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2019.09.13

ゲストは三原康裕さん、丸山敬太さん 第26回SMART USENの「ジュルナルクボッチのファッショントークサロン」

 USEN(東京、田村公正社長)が運営する音楽情報アプリSMART USENで配信中の「ジュルナルクボッチのファッショントークサロン」。ウェブメディア「ジュルナルクボッチ」の編集長/杉野服飾大学特任教授の久保雅裕氏とフリーアナウンサーの石田紗英子氏が、ファッション業界で活躍するゲストを招き、普段はなかなか聞けない生の声をリスナーに届けるが、アパレルウェブでは、その模様をレポートとして一部紹介していく。第26回のゲストはデザイナーの丸山敬太氏と三原康裕氏。

▼全編はこちらでお聞きいただけます▼

 

 

提供元:encoremode

<前略・オープニングトーク>

 

石田:公開収録の2回目、合同展「ソレイユトーキョー」の会場からお送りします。今日のゲストはとても豪華ですね。デザイナーの三原康裕さん、丸山敬太さんです、どうぞ。

 

一同:よろしくお願いします。

 

石田:三原さんと丸山さんは、旧知の仲ということで。

 

久保:そもそも三原さんの卒業制作を丸山さんが縫ったのだとか。

 

三原:縫ってもらったね。ワンピースを作りたかったの。でも、パターンとか分からなくて。それでケイタチンのところに行ったら、じゃあ縫ってやるよって。

 

丸山:僕がブランドデビューして1年くらいだったか、半年くらいだったかもしれない。ヤッチンはまだ多摩美の学生だったけど、すでに靴を作っていて、メディアにも結構出ていたよね。浅草に通って独学で靴作りを学んだ変わった子っていうカテゴリーで。ヤッチンは僕も仲良くしていたモデルの女の子と付き合っていて、みんなが家族みたいに仲良くしていたね。あの頃って人間関係が密だったじゃない? 仕事もするけど、朝まで一緒にいたり、気づいたら泊っていたり。なんかグチャーッていうような。

 

三原:そうだったなぁ。行くところもみんな一緒だったし……。ケータイはあったっけ?

 

丸山:ギリあったと思う。

 

三原:でも、みんな持ってなかったよね。

 

丸山:ポケベルとか。集まる場所もそんなになくて、情報もそんなになかったから、知っているところに行くと必ずみんないた。

 

久保:飲み屋さんとか?

 

三原:それもそうだし、ラフォーレ原宿のFOBコープに行って、知り合いでもない人に声をかけて、喋っていたら仲良くなっちゃったとか。

 

丸山:そうすると共通の友達が来たりして、その場でワーッとつながっていくみたいなね。そんな中で、ヤッチンがテキスタイルを洋服にしたいんだけど、やり方が分からないって。靴なら作れるけど、洋服は作れないって言うので……。

 

三原:新聞紙で洋服のパターンをとってみたんだけど、どうも上手くいかないから。

 

丸山:で、教えてほしいってやって来た。でも、僕は別のことで忙しくて、教えるのも面倒臭いからやっとくって。それで卒業できたんだよね。

 

三原:無事に卒業できた(笑)。

 

<中略・丸山さんのコレクションの靴を三原さんが作っていた頃の話>

 

久保:最近、丸山さんと三原さんで、ミュージシャンの衣装を手がけられました。

 

石田:ドリームズ・カム・トゥルーさんの衣装ですよね。

 

丸山:久しぶりにコラボしたね(笑)。吉田美和さんの衣装は僕、中村正人さんのはヤッチン。

 

三原:ケイタチンが骨組みを決めるから、それが見えるまで僕はウェイティングっていう感じだったかな。

 

久保:「待て」されてたの?(笑)

 

三原:ずーっと「ケイタチン、いつ?」って。僕は仕事では意外と、自分の立場が分かっているんですよ。じーっと待ってる。ずーっと待ってる。

 

石田:まずは丸山さんが美和さんの衣装のデザインを考えて、三原さんはそれに合わせて、という感じですか?

 

三原:色や雰囲気っていうところは合うように。ただ、美和ちゃんは歌を歌う人で、正さんは演奏する人で、立ち位置が違うじゃないですか。だから、ケイタチンと僕に求められる仕事の内容は全く違ってくる。そこはたぶん世界で一番難しいバンドだと思います。妥協は一切ない。アリーナとか、ああいうでかいステージでやれるミュージシャンって、やっぱり求めているレベルがすごく高いから。

 

久保:なるほど。丸山さんは以前、JALの制服を手がけた時に、「CAの方にいろいろと話を聞いて機能面を作っていった」と言っていました。それと同じようにドリカムの場合も、相手の仕事の中身を理解して物作りをするというクライアントワークです。自身のコレクションとは全く違う感じですね。

 

丸山:でも自分のコレクションについても、「誰が、どんな時に、どんな気分になりたいから着るか」がしっくりこないと、僕はデザインできないタイプなんです。例えばオーダーやオファーで、白いシャツを作ってくださいって言われると、「えっ、どんな?」ってなってしまう(笑)。「着地点はどこか」ということなんですね。僕らは不特定多数の人たちに洋服を売るのが生業だから、「自分の中で必死にまず着地点を決める」っていう作業をしないと洋服を作れない。だから、クライアントワークは大変だけど、気持ち的には楽。その意味では、僕の服は根っからのアーティスト肌じゃないっていうか。なんだろうな、好きなものに対するこだわりは物凄くあるんだけど、「自分から湧き上がる何かを表現したい」みたいなのではない(笑)。

 

久保:三原さんはどうですか。この靴をこんな人に履いてほしいとか、この洋服はこんな人に着てほしいとか、そういう着地点はあるのですか?

 

三原:昔はあったかな。でも、今は無くなっちゃった。自分が好きなものだけになってきた。以前は理想とする男性像とか女性像がすごくあったんだけど、ある時ふと気づいたんですね。「そんな人、どこにも居ないや」って。知的で所作も美しくてとか、自分の中で求めてきた「かっこいいな」って思う人間像が堆積すればするほど、そんな人はどこにもいなくなっちゃった。ぼんやりとしたイメージはあるんです、こういう人は面白いんじゃないかっていう。人間がダメだっていうことを前提に考えようとか。

 

久保:人間がダメ?

 

三原:最近、テレビを観ても、自動運転のことばっかりやっているじゃないですか? 僕は車の免許を持っていないから、ああいうのを見るとすごく響くのね。「もうちょっとしたら免許がなくても車を運転できるかも」って。AIなんかのテクノロジーがどんどん進歩していくと、人間が事故を起こす原因になってくる。変な話、「人間がバグ」っていう存在になっていくんじゃないか。そういうことを考えたら、逆に人間を謳歌するという意味で、「ファッションなんてダメな人間のためのものなんだな」って。

 

丸山:シンプルにかわいいとかファンタジーを感じるとか、もっと言えばモテたいとか。その先に「装う」という行為があると僕は思っているんです。快適で機能的な同じ服を毎日着ていたらいいという人たちもいっぱい居て、それも一つのスタイルであって、なんかかっこいいなって思ったりもします。でも、自分はどっちかと言うともうちょっと、なぜ装いたいのか、なぜ綺麗に思われたいのか、何がしたいのかっていうことを考える。「どういうふうに見えたいの?」っていうのが分からないと服が作れないんですね。僕の場合は、常に「物語」だから。例えば花が咲いていて、すごくきれいだから髪に飾るっていう行為が昔からあるわけじゃない?

 

三原:ポエティックなんだよね。ケイタチンの靴を作っていた時も、最初にイメージが来るんだけど、全部言葉なの。「夜霧」「朝焼け」「バラのつぼみ」とか書いてあって、そういうのが羅列してあるのを「うーん、うーん」って読みながら、「なるほどな」って思う。

 

丸山:簡単に言うと、物語のイメージを作って、その中に出てくるであろう登場人物が「こういうシーンで着るコートです」というところまで追い込まないと、コートを作る気にならない。自分の中ではそれだけの話なんだけどね。

 

三原:だから言葉だけ来て、デザイン画は来ない。当時はファックスだったから、カラッカラのファックス用紙に文字がギザギザと書いてある。それを見ながら謎解きですよ。

 

<中略・デザイナーになった頃の話、デザイナーを続けることについて>

石田:いろんな想像力を膨らますには、いろんな体験をしたり、見たりということが必要だと思います。お休みの日などはどういう風に過ごされているのですか?

 

三原:ケイタチンはたぶん、予想通りセレブな生活をしてると思う(笑)。

 

丸山:してねーよ(笑)。

 

三原:たまにケイタチンのインスタグラムを見ていて、「どこにいるんだろう」と思うことがあるもの。写真が綺麗なんです、やっぱり美意識が高いから。

 

丸山:インスタグラムが始まった直後は全然興味なかったんだけどね。写真も超下手で(笑)。でも、やっぱり新しいものを受け入れないのは良くないだろうと、心を入れ替えてやり始めたら、だんだん写真も上手になってきた。でも、ヤッチンもそうだと思うんだけど、あえて何かを吸収するために旅行に行くとか、自分のクリエイティビティーのために何かをするっていうことは全くなくて。これをやらなきゃいけないからリサーチに行くっていうことはあるし、こういうものを作りたいと思ったから「あそこにちょっと見に行こう」みたいなことはあるけど、自分の何かをこうするためにっていうのは無いなあ。

 

三原:残念。ケイタチンには次のインスピレーションを得るためにインドに行ってきたって言ってほしかった。

 

一同:(笑)。

 

丸山:ないないない(笑)。

 

<後略・旅の話、来場者からの質疑応答、クロージングトーク>

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