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2018.02.07

販路開拓へ パリで奮闘する日本ブランド勢―2018秋冬・パリメンズファッションウイーク(2)

 日本ブランドを集めたショールームも各地で開催された。東京ファッションアワードの「ショールームトーキョー」は第3~4回受賞デザイナーを展示し、メンズ合同展の「ジャンブル」は「ショールーム・ジャンブル・パリス」を開催。経産省の靴分野の助成事業で4社によるショールーム「JSEP」も市内のホテルで開かれた。今回は各所で頑張る日本ブランドを一挙に紹介する。

ショールーム・ジャンブル・パリス

 ジャンブルは前回までカプセルから移動してきたブランドを多く抱えていた「レジデントショールーム」に出展していたが、レジデントが今季行わないことになったため、独自の開催を決めた。またピッティウオモやリバティフェアにもかつて出展していたのだが、北田真二代表の中には、「他力本願も良くないな」との思いがあったそうだ。実際にやってみると、①フィルターを通さずに全てダイレクトに分かる、②出展ブランドが販売実績あるので、来場促進で助けられている、③メゾン・エ・オブジェに出展している人もあり、ライフスタイル雑貨の反応も良かったということだそうだ。

「メディコム・トイ」と「FDMTL」が通りから目立って集客を手伝ってくれたと北田さん

欧州とアジアから反応が良かった「ザ・ナーディーズ」

すでに実績を上げているシューズ「バディ」とジップで開閉できるシャツ「ビューティリティーズ」(小売価格2万5,000円)

JSEP(ジェイセップ)=ジャパン・シューズ・エクスポート・プラットフォーム

 ジェイセップは、日欧EPA発効をにらんだ経産省の支援事業の一環としてホテル・レジーナで1月22~23日に展示会を開いた。出展者はオリエンタルシューズの「マツモト」、宮城興業の「ミヤギコーギョー」、ビナセーコーの「カンペキナ」、ニチマンの「スピングルムーヴ」の4社。注目すべきは、4社のオーダーをまとめて、各社が幹事役の東邦レマックに国内納品し、その先の輸出を一括して行うという事だ。まとめることで大幅に輸送コストを圧縮できることになる。

JSEP代表理事の笠井庄治東邦レマック社長

(上段左から)オリエンタルシューズ、ビナセーコー
(下段左から)宮城興業、ニチマン

ショールームトーキョー

~第4回受賞ブランド~

 「チルドレン・オブ・ザ・ディスコーダンス」は、4年ほど前から海外に進出し、何が受けるか肌感で分かるようになってきたという。例えばアウターの工場を使い、バンダナの単なるパッチワークでなく裏地も付けるなどして価値が通るようにしてきたそうだ。欧米を中心に取引し、アジアは10%未満だそうだ。今後の課題はブランドの知名度を上げる事という。

耳付きのメンズ生地のトレンチコートは、945ドル(FOB)。

 「F/CE(エフシーイー)」は、マンにも4シーズンに渡って出展しており、今回もマンに出展しながらショールームトーキョーに挑んだ。トレードショーでは、売りやすく、分かりやすい物が探されており、ショールームではブランドやコレクションとして観てもらえるなど利点を感じたそうだ。今後は機能性を主軸としているブランドらしく、ウォータープルーフなどの機能を分かるように、ただラックに掛けるのでなく、水につけて展示するなど見せ方を工夫していきたいとしている。

 「ボディソング」はすでに上海に出展して海外販売の実績があるが、パリに出てみて周りのブランドの凄さを感じたそうだ。特に営業力やイメージ作り、分かりやすい空間作りなど改善すべき点や得るものが大きかったそうだ。派手なグラフィックジャカードやリメーク物に需要があると感じたという。

 「クオン」は「過去のカッコ良いものを今に」をコンセプトにボロ布や刺し子のアイテムを披露した。欧米では伝統を大事にしているからこそ、ボロ布の価値を理解してもらえ、一方でアジアは、日本に対する憧れから求めてくれるそうだ。100万円を超える刺し子のジャケットやボロ布ジャケット、手藍染めのドビー二重織りやさおり織など凝った素材に高い評価がされていた。

 「ディガウェル」はアジアを中心に販売してきたが、欧州を中心に10ヶ国以上のオーダーを得た。特に切り替え物のブルゾンやパンツに当たりがあったという。ルックファーストという考え方でコーディネートを優先して買い付ける様子が覗えたという。ショールームトーキョーでは、いろんな人たちと情報交換できたことが大きな成果だったそうだ。

 「ソーイ」は3年前からショールーム・アテリエル、ニレアップスのヌーで販売してきた。ベロアのボリューム感あるドロップショルダーのダウンジャケットが昨年に続き、評判良かったそうだ。またどうやって販路を広げ、良い店をピックアップするのかなどの情報収集と交換ができた点が特に良かったそうだ。

~第3回受賞ブランド~

 「ターク」は、スパンコールやモケモケ、ワッフルなどテキスタイルからアプローチしている物が受けたという。クラッシュ柄のジャカードをさらにクラッシュさせたものなど凝った素材感が好評だった。自分らしい服を作り続けていくことが課題だと感じているそうだ。

折り畳んでコーティングしたジャケットも好評だったターク

 「ダブレット」は、プレスしたシャツとTシャツのシリーズが万遍なく売れた。3回目にして20件程度の取引だが、「あと1回で支援終了となることから、その後アパートを借りて昼間はそこで展示会を開くなど身の丈に合った取り組みを考えていかねばならない」と課題を口にした。

 今回は8ヶ所、28ブランドを紹介したが、この他にもキューブショールームやニレアップスから独立したショールームなど各所にも数多くの日本ブランドが海外販路開拓を目指して奮闘していた。

 国内市場縮小と裏腹の海外販路開拓の道のりはまだ緒に就いたばかりだ。これから益々出ていくブランドが増えることを期待しつつ、行政の支援が効果的なものになるよう注文を付けていきたいとも思う。

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久保 雅裕(くぼ・まさひろ)
アナログフィルター『ジュルナル・クボッチ』編集長

 

ファッションジャーナリスト・ファッションビジネスコンサルタント。繊研新聞社に22年間在籍。『senken h』を立ち上げ、アッシュ編集室長・パリ支局長を務めるとともに、子供服団体の事務局長、IFF・プラグインなど展示会事業も担当し、2012年に退社。

大手セレクトショップのマーケティングディレクターを経て、2013年からウェブメディア『Journal Cubocci』を運営。複数のメディアに執筆・寄稿している。杉野服飾大学特任准教授の傍ら、コンサルティングや講演活動を行っている。また別会社で、パリに出展するブランドのサポートや日本ブランドの合同ポップアップストア、国内合同展の企画なども行い、日本のクリエーター支援をライフワークとして活動している。

 

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