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2019.10.30

LVMHグループが出資 米LA発の新興ストリートブランド「マッドハッピー」とは

written by ケルビン(AIR編集部)

 仏LVMHグループ(モエ ヘネシー ルイ ヴィトン)が10月上旬、米ロサンゼルスで創業した新興ストリートブランド「マッドハッピー(Madhappy)」に約180万ドルを出資したと報じられました。「トミー ヒルフィガー」も同じ時期に同ブランドへの投資を発表しましたが、世界の有力ラグジュアリーブランドを専門的に運営するLVMHグループが新興ブランドに投資することは非常に珍しいといえるでしょう。「マッドハッピー」にはどのような魅力があるのでしょうか。

ストリートブランドの“排他的”カルチャーに違和感

 「マッドハッピー」は2017年、20代の若者4人がロサンゼルスで創業。創業メンバーはペイマン&ノアのラフ兄弟と、友人のジョシュア・シット、メイソン・スペクターです。英ファッションメディアBusiness of Fashionの推定によると、同ブランドの2018年の売り上げは約100万ドル(約1億円)です。

 

 創業のきっかけは、ストリートブランド業界特有の“エクスクルーシブ(排他的)”なカルチャーに対し、違和感を感じたことだといいます。例えば、生産する商品点数を意図的に抑え、ごく一部の消費者の手にしか渡らないようにするケースは少なくありません。また、一部のストリートブランドのコミュニティでは、ファッションに対する美学や価値観が合わない人を、部外者として扱ってしまうことがあります。

 

 一方、「マッドハッピー」は、その排他的な考えとは異なり、楽観的でインクルーシブな姿勢がコンセプトにあり、誰もが楽しめるストリートファッションを世界に伝えたいといいます。また、ファッションを通して世界的に社会問題となっているメンタルヘルスを解決し、より明るくポジティブな社会をつくっていきたいといいます。

Z世代から共感を得たメンタルヘルスへの取り組み

 
 
 
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人気プリントの「Local Optimist」

 Z世代の消費者は、社会問題に対する関心が高く、ブランドの哲学や環境問題への取り組みなどにも敏感です。「マッドハッピー」はまさにそんなZ世代がターゲット。鮮やかな色使いや、“Optimistic=楽観的”などポジティブでユーモアのあるメッセージが彼らの共感を得ています。

 

 SNSやポータルサイトなどデジタル空間でのプロモーションも功を奏しています。ジジ・ハディッドやケイティ・ペリーなどの著名人が、インスタグラムなどのSNSで「マッドハッピー」を取り上げたことも知名度アップにつながりました。また、「The local Optimist」というメンタルヘルスの情報発信に特化したポータルサイトを立ち上げ、ブランドの最新ニュースをはじめ、メンタルヘルス支援に関する地域ごとの情報や、メンタルヘルス問題を克服できたZ世代のインフルエンサーへのインタビューなどを配信しています。さらに、メンタルヘルスや教育、ホームレス問題を支援するNPOと定期的に連携。ECサイトの売り上げの一部を寄付するチャリティープロジェクトを立ち上げ、寄附活動の進捗状況をSNSやポータルサイトで報告しています。

 

 ニューヨークやマイアミなど米国7都市でのポップアップストアも好調で、メンタルヘルスの支援に取り組んでいる各地域の組織や関係者を招き、パネルディスカッションやワークショップなどのイベントを開催しています。今後も、EC事業とメンタルヘルスへの取り組みを強化し、事業拡大ための資金調達も行うといいます。

ラグジュアリーブランドがZ世代を獲得するために

 LVMHグループをはじめとするラグジュアリーブランドは、今後の消費市場をけん引する重要な消費者であるZ世代を重視しています。今回「マッドハッピー」に出資したのは、同ブランドが擁するZ世代のコニュニティにアプローチすることによって、今後の潜在顧客を育てることにあったといえそうです。

 

 LVMHグループはこのほど、eスポーツの人気競技ゲーム「リーグ・オブ・レジェンド(League of Legends)」を運営する米ライアット ゲームズ(Riot Games)とパートナーシップを結び、eスポーツ大会のために、「ルイヴィトン」のモノグラム柄を配したトロフィーケースを製作すると発表しました。eスポーツの選手たちもZ世代が中心です。LVMHグループがZ世代の新規顧客を獲得しようとする狙いがより鮮明になっているのではないでしょうか。

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