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2019.04.26

【インタビュー】なんとなくはもう卒業!インフルエンサーマーケティング成功の鍵は「熱意」 にあり! ―株式会社ケテル代表取締役 丸本貴司氏

――アパレルウェブ「AIR VOL. 21」(2019年3月発刊)より

 

written by 福塚真一郎(AIR編集部)

 過去にファッション企業に所属しながら読者モデルかつ販売スタッフのプロデュースとSNSを組み合わせたことで、「店舗発メディア」の仕組みをつくることに成功した丸本 貴司氏。同氏は2018年より株式会社ケテルを立ち上げました。ファッション企業に勤めていた時代に生み出した成功体験を元に、インフルエンサーマーケティングを成功させるポイントやインフルエンサー業界に対する見方、今後の展望などをお伺いました。

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―最初に丸本さんの経歴を教えてください。

 

 元々出版業界に身を置いていて、ティーン誌の編集を仕事としていました。当時、Amebaブログなどのネットメディアが台頭しており、出版社に在籍しながら、ファッションやヘアスタイル関連のオウンドメディアを立ち上げました。しかし、予算は限られているので、有名モデルをメディアに起用できるわけではありません。そこで目を付けたのが事務所に所属していない読者モデルです。彼らを「読モマガジン」というオウンドメディアのコンテンツに起用しました。この取り組みはビジネスとして成立して、成功を収めることができました。次に入社したのがWEGOでした。人が閑散としていた書店に比べ、WEGOの店舗は常に若い世代の人たちで活気に溢れており、このブランドにSNSを加えることによって、若い世代にヒットする新しいメディアができるのではないかと思ったことも、入社を決めた理由の一つです。WEGOではその後「読モBoys&Girls」というオウンドメディアをつくりました。読者モデルのコーディネートを店頭の小冊子やブランドのSNSで発信していくメディアです。基本的には出版社時代の「読モマガジン」と同じなのですが、店舗スタッフも「読モスタッフ」としてモデルになってもらい発信している点がポイントです。 「読モスタッフ」の仕組みが順調に発展し、SNSで影響力をもつ「読モスタッフ」を育てられるようになり、大手芸能事務所からも声がかかるようになりました。その後、レコード会社の子会社で読者モデルのマネジメント部門の仕事を経て、2018年に独立して、株式会社ケテルを立ち上げました。

 

―貴社の事業内容を教えてください。

 

 弊社はインフルエンサーマーケティングの総合商社と考えて頂ければと思います。インフルエンサーのマネジメントから広告営業、企業のブランディングまで幅広く支援しています。

 

―インフルエンサーマーケティングに適している業態、業種があれば教えてください。

 

 一概には言えませんが、現時点では若年層をターゲットとしたブランドや安い価格帯の方がマッチするかもしれません。しかし今後は今の若年層が年齢を重ねていき、社会人になっていくので将来的にはターゲットの年代は関係なくなると思います。企業がマーケティング活動をする中で当たり前の手段になるでしょう。 また、現時点ではコスメのアイテムが多いですが、アイテムも今後は多岐にわたっていくのではないかと思います。

 

―インフルエンサーマーケティングを成功させるポイントがあれば教えてください。

 

 企業がインフルエンサーへ依頼する際に、その「熱意」がインフルエンサーに伝わるかどうかで効果は変わると思います。実際に過去のケースとして、企業のSNS担当者がインフルエンサーのファンだったので、お話を頂く際にビデオを作ってプレゼンテーションをしてくれたケースや起用したインフルエンサーのために、企業側がプレスを集めて記者会見を開いたケースなどがあります。

 

 方法は様々あると思いますが「どうしてもこの人に商品を紹介して欲しい!」という企業側の熱量が高ければ、インフルエンサーもモチベーションが上がります。そうなると「契約された投稿回数以上に商品の投稿をする」などの自発的なアクションに繋がる場合もあります。

 

 インフルエンサーも人間なので、熱意のある企業とチームとして働きたいと思っています。企業とインフルエンサーがチームとして、信頼関係を築いている案件はマーケティングとしても成功している場合が多い印象です。

 

―反対に企業がインフルエンサーマーケティングを実施する際に注意する点を教えてください。

 

 先程もお話しましたが、取り組みを単発で終了させるのではなく、継続的に行うことが重要だと思います。また、自社のブランドイメージを変える目的でインフルエンサーマーケティングからスタートする場合は効果が出ないことが多いです。

 

 特に元々のブランドのテイストと全く違うインフルエンサーを起用するパターンは失敗する確率が高いです。たとえば、可愛い服装が好きなファンをもつインフルエンサーにビジュアル系の洋服を紹介してもらうなどです。ビジュアル系の洋服を取り扱う企業は、ブランドイメージを変えたくて違うテイストのインフルエンサーを起用すると思うのですが、このパターンは失敗に終わります。ファンの方に「インフルエンサーが仕事としてしょうがなくやっているな」と思われる可能性が高いからです。テイストが違うアイテムの紹介や単発の取り組みなどは、たとえそうでなくても「仕事としてしょうがなくしているな」と誤解されるケースが多く、あまりおすすめはできません。

 

 インフルエンサーは自分とファンの方との信頼性が命となり「信頼性をどれだけ守れるか」という部分はインフルエンサーの本質的な価値となります。インフルエンサーマーケティングをする際は企業側がそこを尊重していく意識も非常に重要なポイントとなります。

 

 

◆振袖TEENS(株式会社ケテルの取り組み)
振袖をPRするチーム・振袖TEENSを結成。メンバーは人気インスタグラマーなど新世代のインフルエンサー達でエンゲージメントにこだわったキャスティング。プロジェクトは一年にわたって、SNSを中心にリアルイベントなども行う予定

―実際に丸本さんが関わって成功した事例はどのようなものがあるのでしょうか。

 

 WEGOの事例はインフルエンサーマーケティングとして成功していると思います。先程もお話しした店舗スタッフをモデルにする「読モスタッフ」という仕組みを東京だけではく、全国の店舗に拡大して、その子たちを「読モBoys & Girls 」というWEGOのオウンドメディアで発信していく事例です。

 

 WEGOの店舗に行けば「読モ」に会えるという認識がWEGOのファンの間で、徐々に浸透していきました。ブランドからは一度も強制したことがないですが、店舗の「読モスタッフ」が色々な場所で自発的にWEGOの商品を着用してくれて、それ自体が宣伝効果になりました。また、イベントとして各地の読モスタッフを集めて、「読モBoys & Girls」の全国ツアーを開催したこともあります。たとえば「アウターツアー」のようなテーマであれば、先着200名で、WEGOのアウターを買えば、ファンが好きな読者モスタッフのチェキが貰えるというイベントなどです。ツアーイベントは毎回大盛況で、行列ができるぐらいまで盛り上がることも多くありました。

 

 「読モスタッフ」を起点として、商品を購入してもらうケースは決して珍しくなく、その後の来店頻度や売上の増加にも貢献できました。その経験を元にケテルでも「振袖TEENS」というチームを結成して、企業のインフルエンサーマーケティングを支援しています。このチームは若いインフルエンサーでチームを組んで、SNSを中心にリアルイベントも交えて、若い世代に振袖を訴求しています。

株式会社ケテル
https://keter.co.jp/

設立 2018年6月
代表取締役 丸本 貴司
〒150-0046 東京都渋谷区松濤1-5-1-603

――アパレルウェブ「AIR VOL. 21」(2019年3月発刊)より

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