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2019.01.09
アマゾンと提携して集客アップ 米百貨店の苦戦を尻目に躍進「コールズ」の戦略
米百貨店「コールズ(KOHL’S)」の好調ぶりが現在話題になっています。アパレルでは、リーバイスやナイキ、アデイダス、ディッキーズ、アンダーアーマーなどのナショナルブランドを中心に取り揃え、ファッション雑貨やコスメ、寝具、キッチン雑貨なども販売。昨年11月に発表された第3四半期では既存店売り上げ2.5%増を達成しました。競合のメイシーズやJCペニー、昨年破綻したシアーズなど、いずれも苦戦が続いているなか、「コールズ」の戦略が注目されています。好調の背景には、昨年スタートしたアマゾンとの提携がありますが、その他のサービスも含め、売り上げを拡大している理由を探ってみました。
立地・品揃え・オペレーションで差をつける
ナショナルブランドを分かりやすく陳列する店内
コールズでは、メーカーから直接仕入れている商品とPBを中心に、ロープライス商品の提供を実現しています。また、ナショナルブランドが充実していることで、競合店との差別化ができています。
集客力が高まっている理由の1つに、米国のミドルクラス(中間層)の存在があると伝えられています。彼らは今まで、競合の百貨店で購入していましたが、TJマックスやターゲットなどのディスカウンターに流れている傾向があり、コールズもその影響を受けているのです。また、メイシーズやJCペニーが通常のショッピングモールの核店舗の1つして運営されているのに対し、全米にあるコールズ約1,100店舗のほとんどが、郊外のストリップモール、いわゆるロードサイドの小規模モール内に展開されています。忙しい消費者が気軽に立ち寄れる立地であることも大きな特徴といえます。
アマゾンとのパートナーシップはホームラン!
昨年のホリデー商戦は「送料・返品無料」というサービスが、購入の心理的ハードルを下げ、売上増という結果につながりました。しかしUPSによると、例年は年明けに集中する返品が、昨年は、年内の12月19日にピークを迎えるという異例の前倒しが見られ、150万個の商品が返品されたそうです。
ただし、返品無料であっても、消費者にとって、営業時間内に商品を郵便局に持ち込むのは少し面倒なもの。コールズが、アマゾンとの提携によって2017年の10月にスタートした「返品用カウンター」は現在、シカゴやロサンゼルズ、ミルウォーキーなど100店舗にまで拡大しています。ゴードン・ハスケット社の調査によると、「返品カウンター」導入後の集客の変化は明確でした。返品だけに留まらず、コールズでのショッピングや帰宅後のオンライン購入へとつながり、新規客の獲得に成功しているのです。消費者に便利なロードサイドモールで運営しているコールズであれば、返品したい商品を週末の買い物ついでや仕事帰りに持ち込むことが可能です。
アマゾンは、全米に1,100店舗あるコールズのロケーションの利便性を利用。一方、コールズは返品の手間を請け負うことで、返品カウンターにやってきたお客によるついで買いによって、売り上げ&集客アップに成功しているのです。コールズ店内におけるアマゾンのデバイス販売も集客につながっているようです。
デジタルタグ導入 コストとミスを最小限に抑える
割引価格が調整しやすいデジタルタグは全商品に設置
コールズでは、LCDデジタル表示のプライスタグを使用しており、商品の割引率や正規価格から割引後の価格一目で分かるようになっています。スクリーン、左上のアルファベットだけでも、商品のステータスがわかります。デジタルのプライスタグだと簡単に価格変更ができるため、ローコストオペレーションにもつながっているのです。たとえ店員の数が抑えられていても、価格に関する認識不足や混乱が少なくて済むのです。
タグ名 | 正式名称 | 意味 |
BB | Bonus Buy | ボーナス価格 |
BGH | BuyOne Get One Half Off | 1個買うと2個目が半額 |
PP | Product Placement | 据え置きセール価格 |
S | Sale | 1~2週間の期間セール |
サイズがなくても大丈夫!デジタル・キオスク
訪問した店舗では、靴売り場の前に置いてありましたが、サイズ切れや、在庫切れしやすい商品は、オンラインで注文ができ、自宅に無料配達するサービスも行っています。また、商品タグのバーコードをスキャンすると、オンライン価格との比較ができるようになっています。
使わないと損 中毒になるさまざまな特典
顧客と密着に繋がるために、アプリを利用したリワードやサービスを提供するストアが増加しています。コールズでは、以前から10ドル程度のキャッシュクーポンの郵送を行っていましたが、どのような特典に人気あるのか調べてみました。
特典名 | 特典の内容 |
コールズ チャージカード | 初回の購入が25%オフの他、年に12回の特典 |
Yes2Youリワードプログラム | 1ドルにつき1ポイント。100ポイントで5ドルの報酬 |
コールズ・キャッシュ | 50ドル使うと10~15ドル報酬。特別なイベント時に、ストア及びオンラインで使用可能 |
年齢割引 | 55歳以上の人は水曜日15%オフ(ストアのみ) |
混合割引 | ディスカウントセール商品購入時、その他の特典と組み合わせて使用可能 |
オンライン・クーポン | オンライン及びストアで使用可能 |
コールズのアプリ | アプリのダウンロードで、Yes2Youで50ポイント |
テキスト”SAVE07”または “SAVE15” |
56457にSAVE07とテキストメッセージを送ると15% オフとなる |
ピックアップ・ロッカー | オンラインで購入した商品をセルフピックアップするロッカーを配置できる |
プライスマッチ | 購入した商品が2週間以内に値下がりした場合、差額の返金が可能 |
独「アルディ」を試験導入 新規客の取り込みにトライ
昨年3月から、急成長中のドイツのスーパーマーケットチェーン「アルディ(ALDI)を試験的に導入しています。アルディは、“ノーフリル(飾りの無い)ストア”として知られ、わずか数名の店員を配置。仕入れた際の箱をそのまま使用したり、シンプルな内装で運営する、徹底的なローコストオペレーションで、低価格商品を提供している食品スーパーです。米国では1,000店舗を超えていますが、最近は、若年層を意識し、シンプルな内装をスタイリッシュに改装している店舗もあります。
店舗数こそ追いつかないものの、低価格を売りにしているため、ウォルマートとも頻繁に比較されています。ターゲットなど食品を扱うディカウンターの事例をベースにしながらも、コールズの客層と相性のいいアルディとの提携で集客アップを図っています。
変化するものだけが生き延びられる――スーパーマーケットやジムを導入するショッピングモール、あるいはJクルーやアンソロポロジーと提携するノードストロームなど、異業種の導入や協業は、今後ますますトレンドとなりそうです。
マックスリー・コーポレーション
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