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2019.06.26
イタリアンブランドとアートの関係性 ピッティウォモ&ミラノメンズ期間中のアートイベントをラウンドアップ
「グッチ ガーデン」に展示した日本人アーティスト ヒグチユウコ氏の作品
ポストストリートに注目が集まる中、メンズファッションとアートの関係性はますます強まっているようだ。ロンドンはストリートカルチャーとの関係性を強める中、歴史上、芸術を作り続け、それに常に接してきた国民性を持つイタリアは、アートとの密接な関係をピッティウォモ(2019年6月10〜14日開催)、ミラノメンズ(2019年6月14〜17日開催)で見せつけた。
ピッティにおいては、ピッティ・ウォモ期間中に「グッチ(GUCCI))がグッチ ガーデンのギャラリーで新しいエキシビションの御披露目を行った。「グッチ ガーデン」はクリエイティブ・ディレクター アレッサンドロ・ミケーレとヴェネチアIUAV大学のファッションデザイン&マルチメディアアート学部長でもあるマリア・ルイーザ・フリーザとの共同キュレーションにより、「グッチ」のアーカイブコレクションを収蔵・展示している。そのギャラリー2階にある「Détournement」の展示室では、日本人アーティスト ヒグチユウコ氏による新作が発表され、カクテルパーティーも開催。幻想的で神話的な大きな生物など、「グッチ」の世界観にもつながる作品が公開された。
また、「エミリオ・プッチ(EMILIO PUCCI)」は副会長兼イメージディレクターのラウドミア・プッチが監修を行い、同社が1960年代から現在までに取り組んできたインテリアデザインとアートの分野における特別なプロジェクトを紹介したブランドブック「Unexpected Pucci」の発表イベントをピッティ・ウォモ会期中にプッチ宮で行った。トーレプリントやグラフィックによってインスパイアされた迷宮のようなセットの中で、この本で紹介されている重要なコンテンツが展示された。
「Unexpected Pucci」の発表イベント
ミラノメンズ期間中に、「プラダ」はクレイグ・リチャーズがプラダ財団ミラノのために企画した音楽プログラム「I WANT TO LIKE YOU BUT I FIND IT DIFFICULT」を、6月14日にプラダ財団で開催した。プラダ財団は、レム・コールハース率いる建築事務所OMAが設計した、現代アート複合施設。ミウッチャ・プラダはアートに造詣の深いことで知られているが、ここでは「プラダ」が所有するイタリア国内外のアーティストによる現代アート作品を展示している。
「I WANT TO LIKE YOU BUT I FIND IT DIFFICULT」
そして、ジョルジオ・アルマーニの監修よる文化複合施設「アルマーニ / シーロス」では、「アルマーニ/テアトロ」を設計した建築家、安藤忠雄の過去の作品を集めた、『Tadao Ando. The Challenge』を開催している。「アルマーニ/シーロス」では、これまでも様々な有名写真家の写真展等を行ってきたが、今回は同施設初の建築展。正確に言うとこの展覧会のオープニングはサローネ期間中だったが、ミラノメンズ会期中に改めてファッション関係者にもお披露目される形となった。
『Tadao Ando. The Challenge』
「マルニ(MARNI)」はアーティスト、シャルヴァ・ニクヴァシヴィリが舞台セットだけでなく、コレクションの中のために紙や不要品で作られた帽子やバッグも製作していた。
マルニ
そもそもアーティストやその作品からのインスピレーションをコレクションに活かすデザイナーは多く、それは今に始まったことではない。ただ、昨今のコレクションにおいてはこのようなインスピレーションや(今回の「マルニ」のような)実質的なコラボレーション以外にも、ブランドの世界観を表現する一つのツールとしてアートを取り入れているところが目立ってきている。ファッションの世界がどんどん商業ベースになっていく中、やはりデザイナー達はクリエーションの部分での表現をアートに見出しているのかもしれない。ミラノだからこそできるこのアートへのアプローチがどのようにリアルファッションに反映していくかの今後の動向に注目したい。
文:田中美貴