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2019.10.18

【インタビュー】ワールドがオフプライス業態「アンドブリッジ」1号店オープン アパレル業界の在庫過多解消に取り組む

 ワールドが、動産ビジネス大手のゴードン・ブラザーズ・ジャパン(以下GBJ/東京、田中 健二社長)と折半出資の合弁会社アンドブリッジを設立し、初のオフプライスストア「アンドブリッジ(&Bridge)」をスタートしました。GBJの商品調達力を活かし、自社ブランドとともに他社ブランドの在庫商品も販売。ワールドグループの店舗運営のノウハウを合わせ、アパレル業界の重要課題でもある余剰在庫や商品廃棄の削減に取り組むといいます。欧米では人気が定着しているオフプライス業態ですが、アパレル大手の同社が手がけることで、日本でも注目を浴びそうです。さいたま市・にしおおみやファッションモールに2019年9月にオープンした「アンドブリッジ」1号店で、松下剛アンドブリッジ社長に話を聞きました。

  • オレンジをキーカラーにした店舗

  • 買い物バッグとして用意したキャリーバッグが人気

  • 商品ストックも店内に置くことで作業効率をアップ

  • 店内に展示している絵画も美術館から譲り受けたもの

  • ユーロパレットも活用

 都心から電車で約1時間。「アンドブリッジ」1号店は、さいたま市・西大宮の郊外型ショッピングセンター「にしおおみやファッションモール」内にオープン。もともとワールド運営のアウトレット業態「ネクストドア」が入居していた場所で、店舗面積は約1,000平米。衣料品からファッション雑貨、生活・キッチン用品まで幅広い商品カテゴリーを取り扱い、約60ブランドを揃えています。他社ブランドの比率は約7割。1点もののレア感や宝探しのようなスリルな感覚を生み出し、オープン当初から客足を順調に伸ばしています。毎日商品をチェックする人や4時間近く滞在する人もいるそうです。

 

――店舗内に展示前の商品ストックを入れたカゴ車がありますが、お客様が自由にチェックしている姿が目立ちますね。

 

 什器として使っているカゴ車やユーロパレットは、物流センターでよく使われているものをリユースしています。内装や商品ディスプレイに使用している単管は、工事現場の足場を使用したもので、これもリユース品。いずれもそのまま別の店舗で使用できるものです。退店した店舗で使用していた販促物も一部使用しており、活用できるものはできるだけ再利用しています。

 

 店舗運営にかかるコストをできるだけ下げ、その分お客様に商品をお得に提供することにこだわりました。商品ストックをあえて店内に置いているのも、バックヤードにある商品を出す作業を省くためです。

 

――お客様が楽しみながら買いものをしていますね。

 

 店内のお買い回り用としてキャリーバッグを用意しましたが、お母様が買い物をしている横で、お子さんがキャリーバッグをころころ転がしている姿をよく見かけます。お子さんはキャリーバッグを持つのが楽しいようです(笑)。子どもたちが自分の洋服を自由に選んでいる姿も新鮮です。

 

――毎日チェックされる方もいるそうですね。

 

 近隣のお客様は毎日、毎週来られる方も多いです。商品は1、2週間単位で値下げし、リピートしてくださるお客様により鮮度の高い商品をお見せできるようにしています。そこがオフプライス業態の生命線でもあります。具体的には、6週間MDを組み、そこで売れなければ、さらにオフ率を下げた特別販売で売り切る形です。

他社ブランドを扱うメリットは大きい

松下剛アンドブリッジ社長

――「アンドブリッジ」をスタートした経緯を教えて下さい。

 

 私はワールドがアウトレット業態を立ち上げた当初から約20年間アウトレット事業に携わってきました。アウトレット専用商品も企画し、独自のマーケットができあがるのを見てきたわけですが、そうした商品をさらに効率よく消費者に提供できないかと考えていました。アウトレットモールは、車で2~3時間かかる場所も多いため、近場に店舗があれば、お得な商品をもっと気軽に買っていただけますしね。1号店を足元商圏にオープンしたのはそういった理由からです。

 

――ワールドの強みはどう生かされていますか。

 

 ワールドグループはこれまで、立地や市場に合わせて多業態・多ブランドを立ち上げ、絞り込んだ現在も50を超えるブランドを運営しています。その分成功事例も失敗事例も持ち合わせています。それを新たなMDに生かせるのが強みだといえます。「アンドブリッジ」では、私たちが組み立てたMD骨子をもとに、GBJが商品をバイイングしています。店舗デザインも、社内のVMD部隊が手がけたものなんです。

 

――ワールドでは、機会ロスや無駄を削減するための新ビジネスモデル「ワールド・ファッション・エコ・システム」を推し進めています。「アンドブリッジ」にも、余剰在庫などアパレル業界全体が抱える課題を解決しようとする狙いがありますね。

 

 ワールドも3~4年前と比べ、余剰在庫は3分の1ぐらいまで減少しました。企画の精度を高めたり、製販バランスを取るなど緻密な施策を進めてきた結果ですが、それでも余剰在庫を減らすためにできることは、他社含めてまだまだあるなと感じています。

 

 「アンドブリッジ」では他社ブランドを扱っていますが、私たちにとってメリットも多いのです。他社ブランドの余剰在庫を見て感じたのは、まだまだ鮮度が高く魅力のあるものが多いということ。また、1つのブランドだけを並べると、市場や消費者などの環境に売り上げが左右されることが多いのですが、複数ブランドでMDを組むと、幅広いコンテンツができあがります。他社ブランドを活用させていただきながら、お客様が消費者が求めるものを提供していきたい。他社ブランドの魅力も併せて伝えることができれば嬉しいですね。

日本でもオフプライス業態広がる

  • 他社ブランドを含めたスタイリング

  • キッズ商品売り場。シンプルながら楽しく買い物できる演出

  • キッズ商品売り場。シンプルながら楽しく買い物できる演出

――米国や欧州ではすでにオフプライス業態が盛り上がりを見せています。日本でもワールドが手がけることで一気に注目が高まりそうです。

 

 米国の百貨店などは買い取りが中心ですから、売れないと判断したら今季商品であっても量販店やオフプライス店などにダイナミックに売る。その流れがすでにできあがっていますし、鮮度の高い商品がいち早く、しかも安く手に入るということですよね。日本の場合は、余剰在庫はメーカー直営のアウトレットで販売する点で、2次流通の仕組みが米国と少し異なっています。

 

 日本にもすでにオフプライス業態はありますが、今後はますます増えてくるのではないでしょうか。それが、消費者のニーズにかなっているのであれば、競合するのではなく、共存していきたいです。

 

 お客様の選択肢が増えたことも大きいですね。1番大きな存在はやはりEコマース。次にメルカリのような個人間で売買できるサービス。オフプライス業態が3つ目の波になればいいなと思います。

 

――米国では、リセール品を販売する業態が百貨店でポップアップストアを出すなど、1つの売り場にプロパーとオフプライスが混在する状況も生まれてきています。

 

 お客様の多くは、単一ブランドだけではなく、複数ブランドを組み合わせて着回していますから、まさに今の消費者の購買のしかたを象徴していると思います。米国のノードストロームは、自分たちでオフプライス業態の「ノードストローム ラック」を運営していて、売り上げも非常にいいですしね。

 

 私たちの店舗では、自社か他社かにこだわらず、アイテム単位で編集しスタイリング提案しています。これは「アンドブリッジ」の特徴であると同時に、お客様のリアルなスタイリングに近いのです。ですからお客様には、店舗のスタイリングを見ながら、ご自身のワードローブとの組み合わせを想像しながら商品をお選びいただきたいと思います。

 

――お客様にとっては、欲しい物がよりお得に手に入ることが大切ですね。

 

 丁寧なものづくりから生まれた商品を魂を込めた接客で販売する店と、“ノー接客”でお客様自身が自由に選んで買える店があるとすれば、そのどちらも求められていくと思います。大切なのは、お客様にどのサービスを、どの場所で、どの商品で提供するのかということ。これをきちんと突き詰めていくことだと思います。

 

 「アンドブリッジ」の場合、余剰在庫を編集し直して消費者に手頃感のある価格で提供する、という点で利点や意義があると思っています。お客様自身が楽しんで買いものをしてくださっているので、積極的に接客をしてこちらからご提案をするというよりは、お客様のニーズに応じて適宜対応できる体制にしていきたいです。

デジタル活用でよりサステナブルに

  • UCC上島珈琲とのコラボレーションによるコーヒースタンド

――「アンドブリッジ」の今後の計画について教えて下さい。

 

 2年目も郊外に2、3店舗出店する計画です。同じ郊外といっても商圏によってMDは異なりますので、各商圏に合ったMDを精査しながら、郊外型店舗のフォーマットを固めていきます。将来的には都心や地方の駅チカなどへの出店も視野に入れています。百貨店の業態変換や商業施設の空区画が増えるなか、チャンスがあれば出店していきたいです。立地によっては、郊外型に見られるファミリー向けMDではなく、働く人向けのMDに対応する必要があると思います。

 

 また3年目には商品にICタグを付与し、自動精算レジを設置することも計画しています。働き手不足に対応するため、人員が少なくてもサービスの質を落とさず、かつ効率的に店舗運営する方法を追求しています。

 

――ECを運営する計画はありますか?

 

 3年目に向けて本格始動する計画です。「アンドブリッジ」については、まずは店舗の出店を進め、認知度を上げてからEC事業を運営する必要があると考えています。ワールドが持つECプラットフォーム「ワールド オンラインストア」も活用し進めていきます。

 

――「アンドブリッジ」は他社ブランドの商品を取り扱う点で注目されていますが、今後も課題解決に向けたコラボレーションはありますか。

 

 UCC上島珈琲に協力していただき店舗内に無料のコーヒースタンドを置いたのですが、これがとても好評なんです。UCC上島珈琲は、CSR活動の一環として「UCC生物多様性宣言」を行っており、サステナブルな社会に向けて継続的な取り組みを行っています。SDGsの考えも取り入れていて、私たちの事業コンセプトと合致しているため、今回のコラボレーションにつながりました。

 

 週末はレジ待ちよりコーヒー待ちが多いかもしれません(笑)。お父さんがお母さんの買いものが終わるのを待ちながらコーヒーを飲んでいたり、その横で子供たちがゲームをしていたり。くつろぎながら会話をしたり、ゆったりと時間を過ごせる空間を提供したいと思います。

 

 私たちのコンセプトや理念が一致する企業やブランドがあればどんどんコラボレーションしたいですし、それが「アンドブリッジ」のネーミングの由来でもあります。企業と企業、あるいは企業と消費者をつなぐ架け橋(=ブリッジ)でありたいですね。

松下 剛(まつした・つよし)氏プロフィール
1982年 ワールド入社、「ジオスポーツ」など、卸事業において営業を経験した後、ワールドのストア業態においてMDや販促を経て1998年からワールドのアウトレット業態「ネクストドア」に立上げ時から参画し業態開発をけん引。屋号長(責任者)を経て2019年8月1日、株式会社アンドブリッジ代表取締役社長に就任。

こちらの記事はアパレルウェブの会員向け様レポート
AIR VOL. 29(2019年11月発刊)「ファッション・新ビジネスモデル(仮)特集」の
一部をご紹介したものです。

 

 


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