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2019.06.13
【新連載―ファッション×○○業界に学ぶ】 アパレルの視点でつくるマンガ売り場が、 原宿のファッション基地となる
アパレルウェブ「AIR VOL. 23」(2019年5月発刊)より
編集協力 編集:株式会社ロースター/文:角田貴広/撮影:藤井由依(ロースター)
(左から)日本出版販売株式会社 営業本部リノベーション推進部市場開発課 有地和毅氏
株式会社パル ベースヤードトーキョー館長 西田陽介氏
ファッションの聖地・原宿に2018年10月5日にオープンした「ベースヤードトーキョー」。株式会社パルが扱う「CIAOPANIC」「Kastane」「mystic」「WHO’S WHO galler y」「CIAO PANIC COUNTRY MALL」の5ブランドを集めた複合型ショップで、2階には漫画専門の書店「バックヤード」が入ります。ここでは約1万冊の漫画を読みながらくつろいだり、もちろん漫画を購入することも可能。タッグを組むのは、出版社から書店へと本を流通させる出版取次会社の日本出版販売株式会社。最近もブックホテル「箱根本箱」や六本木にある本と出会うための本屋「文喫」など、書店の新しい形を模索している心強いパートナーです。ファッションと漫画。相性の良さそうなカテゴリーではありますが、具体的にどんな相乗効果を狙って、売り場を作ったのでしょうか。タッグを組んだ両社にお話を伺いました。
―まずは「ベースヤードトーキョー」と、その中で漫画を扱う「バックヤード」ができた背景を教えてください。
PAL 西田:この場所には以前「CPCM」という複合施設がありましたが、われわれが得意とする若年層に向けた「カジュアルの聖地」を作りたいということでリニューアルが決まりました。新しいテーマは「NEW SPACE, NEW CULTURE, AND NEWONE」。お客様にとって、とにかく新しい発信ができる場所を目指しました。そうなると、見た目だけの“嘘っぽい”ものを作りたくなくて、自分たちが熱くなれるもの、そして原宿にないものを考えた結果、ふと会話の中から「漫画を置いたら面白い」というアイデアが生まれたんです。
日販 有地:パルから「漫画をやりたいが、どうすればいいか」という相談をいただきました。これまでブックホテルや本屋の新業態の経験はありましたが、大手のアパレル企業と本の売り場を作るのははじめてだったので、洋服と漫画の組み合わせは面白そうだと直感しました。大きなテーマとしては漫画を介して人と人がつながれる空間にしたいと思ったんです。パルのみなさんは本当に漫画が好きで、雑談ベースでいろんなアイデアをヒアリングし、コンセプトを決めていきました。選書については、マニアックになりすぎないよう、誰もがどこかで知っているものをメインに選びましたが、その際にも販売員さんに好きな漫画を聞きました。自分が選んだ本があるってうれしいですし、自分ごと化するきっかけになりますよね。
―具体的な両社の業務内容を教えてください。
有地:企画・選書は基本的に日本出版株式会社がやっていますが、全てにおいて両社でディスカッションをしています。
西田:毎月変わる展示コンテンツがあるのですが、定期的に昼飯を食べながら内容を話し合ったり、模索しながらやっている形ですね。
―館の中で「バックヤード」はどんな役割を持つのでしょうか。
西田:ただ漫画を販売したいのではなく、あくまで人が集まる場所を作りたいという思いがありました。会社としてもプロモーションとして出店をしたようなもので、採算度外視ですよ(笑)。ドリンクも売っているのですが、最近では無料でお茶やコーヒーの提供もしていて、ここでくつろいでもらえたらいいなと。
有地:このお店では、どの漫画も読めるようにシュリンク包装(透明フィルムで漫画を密封させる包装)をせずに販売しています。中身をしっかり見られるようにすることで、初めての漫画を手に取るハードルを下げたんです。シュリンク包装をしないことで売り上げが増加した事例もあります。読むと、欲しくなる。誰かと共有すると、欲しくなる。実は買って頂くための仕掛けも多いんです。
―客層は?
西田:メインは20 代の若い男女です。ただ、立地上海外のお客様がお土産感覚で買って行かれたり、これまでファッションに興味がなかった方が「漫画本屋」という言葉に惹かれて来店していただけるケースもあります。
売り上げをあげるための単純なコラボ企画ではない
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東京・原宿に2018年10月5日にオープンした「ベースヤードトーキョー」。2階には漫画専門の書店「バックヤード」を開設した。
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東京・原宿に2018年10月5日にオープンした「ベースヤードトーキョー」。2階には漫画専門の書店「バックヤード」を開設した。
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東京・原宿に2018年10月5日にオープンした「ベースヤードトーキョー」。2階には漫画専門の書店「バックヤード」を開設した。
―そもそも、漫画とファッションの相性は?
西田:直接関係があるというよりも、センスの問題だと思っていて。洋服を選ぶのも、漫画を選ぶのも個性が反映されるじゃないですか。音楽もそうですが、アウトプットが違うだけで、共存するものなのかなと思います。もちろん、顧客視点で言えば異なるカテゴリーなので、相性がいいからといって一緒に買ってくれるという単純な動線でもないのかなとは思います。以前「漫画はファッションの教科書だ」という企画で洋服と漫画を並べて売ったこともあるのですが、必ずしも売り上げが伸びるわけではありませんでしたね。
有地:このお店では今「AKIRA」が一番売れているのですが、余白をたっぷり取ることで本というプロダクトの魅力が増すような置き方なんかは本屋では考えつかないファッションらしいVMD(Visual MerchanDinsing)だなと。最近、SNSではユーザー起点の漫画コンテンツの発信も盛り上がっています。漫画コンテンツとのタッチポイントが増えているので、リアルな場での魅せ方もアップデートしていきたいんです。ある意味、「バックヤード」の陳列はSNSと書店の中間に位置づけらるような密度感で、こうした見せ方はファッション企業ならではの斬新なアイデアだなと思いました。
―オープンしてみて、顧客の反応はどうでしたか。
西田:やっぱり、洋服を見に来た方は最初びっくりしますよね(笑)。本屋といってもかなり“見せる空間”を意識しているので、ここで本が買えるのか、読んでいいのかと戸惑う方も多くて。僕なんかは接客が当たり前だと思っているので、本を見ている人でも接客しちゃうんですよ(笑)。でも、そうしてファンになってくれたり、来るたびに1冊漫画を買ってくれる方もいます。
有地:西田さんにオススメされた漫画って、他の本屋さんとは全く違う買い物になるんですよね。書店ではお客様に話しかけてのレコメンドはあまりしないのですが、取り入れてみてもおもしろいと思います。これも新しい発見でした。
―売り場との相乗効果は?
西田:漫画をはじめ、この建物自体が斬新な複合施設なので、社内的にも特別なポジションだと思うのですが、だからこそ、ここで働いているスタッフのモチベーションはかなり高まったようです。洋服にはトレンド性が必要ですが、漫画があることで新しい情報が自然と入ってきたりして、インスピレーションにつながったり、そうした相乗効果もあるようですね。あとは、休憩中に漫画を読めるというメリットがあります(笑)。
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