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2014.10.08
所有権を望まない世代のレンタルワールド
米国で8000万人と言われる、ミレニアルズ世代(18-34歳)は、年間に$600ビリオン(約6000億円)、2020年までに、$1.4トリリオン(約140兆円)の消費が期待されている市場。しかし、資産を所有する事に関して、興味を持たない、初めてのジェネレーションでもある。大学卒業と同時にリセッションを迎え、高額な大学のローンにも苦しんでいる世代が含まれている。車も家も興味の無い彼らの多くは、利便性の良い都心に好んで住む傾向。家賃が高く、シェア等でスペースも狭い為、たくさんの物を所有する事ができず、アパートのキッチンは狭く使いづらいので自ずと外食やテイクアウトが増える、そんな世代がどの様に消費し、どんなサービスを求めているのか考えてみたいと思います。
キャッチ&リリース
年齢と共に今後の生活で、何が必要で、必要で無いか明確になり、身の回りを整理しスリムダウンしていくものですが、ミレニアルズ世代は、生まれながらの断捨離精神を持ちあわせている、合理主義の実用主義者と言える。めくるめくトレンドに合わせ、毎シーズン洋服を買っても置く場所がない彼らにとって、好都合なサービスが、借りる事。所有する事を望まなければ、一定期間だけ借りて返せば良いのです。デジタルと共に育った特権、得意なツールを使った、様々なサービスが若者世代の生活にマッチしているようです。
「レント・ザ・ランウエイ」の成長と脅威
現在、500万人の女性会員数を誇るファッション雑貨のレンタルサービス企業。200名以上の有名デザイナーから5万着の洋服、10万点のファッション雑貨を常備。今年7月には、月75ドルで、洋服、鞄等が借り放題のアンリミテッド・サービスを開始しました。1度につき、3点までの貸し出しが可能で、75ドルには返送を含む送料と保険代込み。ほとんどのケース、オーバーナイトで到着するので、パーティで着用するドレスや鞄、ジュエリー等、毎回違うデザインで楽しむ事ができるのです。ラスベガスとマンハッタンに2店の実店舗をオープン、近ければ試着や裾上げ等のサービスも受けられる。2009年に開始したこの企業、昨年の年商は$50M(約50億円)、今年は既に350億円相当の商品を貸し出し、年商は$100M(約100億円)を超える見込みだという。この秋に増設したニュージャージ州の1万5000平米の倉庫では、200名の従業員が返却された商品のケアや修繕、ドライクリーニングを随時行っている。毎日、ドレス在庫の60%がUPSで戻ってくるそう。フェイスブックや、インスタグラムでの自分撮りブームが、たくさんの洋服を必要とする状況を促進しているようです。競合小売り企業にとっては驚異的な存在。
車を持たない若者層の交通手段
「UBER」の本命対抗馬、「LYFT-リフト」が急成長。行き先をアプリで入力すると近くにいる個人ドライバーがピックアップしてくれる、オンデマンドの配車サービス。車のバンパーにつけたピンクのひげが目印。個人で行っているため、支払いは寄付という形式を取るが、キャッシュは要らず、事前登録しているクレジッットカードを使用し、決済システムに進むだけ。車を持たなくとも友達気分で乗車し、ショッピングの送迎や、目的地に辿り着くができる。車のローンや保険代金等を考えると必要な時に利用できる分、リスクが無く合理的かもしれない。空いている時間を利用して、配車ビジネスをする事ができるという点も興味深い。
続々広がる、ストレスフリーのレンタルワールド
ネットフリックスも今や月額7.99ドルで無制限で借りる事ができるのは良く知られていますが、このトレンドは他の業界にも続々広がっています。以下はいずれも急成長中の人気のサービスの一部。
–SPORTIFY(スポーティファイ):有料会員になるとオフラインでも聞く事ができる音楽のストリーミング配信サービス。
–AIRBNB(エアビーエンビー):世界中の会員から家を借りる事ができ、ホテルとは違った現地のリアルな生活が楽しめる。
–Neue House(ノイエハウス):ハイグレードな集合オフィスで、一人でも起業が実現。今年、ロスやロンドンにも拡大。
–Hana Kitchens(ハナキッチンズ):業務用の調理器具が揃ったキッチンが1シフト(8時間)からリースできる。
–SquareSpace(スクエアスペース):月16ドルで、テンプレート使用した本格的なウエブサイトが作れる。
ハードドライブの容量を気にする事無く音楽を聞く、宿泊代を心配する事無く海外を旅する、大きな資金が無くてもビジネスを始める、衛生局の許可を得た本格的な業務用キッチンでスイーツを作って販売ができ、専門の知識が無くてもウェブサイトが作れる。費用を最小限に抑えたストレスフリーで、所有権を持たずとも、さまざまな事にトライできるのです。こういったツールの知識に最も長けていて、実際に利用しているのがミレニアルズ世代なのでしょう。起業家、ENTREPRENEUR(アントレプレナー)のソロバージョン、SOLOPRENEUR(ソロプレナー)という造語まで登場していますが、1人でも起業できる分、たくさんの経営者が生まれ、様々なビジネスが登場…深い知識が無くても始められる分、消えて行くのも早いと想像しますが…そういう時代になりそうな気がします。最近、小学生や中学生でも、ちょっとしたアイデイアでビジネスをしている若い起業家が登場しています。
アパレル企業はどうするべきか
便利という事だけでなく、時代の特典を利用しながら生活する事が当たり前の彼らはかなり特殊な存在。アバクロはロゴを廃止、アーバンアウトフィッターズは価格帯と品質を向上し年齢層を引き上げと、ティーンアパレルを中心にアパレル企業が続々と窮地に追いやられ、ビジネス方針を変える自体となっています。ギャップ社の「ノームコア」、ロゴを好まず、着回しがきく質の良い商品を求める、この世代に向けての戦略とも思えます。バックトゥスクール商戦の際、TV番組やWWD誌等の特集で、学生達に好きなブランドは何かと言う質問があったのですが、「ジェイクルー」という答えが多かったのが非常に印象的。学生なら、価格的にも「ギャップ」で良いのではと思うのですが、デザインも価格も大人っぽい、ジェイクルーが好まれているのです。いずれにしても、所有権を望まない初めてのジェネレーションがファッションを楽しむにはどうすれば良いか、そして再び支持されるにはどうしたら良いのか。“キャッチ&リリース”もアイデイアの一つ、アパレル企業も変わって行くほかありません。これに行き詰まっていては、更に進化したライフスタイルを身に付けた、ジェネレーションZやアルファーが控えているのですから。
▼参考サイト:
-リフト https://www.lyft.com
-スポーティファイ https://www.spotify.com/us/
-エアビーアンビー https://ja.airbnb.com
-ノイエハウス http://www.neuehouse.com
-ハナキッチンズ http://www.hanakitchens.com
-スクエアスペース http://www.squarespace.com
マックスリー・コーポレーション
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