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2019.08.21

“食”に熱視線 異業種導入でディスティネーションストアを目指す米国小売り店

クレート&バレルがオープンしたレストラン「ザ・テーブル・アット・クレート(THE TABLE AT CRATE)」

 ニューヨークは、さまざまな店舗やカルチャーに根づいたイベントが盛りだくさん集まった、米国の中でも特殊な街ですが、その他ほとんどの州では、買いものといえば、ショッピングモールや利便性の高い小規模なロードサイドモールに出かけるのが一般的です。しかも大型チェーン店は今年も撤退や閉鎖が重なり、客足の低下、モール自体の閉鎖が加速しています。

 

 小売り業界のシンクタンクのコアサイト・リサーチ(CORESIGHT RESEARCH)社の最新調査によると、7月31日時点で7,567店舗が閉鎖し、最も影響を受けたアパレル分野では2,750店舗が閉鎖を発表しました。ちなみにこの中には、先日発表されたプラスサイズの小売り店「アヴェニュー(Avenue)」222店舗と、婦人服専門店「アガシ(Agaci)」54店舗は含まれていません。

 

 店舗離れに歯止めをかけるべく小売り店が注目していることの1つに、“食”があると思います。最近のユニークな動きとして、Uber Eats(ウーバー イーツ)は、注文した料理を実店舗で食事することができる“イートイン”というサービスを一部の都市で開始しました(日本は現在利用不可)。顧客は、アプリを利用することによって、一流の料理や新しいレストランをアプリで発見でき、それを指定した場所までデリバリーしてもらえましたが、“イートイン”オプションを選ぶと、店舗に出向いて食事をすることができるようになったのです。

買い物客の共感を生み出す リテール・ホスト・レストラン(Retail-host restaurant)とは

 米国の小売業界が集客を促し顧客に新しい体験を提供するために 数年前から取り入れているトレンドの1つが、“リテール・ホスト・レストラン(Retail-host restaurant)”。異業種であるレストランを導入することで、店離れした顧客を呼び戻し、新規客も取り込む方法の1つです。最近では、コンビニやスーパーマーケット、ガソリンスタンドなどでも有名グルメサンドウィッチ店を導入する動きが見られます。キッチン雑貨やインテリア家具を扱う「クレート&バレル」が、コーナーストーンレストラン・グループとのタイアップでイリノイ州に、「ザ・テーブル・アット・クレート(THE TABLE AT CRATE)」というレストランをオープンしました。レストランでは、「クレート&バレル」で扱っている商品を使ってスタイリッシュな食事を提供し、双方の売上増を狙っています。

米百貨店は自社キュレートのレストランで集客アップ

 全米レストラン組合によると、小売り店がホストするレストランは、最も成長しているセグメントの1つ。2017年には、このコンセプトで420億ドル(4兆2,000億円)以上の売り上げだそうです。米国ショッピングモールが高級レストランや新進のスイーツ店を導入して集客増を図っていますが、デパートでは、独自プロデユースによる“食”を取り入れ、新たな体験を求める顧客に応えようとする動きが見られます。NYハドソンヤードに今年オープンした「ニーマン マーカス」は、観光スポットであることもありますが、3つのシグネチャーレストラン「ゾデイアック ルーム(Zodiac Room」)、「バースタンレイ(Bar Stanley)」「クック&マーチャン(Cook&Merchants)」と注目の飲食店を導入しました。

今秋開業のノードストローム旗艦店 6つのコンセプトレストランをオープン

 この秋、NYマンハッタンにオープンするノードストローム旗艦店では、シアトルベースのシェフ2人、Jamese Beard賞を受賞したシェフのトム・ダグラスと、Food&Wineでベスト新人シェフ賞を受賞したイーサン・ストゥウェルとタイアップし、6種類のコンセプト・レストランを誘致すると発表しました。

ウルフ(WOLF)

有名シェフのイーサン・ストゥウェルの人気イタリアンレストラン「How to cook wolf」初のニューヨーク店

ジニーズ(JEANNIE’S

セレブシェフの1人トム・ダグラスによるファミリー向けレストラン。モダンなピザやパスタやサラダをカフェスタイルで提案

ハニ・パシフィック(HANI PACIFIC

同じくトム・ダグラスによるパシフィック・リム料理を提供するコンセプト・レストラン

ブロードウェイバー(BROADWAY BAR)

カクテルや前菜が売りのNY旗艦店限定レストラン

ビストロ・ヴェルデ(BISTRO VERDE)

5階にオープン予定の肉料理からシーフードまで、クラシックなデイッシュがメイン。2020年には野外で楽しめるパテイオも予定

シュー・バー(SHOE BAR)

シューズ売り場に併設されるバー。マティーニやワインとともに食事が楽しめる。

 観光客を含め若年層からファミリーまですべての客層を想定したレストランサービス。旗艦店をパイロット店とし、全米の他店舗にも取り入れていくようです。

 

 日本のデパートには食品レストランフロアがありますが、アメリカではせいぜい軽食のカフェレストランが入っているくらいなので、6種類ものチョイスがあるのは非常に珍しいと思えます。米国デパートに海外の物産展が開催される日も近いかも!?

この記事のエクストラ版は「AIR」25号(2019年9月発刊予定)で
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