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2019.10.09
米D2Cブランド「オールバーズ(allbirds)」が中国市場で出店加速 強気な姿勢の裏に強固なデジタル基盤
written by ケルビン(AIR編集部)
北京の高級商業地域「三里屯太古里」のショッピングモールに出店したallbirds(allbirdsサイトより)
米国発シューズブランド「オールバーズ(allbirds)」が、2019年4月に上海、同5月に北京に直営店舗を開き、米国のD2Cブランドとして初の中国出店を果たしました。年内に2店舗、2020年に8~10店舗をオープンする計画です。中国で出店を加速させている強気な姿勢の裏側には、一体どんな施策があるのでしょうか。
創業4年でユニコーン企業に 次のターゲットは中国市場
「オールバーズ」は2013年に創業したシューズブランドです。2018年10月には企業価値が10億ドルに達し、ユニコーン企業入りを果たしました。環境を配慮した素材と履き心地が米国シリコンバレーのエグゼクティブに評価され、その人気が全米に拡大。2019年には中国と英国(ロンドン)にも本格進出しました。なかでも中国で集中的に展開しており、2019年は北京と上海に続き、広州と成都にもそれぞれ1店舗オープンする計画です。
2020年には新たに8~10店舗を開く予定です。「オールバーズ」共同設立者兼CEOのJoey Zwillinger氏と同社のグローバル事業責任者のErick Haskell氏が中国メディアに明かしたところによると、新店舗の立地は、テンセントやファーウェイの本社がある深センや、アリババの本社所在地である杭州など、いずれも経済やテクノロジーの発展が著しいエリアが有力候補となるようです。
中国市場向けのローカライゼーションための工夫
allbirdsのミニプログラム限定の商品
「オールバーズ」は実店舗のオープンに先がけ、中国国内向けのECサイトを開設しています(越境ECに特化したプラットフォーム「Shopify(ショッピファイ)」で構築)。会員登録にはユーザーの個人情報や決済情報の登録が必要になりますが、中国で最も多く使われているとされるSNS「WeChat」のアカウントと連携させることで、ワンクリックで会員登録することができます。
またECで注文した商品の店舗受け取りを受け付けることで、店舗とECの連携を強化しています。自社ECサイトの会員以外にも、より多くの新規顧客を獲得するため、「WeChat」のミニプログラム(WeChat内で動く小規模アプリ)で専用ECサイトを開発。ミニプログラム限定のクーポンを配布したり、限定商品を販売することで、「WeChat」からの集客も図っています。さらに、アリババのTモールにも出店するなど、あらゆるチャンネルを最大限に活用しています。今年後半、成都と広州に新店舗をオープンする際には、地域限定商品の販売や、ミニプログラム専用のキャンペーンも実施する予定です。
中国進出わずか5カ月 リピート率は50%に
Zwillinger氏が中国メディアのインタビューに応じた記事によると、シューズの年間消費金額は現在、中国国内で約700億ドル、米国は約800億ドル。中国市場は数年以内には米国市場を超えると予測しています。また、2018年の中国ファッション消費市場を見ると、シューズは単品の消費金額が最も高いカテゴリーです。「オールバーズ」にとって、中国市場での成長はまだまだこれからです。中国でリアル店舗を開く理由の1つは、消費者に「オールバーズ」の“本物”を体験できる場をきちんと作ることで、海賊版の商品の氾濫を防ぐことにあります。
リアル店舗、EC、「WeChat」のミニプログラム、Tモールへの出店など複数のプラットフォームが相乗効果を生むことで、ブランドの認知度が向上。中国進出して約5カ月が経過した9月、ECと店舗のリピート率は50%に達しているとZwillinger氏は強調しました。
中国で失敗する海外ファッション企業の特徴
また前述のインタビューによると、グローバル事業責任者のHaskell氏が同社の中国進出戦略について、「D2Cのビジネスモデルは中国の消費市場と相性がいい。それは高度に普及しているネットショッピングという環境があるためだ」と言及。かつて「アディダス」や「アンダーアーマー」の中国事業に携わったHaskell氏は、中国で失敗する海外ファッション企業の特徴についてあげました。
それは中国市場向けのECをきちんと構築する前に、リアル店舗を出店してしまうこと。リアル店舗は、情報が拡散する範囲も速度もECに比べて遅く、ブランドの認知度を上げるには非効率であるためです。また、「WeChat」など中国に根づいた生活インフラの恩恵を存分に受けられないためだそうです。
「オールバーズ」の場合、リアル店舗を出店する前に中国国内向けのECサイトを構築。「WeChat」と連携したほか、「アリババ」なども提携している中国の配送会社最大手「SF Express」と提携して物流網を構築することで、ECでの注文や店舗受け取り、即日出荷など中国ニューリテールの多くが採用している施策をスムーズに導入することができました。これから中国に進出する予定の日本企業も、ECを中心にしたデジタル基盤を固めた上で、リアル店舗の出店を計画するのがいいかもしれません。
出典・参照:https://luxe.co/brand/allbirds