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2019.06.12
Z世代を惹きつけ急拡大 サーキュラー・コマース(循環型市場)の今
米国の18~29歳が抱える学生ローンは現在153兆円に達しており、約4,400万人が、平均3万7000万ドル(約370万円)もの負債を抱えているといわれています。返済が滞ると、個人の信用を失い、将来の住宅や車のローンを組むことが困難となってしまいます。学生ローン以外の家賃や生活費などを考えると、洋服やエンターテインメントに費やせる支出は限られています。
彼らがライフスタイルを豊かにするための手段として、“レンタル”を選択するのはごく自然な流れだといえるでしょう。洋服のレンタルにおいては、先駆者である「レント・ザ・ランウエイ(Rent the Runway)」のほか、アメリカンイーグルが、月額49.95ドル(約5,400円)で1回3着まで借りられるサービス「スタイルドロップ」を今年2月に開始しました。そして、アーバンアウトフィッターズもこのほどレンタル市場に参入することが発表され話題となりました。アーバンアウトフィッターズの新サービス「ヌーリー(Nuuly)」は、姉妹ブランドのアンソロポロジーやフリーピープルをはじめ、同社の象徴的アイテムであるヴィンテージ品や100以上のサードパーティーの商品を月額88ドルで6着まで借りられるというもの。アパレルの小売企業がレンタルを導入するのは苦渋の決断ともいえます。
その一方で、顧客の懐事情や、消費行動の変化に伴い、“借りる”という選択肢以外に、中古商品の“再販”が、急激な増加傾向にあり、今日の小売業の脅威となりつつあります。
年間3,000万円稼ぐユーザーも登場 若年層が夢中になる再販マーケットでの販売
経済的な事情にもともとの起業家精神も加わり、最近は、衣類や靴などのファッション雑貨の中古品の売買で何千ドルも稼ぐ10代もいるようです。彼らが夢中になっているのは、「POSHMARK(ポッシュマーク)」や「GOAT(ゴート)」「STOCKX(ストック・エックス)」などのリセールサービス。スマホやタブレットを使い、容易にアプリにアクセスできるようになったことで、“RE-COMMERCE(リ・コマース)”という市場も生み出し、さらなる大ヒットとなっています。
スレッドアップ(thredUP)
以前当コラムでもご紹介した「スレッドアップ」は、オンラインに特化したリサイクルショップです。不要な中古品をクリーンバッグに詰めて送るだけ。販売に必要な撮影や商品に関する情報入力などをすべて代行してくれるという手軽さが人気です。スレッドアップの調査によると、Z世代の3人に1人が、このサイト内で販売を行うだけでなく、中古商品を購入しています。
ゴート(GOAT)
「ゴート」は今年2月、大手アパレルチェーンのフット・ロッカー(Foot Locker)から1億ドル(約100億円)の資金を得た、ハイエンドスニーカーの再販では世界最大のプラットフォームの1つ。競合には、ハンドバッグや時計、ストリートウエアを強化している「ストックX(StockX)」や、高級アパレル&ストリートウエア販売の「グレイルド(Grailed)」、ハイエンドファッション販売のファーフェッチ(Farfetch)に昨年2億5,000万ドルで買収された「Stadium Goods(スタジアム・グッズ)」などが存在します。その中でも「ゴート」は高額スニーカーのみに特化した特殊なマーケットを狙っています。
調査会社のパイパー・ジャフレー(PIPER JAFFRAY)が今春実施した調査によると、対象となった10代男性の31%、10代女性の22%は、スニーカーヘッドと呼ばれる熱狂的なスニーカーコレクターであることがわかりました。彼らはスニーカーを買うだけでなく、コレクションを再販するためのプラットフォームを利用しています。ハイエンドバッグが婦人市場で重要なアイテムとして長年君臨してきたように、高額スニーカーは最近の若年層にとって、非常に価値の高い商品となりつつあります。
ディーポップ(DEPOP)
「ディーポップ」はイーベイとインスタグラムをミックスしたようなソーシャルマーケットプレイス&アプリ。商品をリストアップすることで、特定のコミュニティーを簡単に作成できることが若年層に人気となり、ビッグヒットに繋がりました。伊ミラノで2011年にスタートして以来、147カ国で利用されていますが、ユーザー1,300万人のうち9割が26歳以下となっています。スレッドアップやゴートと競合する立場ですが、カルト的なフォロワーが生まれるなどSNS的な要素が加わっていることが最大の特徴といえます。ディーポップの副社長によると、一部のヘビーユーザーは、年間に30万ドル(3,000万円)以上も売り上げているそうです。手数料(売り上げの10%)や送料もかかるのですが、なかには、大学時代に家や車を買える資金を得るユーザーも存在しているそうです。
ラグジュアリーデパート初 ニーマン・マーカスが高級雑貨の再販サイト「ファッションファイル(FASHIONPHILE)」とタイアップ
今年4月、高級デパートのニーマン・マーカスが、米カリフォルニアを拠点に高額バッグやジュエリーの中古販売をしているファッションファイル(Fashionphile)の株を取得しました。ファッションファイルはオンラインと店舗を運営していますが、1万5,000アイテムの在庫を持ち、過去5年で年間売り上げ50%増、今年は2億ドル(200億円)に達すると予測される有力企業です。利用者は不要な高級バッグを売り、3,000ドルの小切手を手に、また別の高額商品を購入するといいます。ニーマン・マーカスとのタイアップにより、合法的かつ安全に転売する場所を提供できています。消費者は、新しいデザインの商品が欲しい時には不要なバッグを売り、その収益で新たに商品を購入するというわけです。
ベイン・アンド・カンパニー(Bain&Co. Worldwide)の調査によると、2018年の米国の高級再販市場は60億ドル(約6,000億円)で、その80%を時計とジュエリーが占めています。中古部門を創設した高級デパートのニーマン・マーカスは、ラグジュアリー市場においてパイオニア的存在といえます。
ニーマン・マーカスのファッションファイル・サロンに使用済みの高額商品を持ち込むと、エキスパートにより、本物である認証と価値の査定が行われます。見積もり額は、ニーマン・マーカスでほかの商品を購入するためのクレジットとして使用することができるのです。リサイクル(再循環)/アップサイクル(別の価値あるものを創出)/再利用/転売/交換と、まさに循環型のビジネスモデルが確立することになります。
マックスリー・コーポレーション
マックスリー・コーポレーション ( CHIZU NISHIDA ) ■ビジネス関連のお問い合わせ:小林まで
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