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2014.03.12

避けて通れぬ米国ぽっちゃりさん市場

フォーエバー21のホームページより、プラスサイズの商品

 米国のユニクロは現在17 店舗になり、年間に20-30店舗の出店を控えています。“ MADE FOR ALL” をコンセプトに持つ企業として、目の前に立ちはだかる大きな壁の一つに、サイズの問題があります。先日、メデイアへのインタビューで、アメリカには様々な人種が存在する為、特に女性サイズの3Dフィット研究を早急にすすめ、対処して行く事が伝えられていましたが、実は米国ファッション業界に取っては、非常に根の深い課題。NPD グループの調査では、2013 年11月締めの、プラスサイズ女性市場の売り上げは、$16.2B(162億ドル)前年比7.2%増。コーネル大学の研究でも、米国の婦人アパレルの総合売り上げは、標準女性が17%に対して、プラスサイズ女性は28%をしめる購買力があるそう。これだけのビッグ市場を見過ごす訳には行かないと、小売店にも変化が現れています。ビッグサイズを作らず消費者から非難を受ける企業の話題も耳にする中、アメリカのプラスサイズ市場を取りあげました。

米国女性の65%がサイズ14 以上

Calorie Lab社のHPより、州別のBMI値マップ

 1980年当時の女性はサイズ(8)が平均だったのですが、現在はなんと(14)。日本のサイズでいう、(XL)若しくは(17)が全米平均! 米国のアパレル市場では、(14~34)が『プラスサイズ』に分類され、人口の65%を占めています。Calorie Lab Inc社の調査による、州別の平均BMI 値を示した表によると、最もスリムな州は連続1位のコロラド。 逆に最も太っている州は、こちらも連続一位のミシシッピー。 BMI 値が30 以上になると病的肥満に分類され2012 年の統計では米国人口の約4%と言われています。 ちなみに日本のBMI 平均値は22.5 で世界でも最もスリムクラス、米国は27。メデイアで取り挙げられるのは、都心のトレンデイでスリムな女性の話題ばかりなので、日頃は見えてきませんが、全米平均となると驚きの事実が浮かび上がります。今やサイズ(14)は、プラスサイズではなく、標準サイズに分類されなければならず、そし女性人口の半分以上が(14)以上なのです。

小売チェーンでは平均サイズ商品が取るに足らない

米国小売店で扱っている、サイズ展開チャート

 こうなると州によって異なるサイズ展開が必要になってきますが、小売りチェーンがどういうサイズ展開で取り組んでいるのか、日に日に変化はしていますが、ニューヨーク州とニュージャージ州での状況を参考にご覧下さい。プラスサイズ市場に取り組んでいるのは、ギャップ、オールドネイビー、H&M。 その他はオンラインの方が幅広く取り扱っていますが、店頭では、サイズ(12)(14)以上は取り扱っていません。ルルレモンに至っては、サイズ(12)以上は、セールスフロアには出さず隠しているとか。ユニクロは、オンラインでは、トップス(XS-XL)ジーンズ(23-36)パンツ(0-12)ダウンジャケット(XS-2XL)とアイテムによりプラスサイズに対応。オンラインショップの『ネッタポルテ』を見てみると、サイズ(6)を検索するとが2000 点以上のチョイスがあるのに対し、(12)は200点足らず。 ボリュームを持たなければならないサイズにずれが生じています。

小売チェーンは何故プラスサイズを展開しないのか

●大きな女性向けのフィッテイングは複雑で、それぞれのボデイラインをベースにした3D フィットの専門的な技術を要す。

●倍以上のファブリックを要し、縫製、カッテイング、セールスマン、モデル等全てにおいて専門的な知識を持った別のプロダクションチームを必要とする為、標準サイズと同じ価格での販売が難しく、コストパフォーマンスが悪い。

●現在の米国服飾専門学校では、プラスサイズ向けのデザイン及びパターンは教えていない。

●スノビッシュなファッション業界において、プラスサイズを専門職にしたいデザイナー、パタンナーが欠落している。

●ブランドイメージを守る為、扱わない。 扱ったとしても宣伝広告は出さない。

●大きなサイズをハンガーデイスプレイすると見た目が悪い。

これだけでは無いと思いますが、ファッション業界ならではの事情もあるようです。

プラスサイズ女性のショッピング傾向

 オンラインショップのModCloth 社が米国の15-65 歳の様々なサイズの女性5000人以上を対象にした調査によると、サイズ16を着用している女性は、サイズ0と2を合わせたよりも多く、50%の女性が標準サイズとプラスサイズの両方を購入、57%の女性が洋服により、サイズ16 以上を購入している。 更に、サイズ16 以上の消費者は、標準サイズの女性の2倍以上の、オンラインショッピングをしている。店頭、オンライン共にセレクションは悲惨なほど、スタイリッシュではないという結果も。10%にも満たない、プラスサイズの売り場で、気に入ったデザインを探し、素材に触れ、試着をして購入する当たり前の事が、非常に困難な状況なのです。 続々増えている、有名ぽっちゃりブロガーさんをのぞいてみたら、売り場を店員さんに聞いた所、最も目立たないトイレの前だったと嘆いていたり、トレンドを取り入れたデザインが少なく、コストのかかる綿素材よりも、ポリエステル素材が多いそうで、誰よりも汗をかくぽっちゃりさんには非常に辛いのだとか。ウエブで購入できても問題はいろいろありそうです。オンラインからオフラインヘの誘導に注視されていますが、誰よりも、実店舗を必要としているのは、ぽっちゃりさんかもしれません。

ModCloth のプラスサイズ急成長が示すこと

ModCloth-モドクロスのホームページより

 2013 年のファストカンパニーが選出する最も革新的な会社にも選出された、ヴィンテージ・インスパイアーのインディーデザイナー700 以上を扱うオンラインショップ。登録者の投票数によって、商品化される『Be The Buyer』プログラムで一躍有名に。前述の調査を元に、米国女性の60-70%を占め、確実に需要のある『プラスサイズ』を昨年6月に開始。FB では106 万人以上、ピンタレストでは250 万以上のフォロワーがいる人気サイトですから、ぽっちゃりさん業界では革命の如く話題となっています。自社でプラスサイズの専門家を雇い、PB 開発の他、現在、100 以上のブランドのプラスサイズ商品を販売。売り上げはあっという間に4倍増、全体の売り上げの8%を占める程に成長しています。(参考)2012 年の売り上げは約1億ドル。誰も好んで手を付けなかった分野ですが、ファッションに飢えている、ぽっちゃりレデイース向けのスーパーキュートなオンラインショップの挑戦は、結果として成長を遂げており、煮え切らないファッション業界に一石を投じることなるかもしれません。

ASOS の『CURVE & PLUS SIZE』も好調!

ASOS-エーソスのホームページより

 英国ベースのオンラインショップ『エーソス』でも、3年前からプラスサイズ向けの商品を販売。米国サイズの(14-24)のアウター、ドレス、ジーンズ、水着等、トレンドを取り入れた低価格帯の若い世代向けのデザインを販売しており、サイズ(16)の女性モデルの着用写真やコーデイネート例が効果的で、消費者には安心感を与えている。 売り上げは伏せられていますが、非常に好調で、『エーソス』の中でも成長率はトップクラス。ビジネスとして不可欠なカタゴリーになっており、ストッキングやタイツ、ジュエリー等、新しいアイテムが続々加わり更に拡大しています。

米国を制するに避けては通れぬ市場

ノードストローム:ヤングレデイースの売り場が、プラスサイズに変身。↑ ロケーションはとても良いのですが、もう少し華のあるVMDが欲しいですね。。。

 プラスサイズ専門の婦人服チェーンでは『レーン・ブライアント-700 店舗』や『マリナ・リナルデイ-300 店舗』等が有名ですが一般のストアでは一番ボリュームの必要なサイズ商品、特にファッション性のある物はまだまだ不足。現在の利益やイメージ重視と、完全にプラスサイズを扱わないというのも一つの選択肢。しかし、米国女性の65%というシェアは大きく、ファッション業界にとって無視できないマーケットになりつつあります。ヒスパニック系の人口が増えている事が関係しているかもしれません。

 

 米国で最も大きなブライダルチェーン『デイビッド・ブライダル』では、サイズ(6)のマネキンを使用してきましたが、昨年末からプラスサイズマネキンを追加して対応。 42%の女性がマネキンのデイスプレイで判断しているそうで、あまりにも自身のサイズとかけ離れたコーデを見ても購買意欲がわかないのは当然といえます。メイシーズやノードストロームでもプラスサイズマネキンを投入していますし、オンラインのみの販売でも、プラスサイズモデルを使用する企業が増えつつあります。

 

 デザイナーの中では、マイケルコース、ダナキャラン、トミーヒルフィガー、ダナバックマン等がオンラインやデパート向けにプラスサイズ対応していますが宣伝はせず。米国出店に力を入れる『マンゴー』は、ザラへの対抗策として今年前半にプラスサイズを始める予定、ノードスロームもコーナーを拡大して目立つ売り場にと、じわじわとこの市場への対応を行っている様です。米国小売店では、現在の所、オンラインでの販売が多い様ですが、売り場に登場するのも時間の問題かもしれません。 


 

 

マックスリー・コーポレーション
MAXRE Corporation

 

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