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2014.06.11

H&Mタイムズスクエア店に見るマネキン力と売り場の変化

 トラフィックの多いロケーションに出店する事は、家賃が高くても最終的には理にかなう事になります。 先日のWWD誌の記事に出ていた、5番街54-55丁目のプロパテイを持つ家主のコメントによると、アバクロは通常のモール店の売り上げは年間、$4-6M(400-600万ドル)に対し、5番街店は、$190M (1億9000万ドル)と桁違いの売り上げ!実際はこれほど、多くないのではと想像しますが、今年後半には、ラルフロ ーレンやトップショップ等が5番街にオープン準備をしており、皆、アップスケールな内装に経費をかけるのも理解でき、マンハッタンのハイトラフィックエリアの出店は比類無いものである事が分かります。

“マネキン力”による販売促進

 H&Mも昨年11 月、タイムズスクエアにメガストアをオープン、シアター街の立地に合わせたド派手な外装。巨大スクリーンも、LEDとは言え電力を使いすぎるのか、度々、エスカレーターが止まってしまうのが困るのですが、場所柄、深夜1時まで営業し、大変な混雑!観光地ならではのエンターテイメント性に加え、じーっと惹き付けられて見てしまうのが、“マネキン”今までのマネキンと言えば、顔の無いもの、上半身だけのもの、倒れそうな角度で立っていたり、洋服は着ていてもマネキンをまじまじと見る事などなかったのですが、H&M のマネキンはリアル感が異なる。洋服を着る人物にマッチしたリアルな凝ったメイク、ネイル、ヘアースタイル、タトウー、アクセサリーも手抜きなくばっちり。今にも動き出しそうな、人物のライフスタイルが感じ取れる“目力”ならぬ、ど迫力の“マネキン力” 洋服だけ陳列している売り場に比べて、明らかに臨場感があります。

 

 このクラスのマネキンは、タイムズスクエア以外の店舗にも置いていますが、1 体につき、800-900 ドルする為、ハイトラフィックエリアの店舗に集中して使用している様です。

こちらのマネキンは、クロップトップにショートパンツ、セパレートのセットアップのトレンドアイテムを着たホワイトガールマネキン。ヘアスタイルやポーズにも動きを感じます。

こちらは、ヘアーにパープルのカラーチョークを塗り、トレンドのソフトパンツやマキシドレス、 ヘッドフォンを付けたギャルマネキン。洋服だけ陳列している売り場に比べて臨場感があります。

はっきりとした人物像とライフスタイル:

 ファッションスクールに通っていた頃、イラストの先生は、洋服ではなく、顔に目がいってしまうので、人物の顔は書くなと良く注意された事を思い出しますが、デザインに集中する意味ではその通りなのですが、ヘアメイクもファッションの一部として欠かせなくなった今、ライフスタイルが伝わってくるこのマネキンのアピール力は説得力があります。 ここまで人物像を表現すると、アメリカならではの、人種の違いも使い分けており、白人と黒人を分けたマネキンも当然あります。ハーレム地区等では見かけましたが最近ではどの郊外のモール店でも使用しています。トレンドの流れは同じでも色や好みは分かれているので、着る人を想定した商品展開は、グローバルに販売する上では必要になってきているのかもしれません。

セクシーで、ハッキリとした色を好むブラック女性のマネキン。

ディスプレイで売り場に活力を求める競合店

 ハンガーに吊るされ、棚に並べられた洋服だけでは、現在の消費者にアピールはしない。H&Mの他にも今年、バーグドルフグッドマンでは首にタトウーを入れ、ヘッドフォンで音楽を聞いている男性のマネキンを使用した事が話題になりました。インターミックスではファッションモデル風、ユニクロ5番街店では、クリアーマネキン、アスリータでは実際のアスリートをモデルにした動きのあるマネキン。フォーエバー21では、プラスサイズのマネキンを置きだしています。今までマネキンを使用していなかった小売りチェーンのターゲットでは、50店舗にて導入、これにより販売が促進されるか試験中。それぞれ異なった種類ではありますが、着る人物像をフューチャーしたマネキンを取り入れだしています。

リアル店舗の目下の課題と内装の変化

 H&Mに限らず、マンハッタンの小売店が頭を悩ませている問題が、商品の整頓。集客力がある分、人の出入りが激しく、商品の陳列は非常に乱れやすいのです。ホリデイ商戦の時期など、アルバイト人員を増やしているにもかかわらず、整頓が全く追いつかず、ぐちゃぐちゃ。購買意欲が落ちるのはもちろんの事、益々、インターネットの方が楽だという事になってしまいます。その為、ここ 1年くらいの間、マンハッタンの小売店では内装のリフトアップに力をいれています。共通して感じる事が壁面デイスプレイの増加。

 上の写真は、H&Mタイムズスクエア店ですが、手の届かない高い位置まで壁を使ったデイスプレイを行っています。昔からオールドネイビーが、こういうデイスプレイ方法を使用し、物量感をだしていましたが、H&Mは、棚やハンガーも組み合わせ、コーデイネートが分かりやすくなっています。そして何より、店内中央では、比較的整頓の楽なハンガーラックが増え、棚ものが少なくなっています。

 壁面デイスプレイの傾向は、競合店にも現れており、最近、リニューアルしたソーホー地区のフォーエバー21 や、アーバンアウトフィッターズの店舗は皆、このスタイル。

 

  オンラインショップは、ここ数年で、スクロールすると商品がスルスルできてくるピンタレスト形式に見事に変わり、必要な物を最安値で買うには便利かもしれません。

 

  しかし、店頭ではオンラインで感じる事の出来ない臨場感を武器に、新兵器のリアルマネキンを従え、基本中の基本、買い物しやすい環境を整えだしました。洋服をデイスプレイしているだけでは、消費者の購買意欲をかき立てない時代なのかもしれません。


 

 

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