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2019.02.08

ゲストはバーニーズ ニューヨーク メンズファッションディレクターの中箸充男さん 第19回SMART USENの「ジュルナルクボッチのファッショントークサロン」

 USEN(東京、田村公正社長)が運営する音楽情報アプリSMART USENで配信中の「ジュルナルクボッチのファッショントークサロン」。ウェブメディア「ジュルナルクボッチ」の編集長/杉野服飾大学特任教授の久保雅裕氏とフリーアナウンサーの石田紗英子氏が、ファッション業界で活躍するゲストを招き、普段はなかなか聞けない生の声をリスナーに届けるが、アパレルウェブでは、その模様をレポートとして一部紹介していく。第19回のゲストはバーニーズ ニューヨーク メンズファッションディレクター、中箸充男氏。

<前略・オープニングトーク、幼少期から大学までの話>

 

中箸:大学の時に、シカゴのイリノイ大学のアーバナ・シャンペーンというちょっと田舎なところにあるんですけど、そこに短期留学に行ったんですね。それでシカゴの街に行く機会がありまして、ぶらぶらしている時に、「ここなんだ!」ってかっこいいお店があったんですよ。ドアマンが居て、ちょうどその時、インラインスケートを持ちながら入ろうとしたんですけど止められちゃったんですよ。「あれ、なんだこの店」ってなって。翌日、古着屋さんで「ブルックス ブラザーズ」のシャツを買って、チノパンはいて入って行ってたら、かっこいい世界が待ってました。ドアマンが扉を開けてくれて、クラシックなものや、モードなものもあったりして、桁違いな美しさがあったんですよね。考えてみれば、シカゴの店もオープンしてちょうど3年か4年くらいの時ですごくきれいだったと思うので、より一層魅力的に感じまして。そこでこれがバーニーズ ニューヨークというお店なんだと知り、戻ってきてから「日本にもあるよ」ということを聞いて、「じゃあそこ受けてみようかな」って。働いている先輩がいたので、「教えてください」と直で聞いて。それで今に至るですね。

 

久保:ウィンドーはやっぱりサイモン・ドゥーナンがやっていたんですよね、やっぱり。ああいうウィンドー作る人ってなかなかいないからねぇ。それでドアマンには最初は断られて、2回目はシャツ着て行ったら入れてくれたと。

 

中箸:ぼろぼろのジーパンだったと思うので、今考えると「多分入れないだろうな」って。最初は「人種差別かな」って思ったんですけど、「ちょっと待てよ」と思い直して。

<中略・バーニーズ ジャパンのOB訪問から入社試験の話>

 

石田:実際バーニーズ ニューヨークに入ってみてどうでした?

 

中箸:僕のスターティングジョブは、セールスクラーク、販売員だったんですね。別にバイヤーには興味なかったんですよ。洋服をもうひたすら買いまくっていたんですけど、年収の半分以上は洋服買っていたくらいなんです。買いながらスケボーできて、「それ位でちょうどいいな」と思っていたんですけど、ひとり魅力的な先輩が居まして、その人がバイヤーだったんですね。そのバイヤーがメチャメチャかっこよくて、話もすごく面白いんですよ。例え話も含めて。その人に会ってから「この人と一緒に仕事してみたい」と思い、「どうやったらバイヤーになれますか?」と聞いたところ、「成績もトップになったらね」みたいな感じで、冗談めかして言われたんです。それで「やってやろう」と思って、お客様をたくさん作って、結果を残して、実際その人に「一緒に仕事したいんです」と話をしに行って、呼んでもらったという感じですね。

 

久保:でも販売の仕事は、それはそれで楽しかった?

 

中箸:楽しかったですね。やっぱりお客様にも可愛がっていただきましたし。

 

久保:年齢が上の人が当然多いでしょう?

 

中箸:すごく多いです。大体30、40歳の方々がメインターゲットのお客様になっていますので。

 

久保:新宿店ですか?

 

中箸:新宿店です。当時は新宿と横浜の2店舗しかなかったので。はじめの配属がスーツフロアだったんですけど、パンツのクリースがちょっと取れかかっていただけで、店頭に立たせてもらえなかったですし。

 

久保:(笑)厳しいね。

 

中箸:「お客様に失礼です」と。「そういう装いの人にバーニーズにいらっしゃるお客様をご案内して欲しくありません」と言われて。鉄扉という鉄の扉があるんですけど、「鉄扉を開けたらそこは舞台です」というのは散々言われまして。

 

久保:かっこいいね。

 

石田:素敵ですね!「舞台です」。エンターテイナーなんですね!毎日の装いも「衣装」ということですよね、販売員の皆様の。

 

中箸:そうですね。

 

石田:それはすべてご自身で購入されるんですか?

 

中箸:全部そうですね。

 

石田:へえ~。そうやって研鑽を積まれて、そしてバイヤーになられたという訳ですけども、バイヤーのお仕事はいかがでしたか?

 

<中略・バイヤーになってつらかったこと、ディレクターの仕事とは>

石田:この番組を聴いてらっしゃる若い方に向けて、これからファッション業界を目指す方ですね。中箸さんからメッセージを頂戴したいんですけれども。

 

中箸:そうですね。考えて留まっているならば自分から動いていった方がいいと思います。自分が動いて自分から情報を発信していけば変わる時代だと思うので、夢を持ってどんどんそういうことにチャレンジしていってほしいなと思いますね。例えばデザイナーになりたいと思って誰かの下に付いている、そういう下積み時代もすごく重要だと思うんですけれど、その下積み時代に何も生まれるものがないのであれば、自分からブランドを起こしてみてもいいかなと思いますし。バイヤーになりたいのであれば、自分から「なりたい」という意思を出して、バイヤーをやっている人に声が届くような環境にするとか、自分自身で動いてみた方がいいんじゃないかなと思いますね。

 

久保:実際ご自身が経験してきた事というのは、「自ら動く」ということなんですね。

 

中箸:そうですね。

 

久保:動く時にどっちに向かって歩くか、どっちに向かって行くか、何か自分の中であるんですか?羅針盤とか。

 

中箸:まず僕の場合は「バーニーズが好き」というところがあって、バーニーズのブランドステイトメントも含めて好きだったんですよね。「TASTE, LUXURY, HUMOR」という言葉なんですよ。この3つを守っていくということと、あとはもう一つ、バイイングのポリシーとして「SELECT, DON’T SETTLE」、「選べよ、固執するな。」という言葉がありまして、その言葉を頼りに歩いてきたっていうのが、自分自身が今ここまで来ているところなのかなと思いますね。その言葉が無ければ迷っていたかもしれないですし。例えば、そのとき売れていたとしてもそのシーズン良くなかった。それで「うーんでもやっぱり続けといたらいいかな」と思って続けるんじゃなくて、「他に新しいものがあって、いいものがあるんだったら、そっちもやればいいじゃん」というのがバイイングポリシーなので。僕が尊敬していた先輩もそういう事を忠実にやっていたと思うので、そういう意味で惹かれていったのかな。その言葉があって、その言葉に皆シンパシーを感じて動いていて。そういう人が魅力的に見えたというのがあるのかもしれないですね。

 

石田:「常に柔軟に広い視野を持って」ということですかね。

 

中箸:そうかもしれないですね。

 

久保:やっぱり数字、数字という世界もあるじゃないですか。数字に縛られて、去年の実績などいろんなことに縛られて。その呪縛が日本には蔓延してるような気がして。もっと新しいもの入れていくというか、チャレンジするということは今、大切な事ですよね。

 

中箸:仰る通りだと思います。

 

久保:だからその「固執するな」というのは、こだわることも大切なのだけど、一方で拘泥しちゃうことで、新しいチャンスを見失ったり、逃してるというのもあるんでしょうね。だから革新性という事が、バーニーズの基本なんでしょうね。それは生き方も含めて「若い子にどんどんやってみろよ」と。

 

中箸:「ジョルジオ アルマーニ」をアメリカで紹介したのは、バーニーズが一番初めですし、そういう意味では「新しいものを見つけて紹介していく」というのが我々のアイデンティティーになっているのかなとは思いますね。

 

久保:じゃあ実際に展示会などを回っていて「こんなのダメだわ」と思うようなものでも、何かしらアドバイスできる事っていうのはありますかね?

 

中箸:そうですね。はい。

 

久保:長い事やっていると、そういう役回りになってきますよね。ぜひとも日本の若いクリエイターを、これからどんどん育てて下さい。

 

<後略・クロージングトーク>

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