はヴェネチアン・マカオの商業エリアで行われた「AURO ARTE」のショー

  • マカオファッションウィークには海外セレブリティやKOL(キーオピニオンリーダー)が多数訪れた

  • サンプル製作作品コンテストで受賞した「コルドヴァ」のコルドヴァ・セレスティナ・マリア(中央)

  • HATの卒業生ショー。優勝したジェイ・チャン(中央)

  • HATの卒業生ショー。優勝したジェイ・チャンの作品。

 マカオのファッション産業振興を目指しスタートした「マカオファッションフェスティバル」。10年目を迎え、主催者であるCPTTMとマカオ政府の取り組みが成果を上げてきている。CPTTMが運営するマカオ唯一のファッション&クリエイティビティーのスペシャリスト養成機関「ハウス・オブ・アパレル・テクノロジー(HAT)」出身のデザイナーが数多く参加し、マカオを代表するブランドとして成長を見せている。

 

 さらに今回は、今回はマカオ発のジュエリー6ブランドによるコレクションショーも実施した。6年ほど前にもジュエリショーを実施したが、そのときは老舗の高級ブランドが中心だったという。「今回はすべてマカオのデザイナーによるインディペンデントなブランド。アパレルだけではなくアクセサリーなどを含めてファッションの幅が広がってきた」(レニー・ン氏)とみる。

 

 「オーロラ アルテ(AURALO ARTE)」のデザイナーであるアロ・ローとレイニー・チョイはいずれも、HATの卒業生。2013年に同ブランドを立ち上げ、MFFではマカオを代表する実力派ブランドとして活躍が目立った。サンプル製作作品コンテスト「2018 Subsidy Prgramme for Fashion Design on Sample Making」では4年連続の受賞。イベント最終日に行われた受賞8ブランドによるショー「スタイル・エンカウンター・モーメント」でコレクションを披露した。また、米大手サンズが運営するカジノホテル内でほぼ同時期に開かれる「マカオファッションウィーク」にも参加。伊ヴェネチアの街並みを再現したヴェネチアン・マカオの館内でもランウェイショーを実施。華やかなドレス群は、各国から訪れた業界関係者やセレブリティー、インフルエンサーをはじめ、ショッピングを楽しむ多くの観光客にも強くアピールした。「ブランド設立から6年が経過し、ブランドの成長とともに認知度も高まってきたことを実感している。様々な地域から人々が訪れるヴェネチアン・マカオでショーができるのは嬉しい。中国市場をはじめ、今後はさまざまな国・地域に販路を広げていきたい」(ロー&チョイ)。

 

 今回サンプル製作作品コンテストで初受賞した「コルドヴァ(Cordova)」のコルドヴァ・セレスティナ・マリアも今後の活躍が期待されるデザイナーの1人。前述のロー&チョイと同じくHAT出身のコルドヴァは、2017年のMFFで「マコンセフ(Maconsef)」(HATでの18カ月間のディプロマプログラムを修了し、さらに実践的なプログラムを学ぶ機関)の学生として、ほかの学生たちと共同製作したコレクションを発表したばかり。中国市場をターゲットにするデザイナーが多いなか、コルドヴァが目指す市場は日本。日本のファッションに大きな影響を受けてきたといい、受賞作品も「KIMONO NOW」をテーマに、和着物に着想を得たコレクションを発表した。

 

 さらに2日目に実施したHATの卒業生ショーで優勝したのはジェイ・チャン(Jay Chan)。“Go Back to the Real”をテーマに、スキントーンのドレスを繊細なテクスチャーやレースで表現した。HATに再入学し2度目のチャレンジで1位を手にしたチャンは、作品製作に限らず、BGMのリミックスも手がけるなど徹底した世界観づくりを行った。「今後はマカオだけではなく、さらに大きな場所でショーをするのが夢」という。

■プラットフォームとしての役割

  • レイモンド・アウ氏

  • レニー・ン氏

 ベテランから新人、学生まで、マカオ出身デザイナーのコレクションを毎年ショー形式で紹介してきたMFF。レニー・ン氏は、「マカオファッションを発信するプラットフォームとしての役割が大きくなってきた」と振り返る。イベントを通した対外的なプロモーションが海外からの業界関係者やメディアへのアピールにつながる。それがきっかけとなり、マカオのデザイナーたちが香港ファッションウィークや上海CHICといった海外トレードショーへの参加にグループで参加する機会が増えている。加えてデザイナーは海外デザイナーとの交流を深めることでクリエーションが刺激されるとともに、バイヤーとの交渉や生地の調達などビジネス面での収穫も得る。この好循環が広がってきているのだという。

 

 香港理工大学の教授や香港デザインルネッサンス基金の副主席などを歴任し、CPTTMの顧問を務めるレイモンド・アウ氏は、長年MFFに携わり、HATの卒業生コンテストの審査員なども務める。「マカオの学生たちにはクリエーション力を培うための審美眼をさらに養ってほしい。政府のサポートが手厚いのがマカオのファッション業界のメリットでもある。そのチャンスをつかんで成長してほしい」とコメント。香港貿易発展局にも在籍するアウ氏は、香港ファッションウィークに参加するマカオのデザイナーを推薦するなど両地域との連携強化をさらに進めていくという。

 

 また今回のMFFには、フランスの展示会「Who’s Next」のオーガナイザーも来場したほか、韓国からは若者向けファッションマガジン「1st Look」も取材に訪れた。これまではアジアでの発信が中心だったが、パリ「Who’s Next」をはじめ、パリやロンドンなど欧州でも近い将来ショーをすることを計画している。

■一帯一路&グレーターベイエリア構想でますます注目されるマカオ

  • 初日のオープニングショー。中華圏やポルトガル語圏の9カ国・地域からデザイナーが参加

 マカオ出身デザイナーのほかに、マカオの公用語である中国語とポルトガル語圏からデザイナーを招へいしているのも同イベントの大きな特徴。2018年展からは、アジアと欧州を結ぶ中国の巨大経済圏構想「一帯一路」を取り入れ、地域間の連携強化を打ち出した。初日のオープニングショーは「一帯一路ファッションパレード」と題し、8カ国・地域から参加した8ブランドが参加。マカオのベテランデザイナーであるヴィンセント・チェンによる「WORKER PLAYGROUND」のほか、「A8原創(中国・広州)や「FSZ」(中国・深セン)、「FAVE by Kenny Li」(香港)、「SOPHIAWU」(台湾)、「RAEGITAZORO」(インドネシア)、「Praia」(アフリカ大陸カーボベルデ)、「Victoria」(ブラジル)が最新コレクションを披露した。

 

 さらに一帯一路構想の中でも重要な拠点とされる中国広東省・香港・マカオの「粤港澳大湾区(グレーターベイエリア)構想」が2017年に始動し、経済・インフラ・イノベーションなどにおける相互連携を推進。2018年10月には、3拠点を結ぶ港珠澳大橋も開通した。この取り組みは、マカオのファッション産業にも好影響を与えているといい、「今回は広州と深セン(いずれも広東省)、香港出身のデザイナーがそれぞれ参加してくれた。今後は、マカオを加えた4都市のブランドを集め、各都市でポップアップストアを開くなど結束を強めていく」(ン氏)という。

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