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2019.03.27
大手リテールやD2Cブランドが多数登壇した「ショップトーク 2019」 今年のみどころは?
RINAのFASHION x IT レポート from NYC Vol.107
1年のはじめ、米リテール業界にとって大きなカンファレンスが2つあります。1つは1月にNYで開催される全米小売業協会「リテールズ・ビッグショー(Retail’s Big Show)」。そしてもう1つは3月にラスベガスで開催される「ショップトーク(SHOPTALK)」です。
私もこの数年、「ショップトーク」に参加していたのですが、今年は事情があり、あいにく足を運ぶことができませんでした。その代わり、カンファレスに参加するリテーラーの皆さんやジャーナリストたちがSNSを通じてリアルタイムに発信された情報(#shoptalk2019)を食い入るように見ていました。その中から感じたリテールのトレンドや注目ポイントについてまとめてみました。
▼SHOPTALK 2019 概要
・開催日:2019年3月3・4・5日
・開催場所:米ラスベガス
・参加者:8,400人
CEOやCFOなどのC-レベル:21%
リテーラーやブランド:34%
テック系:28%
スタートアップ:45%
大手・老舗企業:55%
・スピーカー数:286人
・セッション数:100以上
・メディア・アナリスト参加:300以上
・企業によるリリース数:200社以上
「ノードストロム」が今秋NYにいよいよオープン
今年もシアトルを拠点とする米百貨店老舗ノードストロムの共同社長エリック・ノードストロム氏や、ギャップCEOのアート・ペック氏、ピンタレスト共同創設者&CEOベン・シルバーマン氏、タペストリーCEOヴィクター・ルイス氏など、大手リテーラーや注目ブランド、IT系Cレベル(役員職)によるキーノートが行われました。
キーノートの中で私が最も注目したのは、2019年秋にNYマンハッタンにウィメンズストアをオープンするというニュースでした。ノードストロムの歴史の中でも最大の投資だと伝えられているウィメンズストア。2018年春には、マンハッタンのコロンバスサークルにメンズストアがオープンし、そのMDのクオリティーの高さや気軽にオンラインオーダーができる利便性などが評価されています。それだけに、ウィメンズストアがオープンする際、どのようなサービスとマーチャンダイジングで他のデパートを刺激するのかが注目されます。
サービスを軸に顧客とのエンゲージメントに重点を置く店舗「ノードストロム ローカル (Nordstrom Local)」についても語られました。現在ロサンゼルスに3店舗出店している同業態からわかったことは、“商品の返品”“BOPIS(Buy Online Pick-up In Store=クリック&コレクト)”“お直し”というサービスが人気だということです。1番人気の“商品の返品”サービスに関しては、顧客にとって便利であるだけでなく、百貨店側にとっても、大きなメリットになっているそうです。また、通常の大型店だと店舗の奥に潜んでしまっているようなお直しサービスを前面に出すなど、地域密着型の特色を活かした様々なサービスを試験導入していくそうです。
店舗閉店、出店数の激減などのニュースが増えていくなか、ノードストロムは今後、オンライン(EC)とフィジカル(店舗)のバランスをどうとっていくのか。この質問に対してノードストロム氏は、以下の3点をあげました。
1)店舗を訪れた50%以上の顧客は、オンライン(EC)体験から始まっている。
2)店舗で買い物をする50%弱の顧客が、なんらかの買い物のサポートにモバイルを利用している。
3)オンラインでの買い物をする約35%の顧客は、店舗を訪れるところから始まっている。
これを聞く限り、どちらの存在も同等に重要であるということが分かります。ノードストロムは、お客のニーズに応えることの重要さを認識し、率先して行動に移しています。だからこそ、顧客とエンゲージする機会が増え、そこからニーズを学び、再び改善、新規サービスの提供を行っていけるのでしょう。また、チャレンジし、失敗もしているからこそ、何が成功するのか、どのような事に新たにチャレンジすべきなのが理解できるのだなと感じます。
注目されるスニーカー市場
Since launching 5 yrs ago, @greatsbrand has sold 300,000 pairs of shoes and has 155k unique customer. At soho (NYC) flagship sales per sq ft are $2000 (that better than Apple) #Shoptalk19 pic.twitter.com/orNCrJ7ccb
— Phil Wahba (@philwahba) March 3, 2019
スニーカー業界といえば2018年の終盤、英ファッションECサイトのファーフェッチが、レアなスニーカーやストリート系グッズを集めた委託販売店のスタジアムグッズ(Stadium Goods)を買収するというニュースがメディアを駆け巡りました。スニーカー市場の熱さを感じた方も多いことでしょう。
「ショップトーク」ではNYブルックリン発のD2Cスニーカーブランド「グレイツ(GREATS)」が今年もスピーカーとして参加しました。「グレイツ」は創設から5年ほど経ちますが、これまでに3万足のスニーカーを売り、15万5,000人のユニークカスタマーがいるとセッションの中で発表されました。NYソーホーにある店舗では、1平方フィート(約0.09㎡)当たりの売上高が2,000米ドル(約22万円)とのことです。
「ショップトーク」は、大手リテーラーやブランド、D2C、それらに関わるテック系企業の方々の最新の取り組みが学べることが利点ですが、同時に、参加者同士で話 (トーク)をする機会を作ったり、進化を目指すリテーラーたちがお互いにエンゲージできる場を作ることに注力している点もユニークなところです。
2020年はすでにラスベガスでの開催が決定。今年のカンファレンスが終わったばかりではありますが、日本と米国とのビジネスのスピードの違いなども感じ取れますので、是非一度参加を計画してみては?
R I N A 90年代の米国がネットバブルだった頃に米国にて日本向けのファッションポータル事業にコンサルタントとして関わる。
以降、「ファッション」と「インターネット」上で行われるビジネスを中心とした事業に15年ほど携わり、Web製作やディレクション、ビジネスのコンサルタントを行う。現在は米国のファッション事情やトレンド、ファッションとIT関連を中心とした執筆、今までの経験と知識を活かしビジネスサポートも行っている。
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