PICK UP
2019.08.28
【FASHION × LIFESTYLE】ますますボーダレスに進化 米NYの新トレードショー「SHOPPE OBJECT」に見る展示会のあり方
RINAのFASHION x IT レポート from NYC Vol.112
8月にニューヨークで開催される展示会というと、マンハッタンのジャビッツセンターで毎年開催されるライフスタル見本市「NY NOW(ニューヨーク ナウ )」が有名。ですが、今回私が向かったのは、ギフト&ホーム商品を中心とした展示会「SHOPPE OBJECT(ショップ オブジェクト)」。Aesthetic Movement とアパレル業界見本市「Capsule」の創始者が2018年にスタートしたばかりの新しい展示会なのですが、回を重ねるごとに出展ブランド数を伸ばしています。
2019年8月展はイベントスペース「ピア36」
「SHOPPE OBJECT 2019 Summer」の会場は、マンハッタンの北側にあるイベントスペース「ピア36(PIER 36)」。最寄駅はFトレインが停車するイーストブロードウェイ駅。そこから徒歩で10~15分ほどで到着しますが、タクシーやUberなどを利用するのもありですね。
回を重ねるごとに規模拡大
「SHOPPE OBJECT」は毎年2月と8月の年に2度開催されるギフト&ホームの展示会。第1回目の2018年8月展の参加ブランドは100ブランドほどだったと伝えられていますが、3回目となった2019年8月展では400近いブランドが出展しました。
約2万5,000ブランドが参加する大型トレードショーである「NY NOW」も魅力的ですが、個人的にはこれくらいの規模の方が見て回りやすいと感じました。気になったブランドに後になってから戻るのも楽ですし、時間を有効的に使うことができました。また、用意されていたフロアマップにも感動。非常にわかりやすくデザインされており、会場を効率的に見て回るのに、とても便利だと感じました。
日本から約20ブランドが参加
日本企業・ブランドの海外進出をサポートするJETROも「SHOPPE OBJECT」に注目していたようです。今回、北米市場を目指す日本の事業者の販路開拓を支援。会場内でも非常に巧みな導線で、日本のブランドをフィーチャーしていました。
■「SHOWCASE JAPAN」に出展した日本の企業・ブランド
・播州織ブランド「播州藍屋」(ソーイング竹内)
・木製スピーカー「Clappin Jam Wood」
・岡山・倉敷発のナチュラル服ブランド「COTTLE」
・奈良の蚊帳織りブランド「ならっぷ」(丸山繊維産業)
・本物のパンでできたインテリア照明「PAMPSHADE BY YUKIKO MORITA」
・福井発・プリーツ入りのエコバッグ「PLECO」
・北海道・合板製造の滝澤ベニヤによるプロダクトブランド「PLYWOOD LABORATORY」
・クリエイターによるステーショナリー雑貨「REPLUG」
・高品質ソックスブランド「RoToTo」
・紀州漆器「角田清兵衛商店」
・菅原工芸硝子によるハンドメイドガラス製品「Sghr」
・広島・熊野筆による新ブラシブランド「SHAQUDA」
・岐阜発の毛抜きブランド「sealtanishi」
・アクリル樹脂に花や果実を封じ込めた標本型プロダクト「SOLA CUBE」
・真空チタンカップなど新潟県燕市のライフスタイル・プロダクト「SUSGALLERY」
・シルクスクリーン技術を使った「SUTTA」
・高田耕造商店(たわし)
・宝島染工(天然染めの服・ストール)
・東洋スチール(工具)
・作業手袋メーカーのウインセスが手がける透明バッグ「zero」
キッチン系商品からアパレル、バッグ類など幅広いカテゴリーをバランスよく揃え、なかなかの見ごたえ。海外バイヤーたちにもスムーズに対応できるよう、各ブースには英語が話せるスタッフも配置。角田清兵衛商店さんのブースに立ち寄った際には、外国人スタッフが商品の特徴を説明してくれました。商品やブランドのことをきちんと学んだスタッフがサポートしてくれるのはブランド側にとっても安心ですし、大きなメリットだろうなと感じました。
今回もアポなしでしたが、いくつかの出展ブランドの方々とお話しさせていただきました。海外での出展は費用もかかりますし、チャレンジングなことでもあります。しかし、JETROや自治体からの支援を受けることで、海外に売り込みたいという自分たちのやる気を最大限に発揮できていたように感じます。何より、日本ブランドのミッションと熱意が伝わってきました。
消えゆくボーダーライン
「SHOPPE OBJECT」はホームウエア・ギフト類が中心ではあるのですが、ファッションブランドの出展もかなり見られました。また、急成長するビューティーやウェルネスもこの展示会でも大きくフィーチャーされていました。さらにフード関連ブランドも参加しており、ボーダーラインは薄まるばかり。消費者の間で関心の高い “ライフスタイル”に関連するカテゴリーを取り入れていることで、ホームウエアやギフト類を展示するブランドとの相乗効果を生み出していたと思います。
ビューティーやウェルネスのブランドでは、おもに植物由来などナチュラルな素材を使用したスキンケアブランドが目立ちました。大麻草から抽出されるカンナビジオール(通称CBD)を含む美容液も複数見られ、興味深く話を聞く来場者の姿が印象的でした。
最近はスキンケアブランドもジェンダーレスになり、男女問わず使用できるナチュラルブランドが多いですよね。ジェンダーレスなプロダクトは、販売チャネルを制限せずにバイヤーとコミュニケーションが取れるところがアドバンテージだと感じました。これはウェルネス系のサプリメントにもいえることで(もちろん物によっては女性に限定するものもありますが)、カリフォルニア発の「ムーンジュース(MOON JUICE)」のように、男女問わず飲用できるブランドも多いのです。
今回は、ビューティーやウェルネス系のブランドの方々とお話しする機会を持てたことが大きな収穫でした。商談の邪魔にならないように色々な話をさせていただきましたが、自分たちが属す業界だけにフォーカスし過ぎると考えが凝り固まってしまうことがあるなと感じました。変化のスピードが速い時代だからこそ異業種にも目を向け、その取り組みや意見を知ることで、考え方も柔軟にしていかなければね、と。ブランドの方々とも、さまざまな交流を持つことで、インスピレーションも湧き、チャンスも広がっていくよね、と話が盛り上がりました。
私自身も得意分野であるファッションとテクノロジーだけについフォーカスしていましたが、業界を超えた“繋がり”がいかに重要であるかは、MD(マーチャンダイジング)や展示会などを見ていて以前から感じていました。この展示会を通し、これまで以上にアンテナを張りめぐらせないといけない!と強く意識するようになりました。
SHOPPE OBJCET
https://shoppeobject.com/
@shoppeobject
R I N A 90年代の米国がネットバブルだった頃に米国にて日本向けのファッションポータル事業にコンサルタントとして関わる。
以降、「ファッション」と「インターネット」上で行われるビジネスを中心とした事業に15年ほど携わり、Web製作やディレクション、ビジネスのコンサルタントを行う。現在は米国のファッション事情やトレンド、ファッションとIT関連を中心とした執筆、今までの経験と知識を活かしビジネスサポートも行っている。
■ アパレルウェブ ブログ |