PICK UP
2014.04.09
年商2兆7400 億円!トレジャーハンテイングを商売として確立してしまった『T.J.マックス』
リーマンショックからの経済回復の流れがあるとは言え、庶民レベルでは実感のない話しだとは、NYの新市長デブラジオ氏の言葉。 ニューヨークでは、冬の間、地下鉄で過ごすホームレスが問題となっていましたが、昨年一年間で13%増加、およそ6万5千人がシェルターや歩道で生活。一般の人々も生活費の高騰により、NY市民の46%が貧困、またはそれに近い状態だと伝えられています。
“ヴァリュー”で消費者を惹き付けるオフプライス店
少しでも価値のあるショッピングが望まれる中、ファッション業界を脅かす存在が、オフプライス・リテイラー。一般のアウトレットがブランド毎に独立した店を構えているのに対し、複数のブランド・アイテムを一つの店舗の中で販売しているのがオフプライス店。ノードストロームの『RACK』や、サックスフィフスの『OFF5TH』等もオフプライス店に属します。日本にはない業態ですが、アウトレットの様にわざわざ車で遠方に行く必要がなく、気軽に購入、返品もイージーなネイバーフッドアウトレット。米国オフプライス店の中では最大手で、寡占化が進んでいるT.J.マックスグループがこの業態を確立したといっても過言ではなく、過去34年間で売り上げがマイナスになったのはたったの一度だけ。レジ待ちの長い列は異常とも思えますが、向かう所敵なし状態で売れまくっているT.J.マックスグループを取り上げました。
2013 年の年商は274億ドル!(約2兆7400 億円)
T.J.マックスグループは、複数の姉妹店で構成されており、カナダ及びヨーロッパにも進出。 今年2月時点、グループ全体の店舗数は3,219店舗、米国だけでも2,475店舗。海外店もそれぞれ堅調に伸びており、目覚ましい勢いで出店しています。『コンセプト別の店舗推移』の中で『A.J.Wright』150店舗は2010年に閉鎖しほとんどが同社の姉妹店に改装されています。また、2012年に、デイスカウント・オンラインショップ『Sierra Trading Post』を$200M (2億ドル)で買収、新たな仕入れルートを得るとともに、ディストリビューションセンター、フォトスタジオ、コールセ ンターを手中に。そして、今年2月1日締め、52週の売り上げは、$27.4ビリオン(2兆7400億円)、既存店ベースで3%増という快挙!イオンには及ばないものの、ユニクロの約3倍の売り上げというと実感しやすいでしょうか。 売り上げが伸びれば株も上がるで、昨年の一株当たりの利益は24%アップ。
NOTE: 決算書では姉妹店『T.J.マックス』と『マーシャルズ』はほとんど同じ形態なので『MARMAXX』と統合。出店には、ビッグスペースが必要なため、家賃の安い郊外店が多く、内装にも費用がかからないとはいえ、年間に100店舗以上の出店をしつつ、この売り上げはすごい!
“トレジャーハンティング”商法
平均売り場面積、800~900坪の費用をかけないシンプルな内装。サイズ別にラックにかけられたアパレル商品(レディース、メンズ、キッズ)が大半をしめ、その周りに靴、鞄、サングラス、ビューティプロダクト、フィットネス用品、 ホーム雑貨などの商品がぎっしり! 洋服と一緒にフライパンや鍋まで同じフロアで販売されているのですから、デパ ートやブティックで買い物をする人々には、とてつもなくローワーエンドな店だと感じるかもしれません。それでも、 デパートなどで販売している有名ブランドの商品が、40~60%オフで販売されているのです。値札には、正規販売価格がでており、どのくらい安くなっているかが一目瞭然。時には、TUMI の定価5000 ドルのイタリア製、マティーニバーセットが売られていたりするので、年収10万ドル以上の女性の30%がT.J.マックスで買い物している。価格に上下はあれど、安くて良い品を見つけ出す事に満足感を得る、トレジャーハンティング商法は、客を何度も店へと導き、景気に左右される事なく、年間を通して好調なビジネスを持続させています。
リピーターが続出するビジネスオペレーション
原動力である商品の仕入れ、そしてオペレーションには、人気を持続させる秘策がありました。
デパートや有名ブランドと問題にならないのか?
3000店舗以上あり、あれだけの商品が投入されている状況を考えると、アウトレット同様、店舗用の商品の作り込みが行われているのではないかと推測しますが…。デパートでは、商品を売ることだけが目的ではなく、ショッピング体験を提供しているため、客層が異なる。ファッションブランドは、新しい商品を販売しなければならないため、売りきれない商品を請け負うオフプライス店とは、共存する関係。偽物商品とは異なり、在庫を販売するオフプライスという業態が確立しているため、それほどのダメージは受けないようです。
女性客を魅了する姉妹店『ホームグッズ』がすごい!
実は今回のコラムでクローズアップしたかったのは、こちらの店舗。姉妹店の中でも既存店ベースで7%増と突出した成長率の『ホームグッズ』は、家庭雑貨に特化したディスカウント店。 とにかく集客力がすごい! メインの客層は 主婦やOLさんなどの女性客で、いつも混んでおり、一旦入ると1時間はあっという間。週末はカップルでの来店が多く、 男性陣が売り物のソファーでスマホ片手に呆れながら待っている様子は、一時期のアンソロポロジーに似ている。姉妹店同様、週に3~5回の入荷があり、行く度に新商品を発見する為、飽きることがなくリピーターが多い。シーズン毎のマーケティングも行われており、年間を通しての集客が抜群に安定しています。
ホリデイシーズンのギフトパッケージもばらして販売しており、高級オリーブオイルやヴィネガーなどの調味料、パスタやクッキー、バスソルトやソープなどが一年中販売されています。
唯一無二のニッチ市場
低価格の家庭用品ではイケアがあり家具の型数は圧倒的。しかし米国には38店舗しかなく、イケアクオリティだ。 『HOMEGOODS』は今年2月時点で450店舗、さらなる出店を予定しており、多種多様なホーム雑貨に特化したアウトレットとしては唯一無二。リーデルのワイングラスや、クイジナートのキッチングッズ、イタリア製のフライパンなど クオリテイの高い商品が、40~50%で販売されている店は他にはありません。
サブプライム問題で住宅市場が低迷してからというもの、インテリアショップの売り上げは低迷してきましたが、トレ ジャー・ハンティングの要素を取り入れた『ホームグッズ』の勢いは衰えず。良いものを安く購入しているという満足感、世界各国出の仕入れソースで、一般の店舗では見つけられない商品に出会う楽しさ、実用性があり、生活が豊かになるものへの投資は人々を惹き付けるのだと思います。
『T.J.マックス』は昨年、Eコマースをスタート。一般客はもちろんのこと、高級ブランドを求める客層へも、ストレスフリーなショッピングを提供、商品が劣化することなく、必要としている客層にダイレクトに販売できる有効なツール。既存の客層よりも収入の高い客層の獲得に繋がっています。
T.J.マックスのEコマースサイト。ハイブランドを取り扱う「The Runway」のセクションでは、定価2059ドルのバレンシアガのバッグが、1599ドルで販売されている。
ここ数年で、いくつもの競合店が閉鎖を強いられた様に、仕入れ力が物を言うこの業態がいくつも共存できるとは思えませんが、日本には存在しない、驚異的な成長を遂げている企業がここ米国には存在します。 消費者需要が増加している状況から、米国のデパートが運営するオフプライス部門の売り上げも同じく増加、急ピッチで出店を進めています。
【参考サイト】
■T.J.マックス http://tjmaxx.tjx.com
(現在、米国のみの郵送が可能なため 日本からのアクセスはできません)
■マーシャルズ http://www.marshallsonline.com
■ホームグッズ http://www.homegoods.com
マックスリー・コーポレーション
マックスリー・コーポレーション ( CHIZU NISHIDA ) ■ビジネス関連のお問い合わせ:小林まで
【公式サイト】http://www.maxrecorp.com/ |