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2019.02.27
サブスクの先駆け「バーチボックス(BIRCHBOX)」 店舗を失ったブランドが進化し続ける理由
RINAのFASHION x IT レポート from NYC Vol.106
毎年ホリデーシーズンになると、多くのブランドからプロモーションメールが届くもの。昨年末も、恒例行事のようにその山のような数のメールを眺めていたのですが、その中に1通の気になるメールが紛れ込んでいました。米国ではサブスクリプションサービスが昔から存在していましたが、それを近年のビジネス・トレンドにまで押し上げた「バーチボックス(BIRCHBOX)」からのものでした。
「バーチボックス」はコスメやスキンケア、ヘアケアなどの商品サンプルを提供する会員制のサブスクリプションサービスとして、2010年に誕生しました。オンラインでは、サンプルで試した商品やブランドのフルサイズの商品が購入できるEコマースサイトを併せて運営しています。セレクトするのは大手ブランドのものではなく、インディーズブランドが中心。知らなかったブランドや商品を“ディスカバリー(発見)”して紹介するというコンセプトが多くの女性ユーザーの心を掴み、デジタルネイティブブランドの成功者としても注目を集めました。
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1) Birchboxの基本的な仕組み。まずはプロフィールを作成。ユーザーの基本情報や好みを入力すると、BIRCHBOXはそれをもとにそのユーザーに合うサンプルをキュレートしてくれる。 2) BIRCHBOXからプレステージブランドやニッチなブランドのサンプルを毎月5点届く。ユーザーはその中から何が自分に合うかを見つけ出す(BIRCHBOX公式サイトより)
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3) サンプルで試したお気に入りのフルサイズを購入することもできる。送料は無料。10ドル分の購入ごとに10ポイント(1ドル分)が貯まるロイヤリティープログラムも。 4) 2回目の発送時以降は、ユーザー自身がほしいサンプルを1つ選ぶこともできる。使用したサンプルのレビューを書き込むことで、ブランド側が好みを学習。ユーザーの好みにより近いサンプルが届くようになってくる(BIRCHBOX公式サイトより)
2014年にはニューヨークのソーホーに初の実店舗をオープン。店舗内では、サブスクリプションサービスで提供していたサンプルのフルサイズ商品を販売。店舗ができたことにより、それまでオンラインだけでつながっていたブランドと顧客が、リアルな世界でエンゲージする場が誕生したのです。
バーチボックスから届いたメールには、2018年の年末で店舗の賃貸契約が終了するのに伴い店舗を閉店し、新たなロケーションを探す旅に出るという内容でした。さっと読み取ってしまえば、店舗は上手くいっていなかったのかなと思ってしまいがちですが、賃貸契約の終了をきっかけに店舗を閉店したり、別の場所に引っ越すというのはニューヨークではよくある話なので、驚きはしませんでした。
むしろ私が驚いたのは、米ドラッグストアチェーンのウォルグリーンズ(Walgreens)とパートナーシップを組み、ウォルグリーンズ内にショップ・イン・ショップ形式で出店するというものでした。「Walgreens + Birchbox」と銘打ち、NYのソーホーを含め、年内にも店舗数を増やしていくようです。
「Walgreens + Birchbox」では、バーチボックスの店舗でも体験することができたBYOB(Build Your Own Birchbox=試したいサンプル商品を自分でピックアップしてセット購入できる)や、人気の商品、そしてウォルグリーンズ限定のサンプルセットなどをラインナップしていました。私が感じたのは、バーチボックスとしてのサービスが、絶えるどころか、売り場を変え、より生き生きしているようだということです。
路面店が閉店すると、どうしてもネガティブな印象を受けてしまいがちですが、店舗の持つ役割や求められるサービスがこれだけ変化している今、その意味も大きく変わろうとしているようです。フィジカルな場(=実店舗)において、顧客へのサービスの形を進化させていくバーチボックスには、今後もぜひ注目していきたいと感じています。
R I N A 90年代の米国がネットバブルだった頃に米国にて日本向けのファッションポータル事業にコンサルタントとして関わる。
以降、「ファッション」と「インターネット」上で行われるビジネスを中心とした事業に15年ほど携わり、Web製作やディレクション、ビジネスのコンサルタントを行う。現在は米国のファッション事情やトレンド、ファッションとIT関連を中心とした執筆、今までの経験と知識を活かしビジネスサポートも行っている。
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