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2018.12.12

絶好調のホリデー商戦に迫る“返品問題”の切実さ

 ホリデー商戦も残るところ数週間。知人(アメリカ人女性)の中には、友人の子供やペットまで、ギフト商品を毎年60個近く買わなければならず、ホリデーショッピングは悩みの種だという人たちもいます。その大半は、「インターネットを利用する」と言っていましたが、今年のサイバーマンデーでは、7,500万人が買い物をしたといわれ、79億ドルという記録的な売り上げとなりました。NRF(全米小売業協会)によると、今年のホリデー商戦では前年比4.8%の増加を予想。なかでも、18~24歳で43%、25~34歳で38%と、若年層の消費者の売り上げが伸びると予測しています。そんな中、業界でにわかに懸念されているのが、急激な増加を見せている返品問題。米国のリテイラーはどのように対処していくのでしょうか。

約半数の消費者が返品する米国

 ブラックフライデーでは、アマゾンやターゲットが、最低購入額を設けずに無料配達を行いました。またこの時期は、返品ポリシーを緩和している小売り店も多く見られ、送料&返品無料といったサービスによって、オンライン販売の増加を促進しているといえます。

 しかし、今年は4,000億ドル(約44兆8,000億円)、ホリデーシーズンにはその25%にあたる1,000億ドル(約11兆2,000億円)の返品が予測されています。特に、素材の質やサイズがわかりにくいアパレル商品は、返品される可能性が高く、異なるサイズを数種類買い、体に合わない商品を返品する消費者も存在します。オンライン身体採寸サービスのBODYBLOCK AI社の調べでは、13.9億ドル(約1,556億円)のアパレル商品の返品が予想されています。昨年、54%の消費者が少なくとも1品を返品しており、小売り店はホリデー後、迅速に対応する必要があると伝えています。

オンライン・オークション形式の清算業者が急成長!米国小売り店は、急増する返品にどう対応するのか?

「B-STOCK」のオンラインマーケットプレイス

 返品商品のコンディションにもよりますが、小売り店が倒産した場合、地元のリクイデーター(倒産した企業の在庫や過剰在庫などの清算を行う専門業者)に販売するのが一般的。その理由として、修理をしたり、ベンダーへの返品、棚に戻す人件費よりも、その方が遥かにコストがかからないからです。

 

 こういった業務は従来、業者の手によって行われてきましたが、世界最大のBtoBリクイデーターとして知られるカリフォルニアベースの「B-STOCK」は2009年、オークション形式でのオンラインマーケットプレイスをスタート。今年はSPECTRUM EQUITYから65億ドル(約7,200万ドル)もの資金を得て、急成長を遂げています。年間の成長率は100%。130カ国・10万人のバイヤーに販売を行っています。取り扱い企業は、アマゾン、ウォルマート、ホームデポ、コストコ、ベストバイ(家電チェーン)のほか、メイシーズ、そして、カナダ最大手の百貨店でサックス・フィフス・アベニュー、ロード&テイラーの親会社でもあるハドソンズ・ベイの「ハドソンズ・ベイ」など。今年だけで、米国トップリテイラーの10社中9社が利用、新規19社がネットワークに加わっています。

 

 

「メイシーズ」の商品ページ

 例えば、「メイシーズ」の商品ページでは、アパレルのほか、ハンドバッグや、ワイングラスなどのテーブルウエアが出品されています。さらにレディスのトレンディーアパレルのページを見てみると、フリーピープルやラッキーブランドなどの在庫商品トータル377点、合計小売総額3万9,139ドル(約438万円)が、現在、1,125ドル(約12万6000円)で提示されています。

 

 1品辺りの金額が2.98ドル、日本円で330円というバッタ屋価格。メンバーログインをすると、そのほかにも23種類の写真や詳細が見られるようになっているようです。メイシーズでは、自社のオフプライス部門「バックステージ」を運営しているので、在庫商品を直接消費者へ販売することも可能ですが、返品商品や売り残った商品をまとめてB−STOCKに販売しています。

 

「CLOSET CLOSEOUT」のサイト

 そのほか、「CLOSET CLOSEOUT」のページでは、トリーバーチやレベッカミンコフなどのアパレルやバッグ731点・小売り総額14万3,945ドル(約1,600万円相当)の商品が出品されており、現在の入札価格は7,053ドル(約78万9,000円)、1品辺りの金額は9.65ドル(約1,080円)。オークション終了まで時間があるため、この金額で落とされることはないでしょうが、地元のディスカウンターや個人経営の小規模小売店の目玉商品となっていることは間違いないでしょう。

 

 今年のホリデー商戦でも、値下げ&送料無料が、消費者を魅きつける材料となっていますが、それに加えて、返品にかかるコストや処理を迅速に行うことが、少しでも利益を確保するための大きな課題となっています。清算業に特化した、オンラインマーケットプレースなどが繁栄することで、再販業社のビジネスは、まだまだ強さを見せそうです。


 

 

マックスリー・コーポレーション
MAXRE Corporation

 

マックスリー・コーポレーション ( CHIZU NISHIDA )
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