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2018.02.07

販路開拓へ パリで奮闘する日本ブランド勢―2018秋冬・パリメンズファッションウイーク(1)

 2018-19年秋冬シーズンのパリメンズファッションウイークは、2018年1月16日から開かれ、併せてトレードショー、ショールームも開催された。「トラノイ・メンズ」がカロー・デュ・タンプル会場(74ブランド)、「トラノイ・ウィメンズプレビュー」がパレ・ド・ラ・ブルス会場(86ブランド/うち8ブランドはメンズ複合)、「マン」(105ブランド)がヴァンドーム広場、会場を変更した「カプセル・マレ」(46ブランド)がマレ地区で、それぞれ1月19~21日に開かれた。この他トラノイのショールームバージョン「トラノイウイーク」、マンの同バージョン「マン/ウーマンショールーム」も開催された。

トラノイ・ブルス

 「サイドスロープ」は前回タンプル会場に出展したが、今回はブルスへ移動した。カシミヤを中心にハイラインを持ってくるなど会社の得意とするクオリティー、クリエーティブ、技術力を見せていく方向だ。

凝ったハンドメイドは中国生産で、ヤク・ウール混のニットは4万9,000円(小売価格)

マン/ウーマンショールーム

 「ラッピンノット」は新潟のニットメーカー、梅田ニットのオリジナルブランド。かつてはトラノイに出展するなどして5回目のパリとなるが、マンはアイテムに特化したブランドが多いことから親和性を感じて出展することにしたそうだ。ブランドが世界でどう映るのか、どうしていきたいかを確かめる機会として楽しんでやっていくそうだ。

ウール・ポリエステルのカーディガンは、3万2,000円(同)

カプセル・マレ

 「セヴシグ」は、日本の市場が飽和状態なので世界の人々に見てもらいたいと17-18年秋冬のショールームに出展し、前シーズンからカプセルに参加している。リメーク物やキャラクターTシャツなどに当たりがあったという。

商品はあまり見せられないとの事で、ブースの上辺のみ撮影

 「ポリクアント」はピッティウオモやミラノのショールームなどを通じて欧州やアジアに販売先を持つが、国内は皆無に等しいそうだ。フロッキー加工に転写プリントを加えたり、オパール加工にキルティングするなど素材段階での拘りが著しい。

刻んだようなオパール加工のキルティングブルゾンは、4万8,000円。

トラノイ・タンプル

 「デューレン」は、紙のように見えるレザーアイテムを並べた。今年4月、マレ地区に直営店をオープンする予定で、その前に反応を見てみたいと出展した。欧州のクリエーターとコラボしたラインも用意し、日本とアジアバイヤーには受けが良かったそうだ。

 10年以上出展し続けている「カシラ」は、この1~2年の傾向を「カジュアル化」「楽で簡単」「ストリート系」のキーワードと感じており、ベレーやキャスケット、キャップが好調という。勢いのあるアジアで売り上げを取りつつ、イメージとして欧州にも広げていきたいとしている。

 「ジャパン・イズ・スタイル」は経産省の皮革関連の助成金を得て、エキゾチックレザーの「ボーグラン」、グローブの「クロダ」、バッグの「hre」「ウノフク」の4社で参加した。以前は「フーズネクスト/プルミエールクラス」に出展したが、客層の違いを感じてトラノイに移したそうだ。

マン

 「ア・ボンタージ」は5回目の出展となるが、ヴァンドーム広場に移ってきて、場所的にハイソなので良いのか悪いのか判断しかねているという。また日本市場の閉そく感や、“無地でクリーンで、着回しが効いてバイヤーの欲しがりそうなもの”が分かってしまうつまらなさを感じて、あえて挑戦的なものを持ってきているそうだ。3年はやろうと思って始め、既存店でも消化しているが、次回はショールームにするか悩んでいるそうだ。

30年代リバイバルのAライン綿ジャケットは、4万2,000円。

 「スノーピーク」はニューヨークのカプセルに5年前から出展し、ピッティウオモは3回目、マンは5回目の参加。欧州だけでも10ヶ国に30口座以上を持ち、ファッションとアウトドアの中間を探しているバイヤーに受けているという。ランプやバリスタセット、チタンカップなどギア系の小物も評判が良く、安定してきたら、自社でショールームを開きたいとしている。

 ジャパンブルーの「ソーライブ」は、「和」を彷彿させる素材やアイテムで海外市場を開拓してきた。ピッティウオモは4回目、セルビッチラン(ベルリン)、そしてマンが3回目の出展となる。既存で20ヶ国60件の口座を持ち、今後も欧州のサーキットはこのコースを維持していくそうだ。

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久保 雅裕(くぼ・まさひろ)
アナログフィルター『ジュルナル・クボッチ』編集長

 

ファッションジャーナリスト・ファッションビジネスコンサルタント。繊研新聞社に22年間在籍。『senken h』を立ち上げ、アッシュ編集室長・パリ支局長を務めるとともに、子供服団体の事務局長、IFF・プラグインなど展示会事業も担当し、2012年に退社。

大手セレクトショップのマーケティングディレクターを経て、2013年からウェブメディア『Journal Cubocci』を運営。複数のメディアに執筆・寄稿している。杉野服飾大学特任准教授の傍ら、コンサルティングや講演活動を行っている。また別会社で、パリに出展するブランドのサポートや日本ブランドの合同ポップアップストア、国内合同展の企画なども行い、日本のクリエーター支援をライフワークとして活動している。

 

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