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2019.09.25

サブスク先駆者のSTITCH FIXがファッションテック企業を買収 新興企業に対抗

written by ケルビン(AIR編集部)

STITCH FIXの公式サイトより

 STITCH FIXは2011年に米サンフランシスコで設立されたサブスクリプションサービスです。2017年に上場し業績を拡大していますが、人気の理由はAIによるスタイリング提案。ここ数年、新鋭のファッション系サブスクリプションサービスが次々と登場するなか、いわば“サブスク先駆者”のSTITCH FIXはどのように対抗するのでしょうか。

ファッションテック系企業同士の提携

 

 米国の複数の情報サイトによると、STITCH FIXは9月3日、バーチャルクローゼットサービスを提供するスタートアップのFineryを買収しました。FineryはユーザーのEメールアドレスと連携することで、ユーザーがECサイトで購買した商品のサンクス・メールのデータを検知し、その商品をFineryのアプリに反映。いちいちクローゼットを探さなくでも、Fineryのアプリで確認できるという「バーチャルクローゼット」を提供しています。

 

 STITCH FIXは、ユーザーに対し、サイズ情報や好みのファッションスタイル、消費の習慣などについてアンケートを行います。収集したデータに対し、STITCH FIXのスタイリストがユーザーの好みにふさわしいファッションアイテムを提案します。他社と差別化するため、現在STITCH FIXの社内にいる約60人のデータサイエンティストがAIを活用し、アンケートのデータを分析。データの傾向をスタイリストに共有し、スタイリング提案の品質を高めています。

 

 一方、STITCH FIXが買収したFineryは2016年、米NYで創業。同社独自の調査によると、アメリカ人女性の多くは平均2時間自分のクローゼットの前で、「今日自分が何を着るか」と悩んでいます。こういった女性の多くはクローゼットを定期的に整理する習慣がなく、すでにたくさんの服を購入したにも関わらず、「新しい服がない」と感じてしまう。Fineryはこの悩みを解決するため「バーチャルクローゼット」のサービスを開発しました。FineryもAIを活用して、ユーザーの買い物の傾向を分析します。

 

 米国ではここ数年、Fineryのように先進的なテクノロジーを生かして急成長する小売りやファッションブランドが増えています。また今回の事例のように、テクノロジーのノウハウを持っているファッション関連の企業同士が提携・買収を行うケースも目立っており、両者で顧客を獲得していくという意味でメリットが大きいかもしれません。

 

Fineryのアプリ

悩みを解決するビジネスモデルの融合

 

 STITCH FIXとFineryには大きな共通点があります。それは、ユーザーのファッションに関する悩みを解決してくれるところです。STITCH FIXの場合、自分に合っているファッションスタイルがわからない、買い物に時間をかけられないという悩みを解決。また、Fineryは自分のクローゼットを管理するのが苦手という悩みを解決していきます。前述したように、STITCH FIXはユーザーに事前にアンケートを行い、ファッションの好みを細かく分析します。ですが、それだけだとユーザーの感覚的な部分に頼ることが多く、必ずしもユーザーの購買行動や好みの特徴を反映できるとは限りません。Fineryのテクノロジーを活用することで、ユーザーがファッションに対して感じている意識と、実際購買した商品の違いやギャップを分析し、より精度の高いスタリング提案ができるのではないでしょうか。

 

参照・出典:
https://www.just-style.com/news/STITCH FIX-snaps-up-finery-wardrobe-management-tool_id136955.aspx

https://finance.yahoo.com/news/STITCH FIX-acquires-digital-wardrobe-startup-finery-201018873.html

https://www.retaildive.com/news/STITCH FIX-acquires-ip-of-wardrobe-tech-company-finery/562127/

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