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2015.07.24
熱気を帯びたパリ・キッズファッションウイーク
パリの子供服トレードショービジネスが喧しい。18回目を迎える子供服マタニティーの総合展示会「playtime(プレイタイム)」が7月4~6日、パリ市東部郊外、ヴァンセンヌの森にあるパルク・フローラル見本市会場で開かれた。日本からは6社が出展。一方2回目となる新子供服展「kid(キッド)」も7月5~7日、市内のバスチーユ・デザインセンターにて開かれ、日本から1社が出展した。この他、パレロワイヤル近くで日本のアパレルメーカーのサンラリーグループが独自に展示会を開催したのもトピックスだ。加熱するパリ・キッズファッションウイークをレポートする。
20年程前、円高によるインポートブームだった日本の子供服マーケットには、欧州子供服展で買い付けられた商品が数多く並び、欧州各国政府主導の展示会も東京で開かれるほど活況を呈していた。この時期、イタリア・フィレンツェで開催される老舗の見本市「ピッティ・ビンボ」とパリ・ポルト・ド・ベルサイユ見本市会場で開かれていた「モード・アンファンチーヌ」が欧州の二大子供服見本市の位置を占めていたが、各国でもローカルな展示会が開かれ、多くの日本人バイヤーが訪れていた。スペイン・バレンシアの「FIMI(フィミ)」、英国・バーミンガムの「Premier KIDS Birmingham(プレミアキッズ・バーミンガム)」、また大人服も含めての展示会だがオランダ・アムステルダムの「MODE FABRIEK(モードファブリーク)」にも訪れるバイヤーが居た。しかし、現在は老舗で比較的トラディショナルなブランドを揃えるピッティとクリエーター系ブランドからスタートし、490ブランドを擁するまでに成長したプレイタイムの2大見本市が群を抜いている。この他英国・ロンドンの「babble(バブル)」、バーミンガムのプレミアキッズ、開催地をマドリードに移転したフィミなどが子供服展として存在している。
さて話は現在のパリに戻り、着実にその地歩を固めてきたプレイタイムだったが、今年1月、新たな展示会キッドが登場し、波乱含みとなっていた。 プレイタイムの今回の出展ブランド数は、9%増の490ブランド。会場を別棟に増やし、展示面積を拡大して収容したが、まだウェイティングがあるという。日本からの出展は頭打ちだが、着実に実績を上げてきている。
ARCH&LINE(アーチ&ライン)
前回の15-16年秋冬に初出展した「ARCH&LINE(アーチ&ライン)」は、初回からいきなり15ヶ国30件以上のオーダーを得て大成功だったが、今回「果たして春夏は受け入れられるか」という懸念を持ちながら参加した。しかし、その点は杞憂に終わり、引き続き欧州各国や中東諸国、ロシア、ウクライナ、トルコ、カナダ、米国などから受注し、特にNYブルックリンには3店舗の卸先ができた。アフリカのコンゴなど新規が10件近く増え、前回以上の件数を獲得した模様だ。大人目線の男児服とそれに対応する女児服のラインが万遍なく評価されたものの、やはりTシャツ中心の発注で、春を飛ばす傾向が強いという感想を持ったそうだ。また事前に印刷しておいたルックブックのコーディネート通りに売れていることも強みの一つのようだ。
familiar(ファミリア)
「familiar(ファミリア)」は3回目の出展で、今回は同社の原点ともいえる綿とシルクそれぞれ100%の肌着に絞ってプレゼンテーションした。また日本的な打ち出しとして藤、菜の花、抹茶、桜、山葡萄をイメージした色を前面に据え、反応を見ることにしたという。将来のオンリーショップ開設に向けてのマーケティングとして位置付けつつ、同社が得意とする日本的サービスで勝負していきたいと抱負を語っていた。
Betta(ベッタ)
哺乳瓶で2回目の出展となったズームティーの「Betta(ベッタ)」は、前回、自社製品の考え方や競合、価格が通じるかなどをリサーチする視点から臨んだが、今回はフランス、ドイツ、北欧から反応が得られ、前回以上のコンタクトが取れた模様だ。
tago(タゴ)
同じく2回目の出展となった「tago(タゴ)」は、2015年春夏にスタートしたばかりの女児ブランドで、前回はニットのプリントドレスなどが注目を浴びたが、今回はサーキュラー部分にメキシコの街並みをプリントして大きく広がるドレスやスカートが注目された。FOBで3万2,000円にもなるので、こういった高価格帯の商品を販売できる店を見つけていきたいとしている。
naomi ito(ナオミ・イトウ)
ここ数回は春夏展のみの出展に絞っているフィセルの「naomi ito(ナオミ・イトウ)」は、テキスタイルデザイナーの作品から商品化している。クッション入りおくるみなど機能性のある商品が求められているとのことで、ドイツやベルギーからの反応が良いという。
Reicarino∞bon(レイカリーノ・ボン)
オーガニックコットンの布ナプキン「REMEDY GARDEN(レメディガーデン)」からスタートし、子供服ブランド「Reicarino∞bon(レイカリーノ・ボン)」で初出展した天祐コーポレーションは、熊本にオーガニックコットンの自社畑とガラ紡績の自社工場を持ち、草木染めや藍染めでナチュラルな商品を展開している。肩と脇のスナップボタンで80~120センチに対応できるロングタイムワンピース・チュニックや和のスタイルを採り入れた浴衣タイプのトップスなどに反応があり、ポーランド、フランスなどから引き合いが来ているそうだ。
来場者からは、もっと日本のブランドを見たいという要望が数多く寄せられている。
キッド
一方キッドには、前回より2ブランド多い38ブランドが出展し、日本からはノーザンスカイの男児服オリジナルブランド「EAST AND HIGHLANDERS(イースト・アンド・ハイランダーズ)」が出展した。既にピッティ・ビンボやNYのチルドレンズクラブなどに出展実績があったが、新展示会の雰囲気が良さそうなので、出展したそうだ。
EAST AND HIGHLANDERS(イースト・アンド・ハイランダーズ)
主催者のAnais Sidali(アナイス・シダリ)さんは、コレットやキツネなどでキュレーションを手掛けてきた人物で、「トレードショーに何かが足りない」と感じ、「大人のファッションブランドとしては有名だが、子供服としては無名なブランドたちに大きなポテンシャルがある」とスタートさせた。今回は「HUNTER(ハンター)」「FRED PERRY(フレッドペリー)」「BARBOUR(バブアー)」「VANS(ヴァンズ)」「MAD NORGAARD(マッド・ノルガード)」「IPANEMA(イパネマ)」「SPRING COURT(スプリングコート)」など著名ブランドも出展していた。
サンラリーグループ
サンラリーグループのワ・ミニョンとビーボックスが、経済産業省のジャパンブランドプロデュース事業の採択プロジェクトとして、広島デニムや今治タオルなど日本各地の伝統技術をもとに製品化された子供服を複数ブランド集め、パレロワイヤル近くで展示会を開催した。参加ブランドは「WA mignon(ワ・ミニョン)」「kinokoko(キノココ)」「Kuranbon(クランボン)」「tete a tete French(テータテート・フレンチ)」「TETE A TETE Narural & Tradetional(テータテート・ナチュラル&トラディショナル)」。B2Cと間違えて入ってきたフランス人が購入を希望するなど小売市場のテストマーケティングも兼ねた反応も取れたそうだ。
・プレイタイム
http://www.playtimeparis.com
・キッド
http://www.kid-shows.com
久保 雅裕(くぼ・まさひろ)
ファッションジャーナリスト・ファッションビジネスコンサルタント。繊研新聞社に22年間在籍。『senken h』を立ち上げ、アッシュ編集室長・パリ支局長を務めるとともに、子供服団体の事務局長、IFF・プラグインなど展示会事業も担当し、2012年に退社。 大手セレクトショップのマーケティングディレクターを経て、2013年からウェブメディア『Journal Cubocci』を運営。複数のメディアに執筆・寄稿している。杉野服飾大学特任准教授の傍ら、コンサルティングや講演活動を行っている。また別会社で、パリに出展するブランドのサポートや日本ブランドの合同ポップアップストア、国内合同展の企画なども行い、日本のクリエーター支援をライフワークとして活動している。
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